192.168.0.1などのプライベートIPアドレスは途中で作られた
プライベートIPアドレス(プライベートIPv4アドレス)は、インターネットに直接接続しないプライベートな環境で誰でも勝手に使って良いIPv4アドレスです。 普通にインターネットで使われているIPv4アドレスはグローバルIPv4アドレスと呼ばれています。
以下の3つのIPv4アドレスブロックが「プライベートIPアドレス」として予約されています。
- 10.0.0.0/8(10.0.0.0から10.255.255.255)
- 172.16.0.0/12(172.16.0.0から172.31.255.255)
- 192.168.0.0/16(192.168.0.0から192.168.255.255)
今では、プライベートIPアドレスがさまざまなところで使われています。 身近なところでは、家庭内LANであったり、マンションで共用回線を使う場合のマンション内LAN、会社内で使うLAN、スマホ等でのテザリングなどが挙げられます。
様々なところで使われているプライベートIPアドレスですが、それらは、インターネットが登場した当初から存在していたものではありません。 IPv4アドレス在庫枯渇問題の対策として、途中から作られたものなのです。
プライベートIPアドレスとNAT
プライベートIPアドレスは、インターネットに直接接続されていない閉じた環境で利用されるものですが、その閉じた環境であってもインターネットと通信したい場合があります。そこで使われるのがNAT(NAPT)です。
NATの最初のRFCはRFC 1631で1994年5月発行ですが、プライベートIPアドレスがIANAに予約されたことを示すRFC 1597は1994年3月発行です(ただし、RFC 1631にあるのは、いま一般的に使われているNAPTとは違う内容です)。 RFCの発行は2ヵ月違いですが、実際にRFCとして発行されるまでにさまざまな議論や準備が行われるため、NATとプライベートIPアドレスの両方が同時にIETFで議論されていました。 NATとプライベートIPアドレスには密接な関係があるのです。
当時、インターネットとは直接通信をしない閉じた環境でTCP/IPを使った通信を行うシステムが増えていました。通信手段としてTCP/IPを利用する場合、通信を行う機器に対して、それぞれなんらかのIPアドレスを割り当てる必要があります。 プライベートIPアドレスが登場する前は、世界で一意となるようなグローバルIPアドレスを閉じた環境でも利用していました。
しかし、インターネットと通信するわけではない閉じた環境でグローバルIPアドレスを使うのは、グローバルIPv4アドレスの無駄遣いという考え方もできます。 組織内で閉じて通信を行うだけであれば、その組織内においてのみIPv4アドレスの一意性が保たれれば良いのであって、世界的に一意となるIPv4アドレスは必ずしも必要ではないのです。
インターネットで使われない閉じた環境のためにグローバルIPv4アドレスが大量に消費されてしまうことを避けるために、「閉じた環境で使うのであれば、このIPv4アドレスブロックを自由に使って良いよ」という「プライベートIPアドレス」が生まれたのです。
このように、プライベートIPアドレスは1994年頃に行われたIPv4アドレス在庫枯渇問題に対する対策と言えるわけです(1993年のCIDRもあります)。 IPv4アドレスの中央在庫(IANA在庫)は2011年に枯渇しましたが、プライベートIPアドレスという概念が存在しないままであれば、IPv4アドレス在庫の枯渇は、もっと早かったことでしょう。
IPv6
IPv4アドレス在庫枯渇問題の対策としては、プライベートIPアドレスとNATだけではなく、IPv6も議論されていました。 IPv6基本仕様の最初のRFC 1883は、1995年に発行されています。 IPv4を延命させる方法と、IPv6は1990年代に同時に議論されていたのです。
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