IPv4アドレスが枯渇して10年経った

2021/2/3-1

日本時間2011年2月3日深夜に、IPv4アドレスの中央在庫(IANA在庫)が枯渇しました。 もう、あれから10年です。

昔は、「IPv4アドレスは枯渇しない」と主張している人も多く、実際に枯渇するまでは、IPv4アドレス在庫が減り続けていることを信じない人も多かった記憶があります。 都市伝説だ、とか、石油と一緒で枯渇しない、といった主張がありました。

IPv4アドレス在庫の枯渇がどのように定義されているのかが複雑であるためわかりにくかったり、インターネットが使えれば良くてTCP/IPそのものには興味がない人が大半であるなどの要因もあり、いまだにIPv4アドレス在庫が枯渇したことを知らない人も多くいますが、気がつけばIPv4アドレスが枯渇してから10年経過しているわけです。 時間が経つのは早いなぁと思うわけです。

インターネットそのものに関して特に興味もなく、ユーザとして使っている分には、IPv4アドレス在庫の枯渇は特に気になる話でもなく、10年前も今日も、インターネットを普通に使えているという感想の方々も多いです。 IPv4アドレス在庫が枯渇して、直接ユーザが困っていることがあるかというと、いまのところは特に気になる変化があるようには見えないというのは普通の感想だと思います。

当時と今では、IPv4アドレスやIPv6に対する認識が大きく変わっている部分もあります。 10年前は、拒否反応が多かった、いわゆる「IPv4アドレス売買」も、いまでは比較的普通になっています。 あれから、IPv4アドレス移転も数多く行われました。

10年前は全くと言って良いほど一般には使われていなかったIPv6も、徐々に普及しつつあります。 Googleが公開している統計によると、10年前のIPv6利用率は世界で0.2%に満たない状態でした。 それが今では30%を超えています。 日本国内では、主にNTTフレッツのIPv6 IPoEやIPv4 PPPoEに関連する話題として「IPv6にすると速くなる」と表現している場合もあり、自宅用インターネット回線の通信品質向上を目指してIPv6を導入するユーザを容易に観測できるようになりました。 10年前とは大きく変わったと言えます。

IPv4アドレスの中央在庫枯渇は、私が「プロフェッショナルIPv6」として出版した本の企画を考えるようになった大きなきっかけでした。 IPv4アドレスが枯渇するので、当時は皆無と言えるぐらい少なかったIPv6利用者は増えるだろうし、そのための環境を用意する人々のための情報が必要だろうと思ったわけです。 それから少しずつ文章を書き溜めて、実際に出版できたのが2018年でしたが。 紙版を5000円で販売しつつ、全く同じ内容の電子版を無料配布していますが、いまのところ合計3万回以上ダウンロードがあるようで、おかげさまで多くの方々に読んでいただけているようです。

いまでは、普通のユーザがスマホで行なっている通信だったり、家からパソコンでインターネットを使っているときの通信で、IPv6が使われることが珍しい話でもなくなりました。 非常に多くのユーザが気がつかずにIPv6を使うようになっています。

職場や学校などの組織が運営しているネットワークでIPv6が使われず、家庭内の方がIPv6が使われる割合が多いというのが最近の傾向ですが、10年前に、このような状況を想像できていた人がどれぐらいいたでしょうか? 年末年始や新型コロナ自粛によるテレワークが増えるとIPv6利用率が爆上がりするという今日の状況を、少なくとも私は10年前には想像できていませんでした。

IPv6そのものも色々と変わりました。 いまでもIPv6に関連するRFCが更新され、廃止されていきます。

IPv4とIPv6という視点で見た時、10年前の今日は、インターネットにとって非常に大きな出来事だったと思います。 今からさらに10年後、IPv4とIPv6を取り巻く状況や、インターネットそのものはどのようになっているのか。 さて、どうなっているでしょうか。

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