ShowNet 2024のL2L3
Interop Tokyo ShowNet 2024のL2とL3で行われた主な取り組みは、次の3つです。
- SRv6のマイクロSID(Compressed SID)を利用
- 出展社収容をEVPN-VXLANで
- SRv6+衛星回線
ShowNetトポロジ図での上記3つの取り組み箇所は、次の図のようになっています。
SRv6のマイクロSID利用は、中央のバックボーン部分で行われていました。
出展社収容でEVPN-VXLANを利用している部分は、トポロジ図の中央の下側です。 出展社収容に関しては、例年、トポロジ図で下側を薄く広く覆うような配置で出展社収容を行う機器が描かれます。 昨年は、出展社収容機器がL2的な役割を果たしていたので緑色でしたが、今年はL3的なデフォルトルータとしての役割を果たしているので赤で示されているのが去年との大きな違いを表しています。
SRv6と衛星回線の組み合わせはトポロジ図中央の下に描かれています。
SRv6のマイクロSIDを利用
ShowNetでは、2018年からSegment Routingを扱っています。
- 2018年: 相互接続性検証
- 2019年: SRv6 Data PlaneでService Chaining
- 2020年: (新型コロナ禍のためInterop Tokyo幕張実施中止)
- 2021年: SR-MPLSメイン+SRv6 L3VPN相互接続
- 2022年,2023年: SRv6 L3VPNシングルスタック
参考:Interop 2023のShowNetバックボーン詳解、 SRv6を活用し、リンクローカルIPv6アドレスだけでバックボーンのルーティング - Interop ShowNet 2022
このように、ShowNetでは、2021年以降Segment RoutingとしてバックボーンでSRv6が活用されています。 ここ数年は毎年のようにSRv6が使われていますが、同じSRv6であっても毎年チャレンジ内容が違います。
そこで今年のSRv6は何が違うのかですが、今年のSRv6活用方法の新しいチャレンジとしては、マイクロSID(以後、uSID)を利用していことがあげられます。 uSIDとは何かですが、SRv6に対応したノードは"Segment"と呼ばれる「順序のある命令リスト("ordered list of instructions"/RFC 8402より)」に応じてパケットを処理します。 この"Segment"の識別子がSID(Segment Identifier)です。
uSIDというのは、従来の128ビットのSIDだと、複数のSID列を含むためのオーバーヘットが大きくなり過ぎてしまうという問題を軽減するために、SIDを圧縮する仕組みです。 この記事ではuSIDという表現を使っていますが、Compressed SIDと表現される場合もあります。
uSIDのフォーマットにはいくつか種類がありますが、ShowNet 2024では、スタンダートとなりりつ つあるF3216という方式が採用されています。
なお、ShowNet 2024では、SRv6 over 衛星回線や、EVPN-VPWSなどではFull lengthのSIDも併用されていました。
EVPN-VXLAN
ShowNetではInterop Tokyoの出展社ブースに対してネットワークのサービスを提供しています。 その出展社へのサービスを収容している部分をEVPN-VXLANで行っているのもShowNet 2024におけるL2L3的な着目ポイントのひとつです。
これまでのShowNetでもEVPN-VXLANを利用していましたが、今回は出展社収容を行うためのBGP EVPNのルートタイプとして、過去に行われたShowNetではType 2を使ったことはあったのですが、今回はType 5(RFC 9136)を使ったという違いです。 BGP EVPNのType 2ルートはMACアドレスの到達性を扱いますが、Type 5ルートはIPプレフィックスの到達性を扱います。 Type 2ルートを使う場合にはL2的な同一セグメントを延伸する形になりますが、Type 5ルートを使うとL3VPNを組むこともできます。 Type 5ルートを使うことで、各出展社の個別のL2セグメントを特定のVTEP配下に収めることができ、スケーラブルになるというメリットがあります。
BGP EVPNのType 5ルートそのものは、新しい仕組みというわけでもありません。 しかし、これまでInterop TokyoでType 5ルートが今年初めて出展社収容のために使われた理由としては、エンタープライズ向け製品でのType 5ルートの対応が増えている背景があります。 EVPNは、もともとはデータセンターやキャリアを強く意識して仕様や製品が作られてきたプロトコルということもあり、そういった用途を想定した製品での対応がメインでした。 しかし、最近になってキャンパスネットワーク等での利用を想定した製品でも対応が進んだのが、今回のShowNetで出展者収容がEVPN-VXLANによるL3VPNで組まれた要因です。
最終的に、今回のShowNetでは3ベンダー7機種によるEVPN-VXLANのType 5ルートの相互接続が行われました。
ShowNet 2024では、EVPN-VXLAN Type 5ルートを使って良かったこととして「アンダーレイの構成は引き続きL3」という点とともに、それについて以下の説明が行われていました。
- MC-LAGや筐体を論理的に統合する機能が不要で冗長を取るのが楽
- 全体の規模が大きくなっても設定が必要なのはVTEPとBGPのみ
- Routingで経路制御可能
PCEP相互接続検証
PCEP(Path Computation Element Communication Protocol, RFC 5440)を利用して、Stateful PCE(Path Computation Element)とPCC(Path Computation Client)によるSRv6-TE(uSID)の管理と可視化デモも行われていました。 Stateful PCEがSRv6 Policyの発行と管理を行い、PCCがSRv6 Policyに則したトラフィックエンジニアリングを行いました。
相互接続検証では、2種のPCEと、5種のPCCが用いられました。
SRv6 L3VPN over 衛星回線
ShowNet 2024では、SRv6 L3VPN over 衛星回線という企画も行われていました。 衛星回線経由のIPv6を使ってSRv6を通すというものです。
衛星回線は幕張メッセのHall 3で展示されている衛星車から衛星へと通信を行い、衛星から幕張メッセ外にある国内地上局と繋がっているという構成です。
2023年(昨年)内容
2023年の取り組みも面白いので、ご興味がある方はぜひご覧ください。
参考:Interop 2023のShowNetバックボーン詳解
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