IPv4アドレス売買とドラクエX
今月2日に、スクェア・エニックスからドラゴンクエストXが発売されました。 ドラクエXはインターネットを利用するオンラインゲームですが、早速非常に多くの方々が楽しんでいるようです。
で、某メーリングリストでも、ドラクエXに多少関連した話題が盛り上がっています。 その盛り上がりかたなのですが、某ISPからドラクエXに接続できないというものです。 その原因として「IP Address GeoLocationによって、そのIPアドレスレンジが日本ではないと判断されちゃってるのでは?」という推測が現時点では有力なようです(現時点では、あくまで某メーリングリストでそういった予想がされているというだけです)。
ドラクエXに限らず、おおまかな位置情報を推定するIP Address GeoLocationとオンラインゲームに関する話題はチラホラ目にすることがあります。 多少極端な事例ですし、ドラクエXとは関係ありませんが、2010年に「自宅で無届けサーバを運用していて電気通信事業法違反」というものが話題でした。
2010年の事件は、中国国内から日本国内のオンラインゲームに参加できるようにプロキシを運営し、中国からRMT(Real Money Trading)のためのオンラインゲーム活動ができるような有料サービスを自宅でやっていたので電気通信事業法違反になったのではないかという推測がされていました。 オンラインゲーム側が日本国内だけから接続できるようにしていたため、それを回避させる商売をしていたという話だと思われます。
このように、日本国内だけで参加可能なオンラインゲームもありますが、それを実現するためにIP Address GeoLocationが使われる場合もあるようです。
IP Address GeoLocationは、オンラインゲーム以外でも利用されています。 たとえば、特定のコンテンツを特定の国や地域でのみ視聴できるように制限しているサービスもあります(地域という意味ではradikoとか)。 検索すると、それらの地域制限を回避するために、外国に拠点がある事業者でVPSなどで自前サーバを建てる方法の解説があったりもしますが。 もしくは、「○○地域でVPS使いたいんだけど、安いところを教えて!」みたいなことがQ&Aサイトで質問されてたりもします。
で、そのような話とIPv4アドレス売買がどのように関連するのかですが、つい最近、これまで許可されていなかった地域を越えたIPv4アドレス移転が可能になりました。
これによって、北米地域を含むARINと、アジア太平洋地域のAPNICの間でIPv4アドレス移転が行えるようになったわけですが、地域を越えたIPv4アドレス移転が増えると、IP Address GeoLocationデータベースの更新状況に依存して「○○というオンラインゲームに繋がらないIPv4アドレス」というのが発生しそうです。 逆に、本来ならば繋がってはならないIPv4アドレスから普通に繋げてしまうという事例も発生しそうです。
現時点では、日本のNIR(National Internet Registry)であるJPNICはJPNIC外とのIPv4アドレス移転を許可していないので、いまのところはそのような問題は発生しません。 しかし、JPNIC外とのIPv4アドレス移転に関して現在議論中であり、そのうちJPNICでも地域を越えたIPv4アドレス移転が可能になるかも知れません。
JPNIC地域でのIPv4アドレス移転が行えるようになると、日本の事業者が海外のIPv4アドレスを購入するよりも、日本のIPv4アドレスを中国などの事業者が購入する事例の方が多く発生するような気がしています。 そうなると、かつて日本国内だったはずのIPv4アドレスが、ある日からいきなり中国のIPv4アドレスになるという事例も発生しそうです。
かつて海外のIPv4アドレスで、ある日から日本国内で使われるようになったIPv4アドレスが特定のオンラインゲームに繋がらない場合は、オンラインゲームを行っている事業者に「繋がらないんですけど。。。」という問い合わせが行く可能性が高いので、オンラインゲーム事業者は問題を発見しやすそうです。 しかし、「かつてそのIPv4アドレスが日本にあった」という理由で、本来ならば繋がって欲しくないところから繋げてしまうような場合は、繋ぐことに成功した人は黙っているはずなので、気がつかないかも知れません。
IPv4アドレス売買の前提となるIPv4移転のルールが最近変わったことで、IP Address GeoLocationまわりって、今後はデータベースのアップデートが大変になりそうだなぁと、そんな感想をドラクエXの話を見ていて漠然と持ちました(って、この記事は、ドラクエXとあまり関係無い話じゃん!と言われてしまえば、その通りですが。。。はい。ごめんなさい。)。
えーと。。。 最後に一言。 この文章は「今、使われているから」という視点で書いちゃってますが、「IP Address GeoLocationってそもそもどうなのよ!?」という視点は当然あると思います。 そもそも、全てのIPアドレスに対して正確な位置情報を把握するのは、ほぼ不可能ですし。 さらに、この話って、世界中のIPv4アドレス移転情報を収集しつつ最新の状態にデータベースをアップデートし続ければいいだけで、最新の状態とデータベースが一致しない可能性が多少増えることで現時点で正確とは言えないものがさらに正確ではなくなるだけと言ってしまえばそれだけという気もします。
っていうか、書き終わってみて、IPv4アドレス移転に限定した話って細かくてわりとどうでもいい話に思えてきた。。。
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