IPv4アドレス移転制度に大きな変化 - ARINからAPNICへの移転が可能に
IPv4アドレス在庫枯渇が現実のものとなり、IPv4アドレス移転(および、金銭を伴う移転である「IPv4アドレス売買」)が注目されていますが、北米地域のIPv4アドレスをアジア太平洋地域へと移転できるようになりました。
IPv4アドレスは、世界5地域に分けられて管理されていますが、これまで地域を跨いだIPv4アドレス移転は事実上許可されていませんでした。 2011年にアジア太平洋地域のAPNICが、RIR(Reigional Internet Registry)を越えたIPv4アドレス移転についてのポリシーを承認していましたが、他の4地域で同様のポリシーが存在していなかったため、地域を越えたIPv4アドレス移転が出来ない状態でした。
今回、ARIN(北米、及びカリブと北大西洋地域)でも地域を越えたIPv4アドレス移転に関するポリシーが実装されたため、ARINからAPNICへのIPv4アドレス移転も可能になりました。
歴史的経緯によって非常に多くのIPv4アドレス割り振られた地域であるARINから、中国やインドなどIPv4アドレスが激烈に不足している地域へのIPv4アドレス移転が可能になったことによって、IPv4アドレス売買事業者が活性化する可能性があることをAPNICの記事も認めています。 ARINの新ポリシー実装前の段階で、ARIN地域で設立されていつつも中国語で書かれたIPv4アドレス売買事業者のWebサイトがあったりしたので、実際にARINとAPNICの間でのIPv4アドレス移転(売買)は活発に行われそうだと思います。
なお、IPv4アドレス移転はIPv4アドレス保持者と受け取り側が合意するだけで出来るわけではないので注意が必要です。 ARINからAPNICへのIPv4アドレス移転を行うには、新規もしくは追加の割り振り同様にIPv4アドレスが必要な理由等を明確に説明する必要があります。
APNICは昨年4月にIPv4アドレス在庫が枯渇しましたが、ARINではIPv4アドレス在庫枯渇がまだ発生していないため、現時点でも新たなIPv4アドレス割り振りを受けることができます。 ただし、ARINからの割り振りアドレスの転売を防ぐための要件が定義されています(参考:https://www.arin.net/policy/nrpm.html#eight3 箇条書き3つ)。
JPNICは、まだ
もう一点注意が必要なのが、今回可能になったのがARINとAPNICの間でのIPv4アドレス移転ということです。
日本のNIR(National Internet Registry)は、JPNICですが、現時点ではJPNIC外部とのIPv4アドレス移転は許可されていません。 そのため、JPNICの指定事業者やPIホルダーは、現時点では、APNICや他RIRとのIPv4アドレス移転は行えないとされています。
JPNICとJPNIC外とのIPv4アドレス移転に関しては、現在議論中です。 JPNIC内に閉じているIPv4アドレス移転を、APNIC会員などのJPNIC外の組織とも行えるよう、JPNICポリシーの見直しが進められています。 現時点では、オープンポリシーフォーラム(OPF)でのコンセンサスが得られた状態です。
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