違法ダウンロード刑事罰化は一時的な心理効果しかなかった?
昨年10月1日に施行された改正著作権法は、違法ダウンロードに対して刑事罰を追加するというものでした。 2012年10月時点では、違法ダウンロード刑事罰化が日本のインターネットトラフィックに非常に大きな影響を与えたものと思われます。 10月1日直前は駆け込みと思える急激なインターネットトラフィック増加が発生し、違法ダウンロード刑事罰化施行直後はインターネットトラフィックが激減していたことが日本国内各所で計測されています。
それから約1年間が経過しようとしていますが、「インターネットトラフィック」という視点で見たとき、違法ダウンロード刑事罰化は一時的な心理的効果にしかならなかったのではないか、という調査結果が公表されています。
IIJ IIRでは、2010年の改正著作権法によるダウンロード違法化に関して、以下のように述べています。 2010年の改正著作権法は、「既にあった流れを加速するトリガーになったに過ぎない」としつつも、長期に渡りインターネットトラフィックに影響を与えたと分析しています。
2010年1月のダウンロード違法化のときは、明らかにトラフィックの長期トレンドに影響が出ました。しかし、これは以前のレポートで議論したように、既にあった流れを加速するトリガーとなったに過ぎないという見方もできました。我々は、法的強制措置の効果を検証する意味で、今回の違法ダウンロードの刑事罰化の影響について注目していました。
一方で、2012年の改正著作権法による違法ダウンロード刑事罰化に関しては、以下のように分析しています。
結局、今回は、施行の前に駆け込みと思われるトラフィック増加が見られ、施行後3ヵ月程トラフィックが減少しましたが、その後はもとのトレンド曲線に戻っています。マクロなトラフィック傾向だけで違法ダウンロードの増減を推測することはできませんが、今回の施行前後の増減は、一部ユーザの違法ダウンロード行動の反映と見ていいでしょう。しかし、3ヵ月で元のトレンド曲線に戻っていることや、他の数値からも特に傾向に大きな変化が見られないことを併せて考えても、今回のダウンロード刑事罰化は一時的な心理効果しかなかったように見えます。
日本国内のインターネットトラフィックが、2012年の改正著作権法施行後に再び増加傾向に転じているのは、先週公表された総務省での試算結果からもわかります(総務省の集計・試算にも今回のIIJ IIR記事の執筆者である長さんが関わっています)。
ISPの方々の「肌感覚」としても、「違法ダウンロード刑事罰化の効果は一時的なものだった」という話は良く耳にします。 特に大きな事件等が発生しなければ、今のところは日本のインターネットトラフィックは増加していくのではないかと思える今日この頃です。
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