IPv6 PPPoE一体型HGWに関してNTT東西とJAIPAが基本合意、他

2013/5/24-1

総務省で行われた「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会(第24回)」の傍聴に行ってきました。 同研究会(検討会)は、IPv6全般を題材としつつもNTT東西に関する内容が非常に多い印象がありますが、日本におけるIPv6の最新情報および今後の方向性が公開される場であるとも言えます。 昨日も、プレスリリース等が行われていなかった初公開情報が開示されていました。

今回の目玉

今回の一番の目玉は、NTT東西とJAIPAがIPv6 PPPoEホームゲートウェイとアダプタを一体型させることに関して基本合意に達したことが公の場ではじめて公開された点であると思われます。

これまで、IPv6 PPPoEを行うには、NTT東西の「ひかり電話対応ルータ(ホームゲートウェイ)」とは別にIPv6トンネル対応アダプタが必要でした。 ユーザがIPv6 PPPoEを実現したいと思っても、既存の機器に加えて別途IPv6トンネル対応アダプタを購入しなければならなかったのが大きなハードルでした。

今回公表された基本合意内容によると、ホームゲートウェイ(300番台と400番台、および今後出る予定の機種)に対するソフトウェアアップデートとしてIPv6トンネル対応アダプタ機能が提供されるため、多くの既存ユーザが機器を新規購入せずにIPv6 PPPoEを利用可能になります。

配布資料より抜粋

NTT東西による発表資料に以下のような記述がありました。

  • IPv6の利用拡大・デフォルト提供実現のため、NTT東西のひかり対応ルータ(HGW)にIPv6 PPPoE対応アダプタの機能を内蔵化すること(アダプタのHGWへの一体化)が望ましいとのご提案をいただきました。
  • NTT東西とJAIPA殿で協議を行い、NTT東西のひかり電話対応ルータ(HGW)にアダプタ機能を内蔵化することについて、平成25年3月に基本合意に至りました。
  • 今後、当該機能の利用を希望するISP事業者様との契約を締結したうえで、ひかり電話対応ルータ(HGW)の開発を行い、平成25年度末より順次提供予定です。
  • 詳細に関しましては、5月28日にISP事業者様に向け説明会を実施致します。

さらに、以下のような記述もありました。

設定の簡略化:IPv6 PPPoE接続用ID/パスワードの自動設定を可能とする

これまで、IPv6 PPPoEを行うためのIPv6トンネル対応アダプタとホームゲートウェイは別々の機器であったため、ユーザが個別に設定を行う必要がありました。 しかし、これが一体型になることで、ユーザがIPv4用につかうPPPoEの設定を行うときにIPv6 PPPoE接続用ID/パスワードが自動的に設定されるように作ることが可能となります。 これにより、ユーザが意識せずに自動的にIPv6 PPPoEが稼働するようになる点が非常に大きな変化であろうという感想を持ちました。

「アダプタのHGWへの一体化」が持つ意味

これまでは、新規申し込みが行われた場合におけるIPv6サービス提供をどのようにするのかに関する議論が大半でした。

しかし、今回の「アダプタのHGWへの一体化」は、ソフトウェアアップデートによって行われるため、既存ユーザに対してどのようにIPv6サービスを提供するかという方向性の議論です。 今回の議題に登場する、ひかり電話対応ルータ(ホームゲートウェイ)は、フレッツ光を利用したインターネット接続サービスに必須というわけではありませんが、利用者数が非常に多いのでインパクトがあるのだろうと思います(参考:NTT(持ち株会社)について:株主・投資家情報 > 財務概要 > 契約数)。

これまでも、既存ユーザに関する議論はありましたが、実際に大きな動きが正式発表されたという意味では、既存ユーザへの大規模な対応は「これまでにはなかった/実現されてなかった動き」とも言えそうです。

ただ、注意が必要なのが、IPv6 PPPoEサービスをNTT東西に対して申し込んで契約を行ったISPを利用するユーザのみが関係する話であるという点です。 ホームゲートウェイソフトウェアがアップデートされたとしても、ユーザが契約しているISPがIPv6 PPPoEの契約をNTT東西と行っていなければ、そのユーザはIPv6 PPPoEを利用出来ません。

もう一点注意が必要なのは、100番台と200番台のホームゲートウェイのアップデートは行えないという点です。 ソフトウェアアップデートが行われるのは、300番台および400番台であり、全てのユーザのホームゲートウェイに対してIPv6トンネル対応アダプタ機能が自動的に追加されるわけではありません。

地域IP網からNGNへのマイグレーション

「平成25年3月末時点のフレッツ光の施設数」が一部の参加者に衝撃を与えていました。 光ネクストの割合が5割を越えていたためです。 これまで、Bフレッツが圧倒的なユーザ数で、光ネクストのユーザ数が少ないという意識がありましたが、既に半分以上が光ネクストになっていたことが公表されました。

配布資料に記載されていた施設数は、以下のようなものでした。

アクセス回線合計NTT東日本NTT西日本
フレッツ光(合計)1,730万975万755万
光ネクスト925.7万530.3万395.5万
Bフレッツ/光プレミアム804.3万444.7万359.5万

さらに、地域IP網によるBフレッツ/光プレミアムを光ネクストへと移行させていくマイグレーションに関しても説明がありました。

「光サービスユーザの地域IP網からNGNへのマイグレーションについては、ネットワーク基幹部分は平成24年度末に、一部のサービス(ひかり電話等)のサーバについては平成25年度末を目途に完了予定です。」、「お客様への移行に関するお知らせは、ISP事業者様との具体的な移行方法の調整後、平成25年上期中を予定しております。」とありました。

なお、NGNへのマイグレーションはネットワーク部分の話であり、それが無事に終わったとしても、ホームゲートウェイのバージョン問題は引き続き残っています。 Bフレッツ/光プレミアムで稼働している300番台と400番台のホームゲートウェイは、マイグレーション後にIPv6 PPPoEを利用可能になることが予想されますが、100番台と200番台を利用しているユーザは引き続きIPv6 PPPoEを利用できません。

ただし、100番台と200番台のホームゲートウェイであっても、IPv6 IPoEは恐らく利用可能です。 そういった点などが今後の議論におけるポイントのひとつとなりそうです。

JPNEのv6プラスとホームゲートウェイに関する議論

IPv6 PPPoEの一体化の話とは別に、IPv6 IPoEのVNEであるJPNEのv6プラスを実現するための機能がホームゲートウェイに内蔵化されることに関する議論が、研究会後半で行われていました。

論点のひとつとしては、たとえば外資がIPv6 IPoEのVNEになりたいと思った時に、同様のことをやろうとしてそれが可能であるかどうかというものでした。 何度か質問と回答がくり返されていましたが、最終的に、フレッツ・ジョイントがVNEに限らず申し込みが可能である点や、JPNEのv6プラスの詳細を知らなくても並行して同様の独自サービスが実現可能であるという回答が行われていました。

既存ユーザへとフォーカスが移る?

日本国内でのIPv6化は粛々と進んでいるように思えます。

これまでは新規ユーザに対するIPv6サービスに関連する取り組みが多かったのですが、今後は既存ユーザへのIPv6サービスをどうするのかという論点が増えそうな印象です。 たとえば、今回の発表で、ユーザの自主的な選択にゆだねると興味を示してくれない、という話や、ユーザが選択しなくても自動的にIPv6サービスを提供すべきだという意見が出ていました。

今後は、既存ユーザに対して強制的にIPv6サービスを提供するのかしないのかという論点が増えそうな気もしました。

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