知名度ゼロからの「ネット影響力」獲得への道
リアル世界で知名度があまりない人が、「宣伝に使えるのはネットしかないかも。だからネットで影響力が欲しい」みたいな方向で色々と考えていることがあります。 たとえば、知名度がない企業が自社製品を宣伝する手段としてネットに着目している場合や、知名度がない個人がネットを活用してファンを増やしたいといった事例です。 個人であれば、マイナースポーツの選手であったり、作家を目指す人であったり、音楽家を目指す人であったり、アーティストであったり、フリーランスであったり、その他個人で活動を行うような場合が考えられます。
そういった方々が、「Twitterのフォロワーってどうやったら増やせるの?」とか、「Facebookページのいいねを増やしたい」とか、「ネットでファンを増やしたい」とか、「ブログの読者を増やしたい」みたいな質問をすることがあります。 ニュアンスとしては、ネットを使う以外に自分で宣伝を行う方法が思いつかずに、ネットで宣伝をしたいけど、ネット活動そのものに対して特別な苦労はしたくない。 そんな感じです。
そういういわゆる「手軽にネットでの影響力が欲しい」系の話って非常に大事な前提を見落としていることが多い気がしています。
リアル世界で知名度がない人がネット上で読者等を増やすのは、既に有名な人がネット上で読者等を増やすのと比べると何倍も難しいです。 有名人であれば、「○○さんがTwitter開始したんだって!」みたいな情報が勝手に広がって行って、あれよあれよと言う間にフォロワーが大量に集まりますが、一方、知名度がない人が有名人同様に扱われることはありません。 有名人の方が格段に有利な世界です。
ネットで知名度を獲得するのって、リアル世界で知名度を獲得するのと同じように凄く労力がかかることなのだろうと思います。
ただ、ネットは、腕一本で知名度を獲得するチャンスが開いているという側面はあります。 リアル世界では、何らかの媒体で執筆や出演の機会を得るには、何らかのコネ等が要求される場合が多いのですが、ネットではコネ等に頼らずに知名度を構築することができます。 ネットで知名度を構築したうえで、正規メディアとのコネを自分で構築するということも最近では一般的になってきました。
今回は、そんな感じの視点で、知名度ゼロからのネット宣伝について語りたいと思います。 私の周りでは、どちらかというと、色々やっていたら徐々に読者が増えていったみたいな人が多いというか、逆にいうと自然と読者が増えていった人がお互い知り合いになっていくという状況はある気がします。
なお、私のサイトやTwitter等での読者数が強烈に多いかと言われるとそうでもなく、そこまで成果を出しているわけでもないのにあまり偉そうなことを言える立場でも無いのは承知したうえで、書いています。 また、基本的に私の考え方は、いわゆる「効率が悪い」方法な気もしますが、まあ、こんな感想を持っているということで。
1. アテンションは有限である
人々の注意や人々からの注目や関心、広義には読者が読んでくれる時間などを「アテンション」と表現することがあります。 ネットを閲覧する人の数は有限であり、かつ、各人によるネット閲覧時間も有限であるため、世の中の全員が全て多くのアテンションを得られるわけではありません。
「アテンションエコノミー」という言葉が流行ったことがありますが、世界中の無数に存在するコンテンツが、互いに人々のアテンションを奪い合っているという側面も多少はあります。
アテンションが集まっていることが大きな要素になる場合もあります。 多くの人々が見るから、さらに多くの人々が見るようになる傾向があるためです。 行列のできるラーメン屋は、行列を見て並ぶ人がいるような感じです。
逆にいうと、最初の行列ができるまでは苦行かも知れません。
2. 自分の強み+ネット活動
誰もが活動すればネット上で知名度を確保できるとは限らないと私は考えています。
ネットで読者等を増やすには、オリジナリティが重要です。 非常に多くの人々がネットでの情報発信を行うなかで、他とは違う自分の強みがどこなのかという部分です。 ということで、「○○をすればネットで知名度が上がる」という銀の弾丸は存在せず、各自のオリジナリティを意識して自分なりの試行錯誤を模索する必要があるというのが、私の感想です。
自分の強みがあったうえで、さらにネットでの活動に関する知識を身につけて行く必要があります。
有名人であれば、ネット活動の部分を誰かが代行してやってくれるかも知れませんが、資金力等が無い個人や中小企業がやる場合には、最終的には自分で学習しつつ切り開くしかありません。
3. コンテンツは「掘り出す」もしくは「絞り出す」
自分なりのオリジナリティを考えるとき、自分の中からコンテンツを「掘り出す」もしくは「絞り出す」という作業が必要になります。 それには、以下のような3つの作業が必要です。
- 潜在的に面白いネタを持っている
- 他人にとっても面白い部分を堀り出せる
- 他人に理解可能な表現を行う
このとき、まず、そもそも、自分自身が何らかのジャンルで一般よりも詳しく、面白いネタを持っていることが求められます。 乾いた雑巾をいくらしぼっても水は出てきません。
そのうえで、自分にとって「当たり前」であっても、他人にとってはそうでないようなことを自己発見し、それを他人に伝えるための言葉等に落とすという作業が必要です。 自分勝手に文章を書くのではなく、他人に伝えることを強く意識した文章を書くことが大事です。
他人にとって「当たり前」ではない部分の発見や、それを分かりやすく表現する部分に関しては、第三者に助けを求めると上手くいく場合もあります。
4. 軌道に乗るまでが一番大変
ものごとをゼロから開始するとき、最初に軌道に乗せる部分が最も難易度が高かったりします。
有名人がネット上で活動をはじめる場合と、知名度が無い個人がネットをはじめる場合の違いは、軌道にのせるための積み重ねがあるかないかなのかも知れません。
5. 自分を切り売りするようなコンテンツの作り方はお勧めしない
自分の恥ずかしい過去を暴露したり、世間が眉をひそめるような行動をあえて取ったり、他人に知らせる必要のないことまで一般公開するようなことで、自分を切り売りしながら注目を集めるような方法はお勧めしません。
得てして、そういったコンテンツの方が注目されがちですが、アテンション依存症になってしまって、行動がどんどん過激になった先に、良いことがあるとはあまり思えません。
6. コツコツとした積み重ね
ある日、突然固定読者が激増するようなことは稀です。
最初から有名人であるというのでもない限り、たとえば、ブログであれば何かヒットする記事を1本書いた後に定期購読者が何人か増加し、Twitterであれば注目される発言を行った後にフォロワーが数人増えるということの繰り返しで、徐々に読者数を増やしていくのが普通です。 何かひとつのコンテンツを数十万人/数百万人が見ることがあったとしても、後ほど再訪問してくれたり、コンテンツそのものと同時にコンテンツ制作者にも興味を持ってくれるのは、そのうちの一部だけです。 一度だけではなく、何度も同じ人のコンテンツを見るうちに、「あ、この人に興味あるかも」となる場合があるという感じだと思います。
そのため、日々コツコツと注目されるコンテンツを公開し続けることが重要です。 こうやって一言で書いてしまうと、非常に味気ないのですが、実際にこれをやろうと思うと凄い労力です。
リアル世界で有名であったわけではなく、ネットの狭い世界でのみ読者を確保している「ネット有名人」的な人々の獲得しているアテンションは、日々の積み重ねの結果だったりします。
7.「ニュースになる」とは何かを考える
メディアがニュースとして取り上げると、瞬間的に多くのアテンションが集まりますが、全く同じ行動であっても、その行動を行う対象の知名度によってニュースになるかどうかが変わります。
たとえば、有名人であれば、「髪を切った」とか「道で転んだ」とか「○○さんと会ってた」みたいな内容であってもニュースになる場合がありそうですが、名前が売れているわけではない人が同じことをしてもニュースにはなりません。
これと似たような話で、「良いもの」が「記事になりやすいもの」であるとも限りません。 他と明らかに異なっており、異彩を放つ「良いもの」であれば記事になりやすいかも知れませんが、「無難に良いもの」であれば、それ単体で記事を書きにくい場合もあります。
一方で、何か非常に注目された後であれば「良いもの」が陳列されていることそのものがプラスに働く場合もあります。 また、「良いもの」が大量にあるということが総合的に着目される場合もあります。 そのため、「良いもの」をある程度そろえておくのは大事であるというのが今のところの私の感想です。
8.「とにかく調べる」という方法もある
何かについて、「とにかく調べる」という方法もあります。
調べた結果をまとめて記事にしても良いですし、調べることで新たな発見があり、それを元にあらたな活動に繋がることもあります。
困ったら、とにかく調べたり、何かを考えるうえで、「根本的にこれの意味するところは何だろう?」と噛み砕いて、要素を取り出したり、抽象化することで切り開けるコンテンツもあるというのが、最近の私の感想です。
9. 所属組織がポイントの場合もあり
「ネットで重要なのは誰が言ったかではなく、何を言ったかである」という論調が流行った時期もありますが、実際を見ていると「○○に所属している人がこう言っている」が重視されることが非常に多いです。
なお、所属組織を暗黙の後ろ盾のように使う手法は、足を踏み外したときに結構痛い目にあえる諸刃の剣なのでご注意ください。
10. ネット上でのやり取りそのものもコンテンツになり得る
TwitterやFacebook等でのやり取りが公開されている場合、そのやりとりそのものがコンテンツになる場合もあります。 第三者が見られる状態で行われるソーシャルメディア上のやり取りは、読者にとって、相手を覗き見している気分になれます。
そのため、ネットでの情報発信を目指している個人にとっては、ソーシャルメディア上でのやり取りもコンテンツの一部だったりします。
11. 地道に努力しても報われない場合がある
地道にコツコツと努力したからといって、読者等が増えるわけではありません。
努力すれば確実に報われるわけではないのがツライところです。
12. ダークサイドに落ちるかどうか
スパム行為を行って無理矢理読者を誘導したり、多くの人々が不快と感じる言動で炎上させることで、比較的容易に多くの注目を集めることが可能です。
個人的に、そういったダークサイドの手法を使うことはあまりお勧めしません。
13. 最初から有名な人の活動方法は参考にならないかも
最初から有名な人のネット活動は、あまり参考にならないかも知れません。
たとえば、アメブロの芸能人ブログで、芸能人が身の回りのスナップショット写真等を掲載し続けているようなものがありますが、読者がそれを見て満足するのは、その芸能人が書いているからであって、記事そのものの内容ではないと思われます。
特に知名度が無い人が全く同じことをしたとしても、恐らく誰も見向きもしてくれません。 知名度が無い人の情報発信に人々が興味を示すとすると、その人物ではなく、その人物が発信する情報に対してです。 それが積み重なることで、徐々に情報発信者に対して興味を持つ人が増える可能性はあるものの、基本的に内容で勝負する以外に恐らく方法はありません。
14.「人」ではなく「数」に見えてたら危険
ブログ購読者数、Twitterフォロワー数、Facebookいいね数、などを見ていると、徐々に人々が「数値」に見えてしまうことがあります。
しかし、実際は人々は「数」ではなく「人」です。
それを忘れて、読者等を「数」や「PV(Page View)」としてしか見なくなってしまうと、恐らく、足を踏み外すので注意しましょう。
15.「波」に乗るかどうか
ネット上での色々な人々の発言を眺めていると、その時々で「波」のようなトレンドがあるのがわかります。
「波」になりそうな話題の存在をいち早く察知してそれを先取りしたり、「波」ができてからそれに乗ることで、全く関係ないときに同様の記事を書くよりも注目を集めやすくするという方法もあります。
場合によっては、自分で書いた記事が「波」を作る場合もありますが、そうなると、話題が続いている間は注目され続けたりもします。
ただ、「波」を探してひたすらそれに乗っているようなことばかりを繰り返していると、離れて行ってしまう読者もいるので、「波」に乗るのかどうかは考え方次第だと思います。
16.「おちゃらけ」による「おもしろさ」を狙うかどうか
色々な人々が思わず知人に紹介したくなるような、突っ込みどころがある「おもしろい」コンテンツを作るのが流行しています。 おちゃらけたコンテンツを上手に作り続けることができれば、多くのアテンションを集めることも可能です。
しかし、目指しているイメージによっては、おちゃらけるのが好ましくない場合もあります。 おちゃらけコンテンツは短期間でアテンションを集めるための効率の良い手法と言えますが、その手法を採用することが好ましいのかどうかを考えた上で活用することをお勧め致します。
17. 質を実現するために、ある程度の数をこなす必要がある
人間は訓練すれば、その内容に関しては上達していくものです。 文章に関しても、恐らくそうだと思います。
最初のうちは、何をどう書いて良いのかわからなくても、何度も色々な文章を書いていれば、自然と文章を書けるようになるかも知れません。
内容によって訓練そのものの効率は異なるとは思いますが、量をこなさず苦労せずに、文章の質を実現できる人は非常に稀だと思うので、ある程度の数をこなすことも大事です。
18. ネットだけの話ではない
なお、実世界においても他の人に興味を持ってもらえるようにすることと、ネットで人々に興味を持ってもらうようにすることはあまり変わらないかも知れないと最近は思います。
19.「ネット有名人」はスタートラインに過ぎない
ネット上の、しかも特定の狭い範囲内でだけ知名度を上昇させたとしても、一般的には単なる無名の人でしかありません。 Twitterのフォロワー数等をドラゴンボールのスカウターのような感覚で語られている場合がありますが、ネット上で読者が増えたからといって、戦闘能力が上昇するわけでもありません。
「ネットでの影響力」って何?という感想もあったりします。 ネットって所詮はマイナーな場所なんですよね。
ネット上で知名度が上昇することで、一般的なメディアと交流する入り口にたどり着くことができるという、単なるスタートラインに立てるだけという考え方もあります。
最後に
で、これらを行ったうえで得られるメリットというのは、そこまで大きいものではない気もします。
「アフィリエイトや広告収入が得られる」という考え方もあるかも知れませんが、PV(Page View)あたりの広告収入の相場等を何となくWebで検索したうえで、生活するのに最低限必要そうなPVを考えてみると、絶望感を味わえると思います。
一方で、ネット上である程度注目されてしまうと、ちょっとしたことをネット上に書き込んだりすることで炎上させてしまい、実生活に影響を与えてしまうというデメリットがあります。 ネットでの知名度を積み上げていく行為のアナロジーとして私が好きなのは、「階段を昇って行って位置エネルギーを溜めていくのと同じようなもの」というものです。 階段を一歩一歩昇るようにネット上で面白い記事等を積み上げる行為を続けると位置エネルギーが溜まって行くような感じになりますが、そこから足を踏み外したときの「痛さ」は、階段を昇った段数に依存し、溜まった位置エネルギーがあまりに大き過ぎると「痛い」では済まなくなってしまいます。
ハンドル名等を利用して実生活に影響が及ばないようにするかどうかというような実際の活動手法にも依存しますが、ネット上で目立つことのリスクも警戒したうえでアテンション獲得を目指すのかどうかを考えた方が良いかも知れないと思う今日この頃です。
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