切断された北朝鮮インターネットの規模
Dyn Research(旧renesys)が、約9時間半にわたり北朝鮮がインターネットから切断され続ける状態が続いていたというブログ記事を公開しています。
同記事では、実際にどのような理由でインターネットの接続性が不安定になったのかは不明であるとしています(BGPmonは、DDoS攻撃が原因であるとしています。参考)。
公開情報からわかる北朝鮮インターネットの規模
各種公開情報から、北朝鮮がどのような規模のネットワークを運用しており、どうやってインターネットに接続しているのかを見てみましょう。
まず、最初に、どれだけの数のネットワークが「北朝鮮」という国籍でインターネットに接続しているのかを調べてみましょう。いくつか調べる方法はありますが、今回はわかりやすく情報をまとめてあるHurricane ElectricのWebページを見てみます。
上記ページを見ると、「北朝鮮」という国籍のAS(Autonomous System/自律システム)は、AS131279のみであることがわかります。
北朝鮮のIPv4アドレス
そして、北朝鮮(KP/Korea, Democratic People's Republic of)として登録されているIPv4アドレスブロックは、以下の4つのみです。それぞれ、プレフィックス長が24なので、255個のIPv4アドレスを利用可能な空間です。
- 175.45.176.0/24
- 175.45.177.0/24
- 175.45.178.0/24
- 175.45.179.0/24
国全体がインターネットから切断されるというと、非常に大規模なものを思い浮かべがちですが、北朝鮮のインターネットの規模は、そこまで大きいわけではないことがわかります。
BGPに関する情報は、観測地点によって多少違うので、Hurricane Electric以外の公開情報も見てみましょう。たとえば、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が公開しているCyclopsなどでも、AS131279の情報を調べることができます。
Cyclopsを見ても、AS131279のネットワークとしては、175.45.176.0/24、175.45.177.0/24、175.45.178.0/24、175.45.179.0/24の4つのみであることがわかります。
北朝鮮にインターネット接続を提供しているプロバイダ
Hurricane ElectricやCyclopsを見ると、AS131279がどのようにインターネットに接続しているのかもわかります。
AS131279は、AS4837(China Unicom)を経由してインターネットに繋がっています。逆に言うと、北朝鮮に対してインターネット接続性を提供している事業者はAS4837のみです。
通常はBGPで複数箇所と接続して冗長性を確保しますが、北朝鮮はBGPレベルでの冗長性を確保できていないことがわかります。中国の事業者1社のみにインターネット接続の全てを依存しているのです。
このため、AS4837との間で何らかの障害が発生すると、北朝鮮全体がインターネットから切断された状態に陥ります。
このように、各種公開情報で色々なことがわかります。興味のある方は、是非各自で各種公開情報をご覧下さい。
追記
APNICで公開されている情報を見ると、AS 131279(32ビットAS)と175.45.176.0/22の割り振りは、2009年12月21日です。その2つ以外は、北朝鮮(KP)名義で割り振りされたIPv4アドレスおよびAS番号は存在しません。
「北朝鮮という名義でインターネットに接続しているネットワークは存在しない」というイメージをお持ちの方々も多いと思いますが、2009年末にAPNICに対して割り振り申請が行われていたようです。
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