『アカマイ 知られざるインターネットの巨人』を書きました
『アカマイ 知られざるインターネットの巨人』という本を書きました。「角川EpuB選書」というシリーズからの出版です。これまで、私は技術者向けの本ばかりを書いてきましたが、今回は初の一般向け書籍です。「TCP/IP」といった単語を聞いたことも無い人に対して説明する気持ちで書くというリクエストだったので、それを目指しました(IT系技術者の方々にとっては物足りないかも知れません)。
目指はしたのですが、、、アカマイの説明をするのであればインターネットそのものの構造や商習慣、IP、TCP、BGP、DNSなどの紹介を避けられないため、一般向けといいつつも技術書っぽくなってしまっています。
ただ、いままでの書籍と非常に大きく違うのが、編集者がIT系の技術とは全く無縁に近い方だったという点です。これまで、専門書を扱う方々としか書籍執筆作業を行ったことがなかった私にとっては、非常に多くの発見がありました。自称「超文系脳」な編集者の「ここがわからない」という数々の厳しいツッコミに対処することで、これまで私が書いてきた文章とは全く異なるタッチの書籍に仕上がっていると思われます。
これまでの私は、ある程度の前提知識を求める文章ばかりを書いていたので、そうではない書き方を経験することができたというのは非常によかったと考えています。
本書執筆の経緯
私がこの本を書くまでの経緯は、同書の最後に記載してあります。以下、該当部分です。
この本の企画は最初、KADOKAWAメディアファクトリーBCの編集者が考えました。「アカマイという『知られてないけどすごい会社』があるらしいので、同社を解説する書籍を作ろう」という趣旨でした。その編集者が書籍執筆依頼のために最初にコンタクトしたのは、アカマイの日本法人(アカマイ・テクノロジーズ合同会社)でした。しかし、電話での問い合わせを受けた同社の反応は非常に冷淡でした。取りつく島がない状態で早々に電話が切られてしまったそうです。
のちにわかったことですが、電話を受けた社員は宣伝用の自費出版の勧誘だと勘違いしたそうです。よくある電話勧誘の類だと思われてしまったのです。
その後、困った編集者は、アカマイの記事を書いている私をWeb検索で発見して、私にコンタクトしたのが本書刊行のきっかけです。私はアカマイの関係者ではありませんが、インターネットそのものをテーマとしたブログを書いていることもあり、同社について書いたり、同社の記者発表会に参加して記事を書いたことがありました。
いまこうして振り返ると、私がこの本を書くに至った経緯も、アカマイが一般向けの宣伝に興味があまりないことを物語るものだといえそうです。
実は、「Webを検索してみて見つけたのでコンタクトしてみた」というのは初ではありません。マスタリングTCP/IP RTP編のときには、RTP本の監訳者を探していてWeb検索をしていたら私を発見したのでコンタクトが来たというのが縁でしたし、Linuxネットワークプログラミング本もWeb検索で発見したからというのに近かったと思えます。
電話をしたら冷たくあしらわれた、という部分が良くあるのかどうかは知りませんが、Web検索で著者を探したということは良くある流れなのかも知れません。
目次
目次は、以下のようになっています。
- はじめに
- あなたもアカマイとつき合っている
- 第一章 何をする会社なのか
- 世界中にサーバーを配置
- なぜ拠点が多いのか?
- 地震!不通!そのときアカマイは
- 地中海の光海底ケーブル障害
- ビジネスのための通信をサポート
- 第二章 それはMITから始まった
- WWW考案者の相談
- うぶな二人の無謀な挑戦
- 「アカマイ」はハワイ語の「賢い」
- よき経営者との出会い
- サービス開始と急激な成長
- 4月1日にジョブスから電話
- 911、創設者の死
- ITバブル崩壊!そして復活へ
- 第三章 インターネットはどう動くか
- アカマイを知るためのインターネット入門
- インターネットは魔法ではない
- 自分の責任範囲だけ見る
- 情報を小分けにした「パケット」
- 道を見つける「ルーティング」
- 住所にあたる「IPアドレス」
- ルーターは次にパスするだけ
- ルーティングテーブルの生成
- 自律システムとルーティング
- ネットワーク同士をつなげる
- インターネットのキモ、BGP
- 複雑な処理は末端に
- とっても大切、TCP
- TCPの機能(I) - パケット喪失・変質への対応
- TCPの機能(II) - 混雑を避ける
- 「名前」でサイトにたどり着く
- インターネットの根幹、DNS
- ユーザーにとってのDNS
- キャッシュDNSサーバーの「名前」探し
- 第四章 アカマイの技術とインターネット
- アクセスの集中とネットの混雑
- 炭疽菌事件とアカマイ
- コンテンツを「近く」から取る
- 自社サーバーへの誘導
- 誘導のカギは「CNAME」
- ユーザーにとっての「最寄りのアカマイサーバー」
- エッジに近づく
- 距離×経路で「最適」へ
- 「インターネットの地図」の作成(traceroute)
- 地図を読む
- 2点間の道を見つける (ping)
- 「マップ」には負荷も加味する
- エッジサーバーにキャッシュを用意する
- 仮想ネットワークによる高速化(SureRoute)
- 利益率が高いSureRoute
- ISPとSureRoute
- キャッシュの階層化(Tiered Distribution)
- キャッシュ先読み技術(Prefetching)
- この「前提」はどこから?
- 第五章 インターネットのカネと力
- 逆転した立場
- トラフィックは大河に至る
- 情報量でお金の流れが変わる
- 経路と「力」
- AS同士の握手(ピアリング)
- ティア・ワン、ティア・ツー、ティア・スリー
- ピアリングによるコスト軽減
- アカマイがISPのコストを軽減する
- 台頭するハイパー・ジャイアンツ
- 強くて弱い不思議なアカマイ
- 第六章 インターネットとアカマイのこれから
- 多角化するビジネス
- アカマイが買収した企業群
- 多角化(1) セキュリティビジネス
- DDoS攻撃とアカマイ
- オリジンを守る
- オリジンを「箱入り娘」にする(SiteShield)
- ウィルスを持ち込まない(Webアプリケーションファイアウォール)
- 多角化(2) 高速化ビジネス
- Webページ表示の高速化(Front End Optimization)
- コンパクトにお届け(Last Mile Acceleration)
- 多角化(3) ビデオ配信
- 環境に合わせて(トランスコード系サービス)
- 多角化(4) 新たなネットワークへ(モバイル通信網)
- 新たなネットワークへ(企業WAN)
- IPv6対応
- 難しさを抱えるP2Pサービス(Akamai Client Side Delivery)
- インターネットはどこに行くのか
- おわりに 知られていないけどすごい会社
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