IPv6 IPoE VNE数増加が公表される、その他
本日、総務省で開催された「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会(第18回)」を傍聴してきました。 同研究会では、Google、マイクロソフト、NTT東日本、JAIPAによって、World IPv6 Launch対応やIPv6普及促進に関する発表が行なわれました。
DNSでのAAAAフィルタリングが短期的な暫定的対応であり、IPv6の普及促進が重要であるという点は、発表を行った4者で共通していました。
新しい情報としては、IPv6 IPoE VNE(Virtual Network Enabler)数の増加や、新規契約でのIPv6 IPoE無料化がNTT東日本から公表されたことがあげられます。 VNE増加数に関しては、現時点では検討が必要であるとのことでした。 VNEは現時点ではBBIX、JPNE、インターネットマルチフィードの3社です。
配布資料や議事概要は、「総務省 | IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究」のページで後日公開されると思うので、個人的に興味を持った部分を中心に簡単に記述します。
Googleによる発表
最初の発表を行ったのがGoogleの及川卓也氏でした。 及川氏は、発表後に退席されたため、質疑応答は代理の方が行われていました。
14ページに以下のような内容が含まれていました。
- 主要な世界的ウェブサイトは、問題のあるネットワークへのIPv6を無効にする
- Googleは問題のあるネットワークのDNSサーバーのリストを公開する予定
- リストは誰でも使用できるように公開される
- 主要なグローバル・サイトは、このリストの利用を検討中
- Google、Yahoo!US、Facebook、Akamai
後の質疑応答で話題になったのが発表資料(26ページ)に含まれていた「IPv6普及の数値目標」です。 発表資料最後のページである26ページには、以下のように記載されていました。
まとめると
- 今後2〜3年でIPv6の本格普及が必要
- これがユーザーが実際にIPv6を利用できるようにするために必要
- 実際にユーザーがIPv6を利用できないようなIPv6の広範な普及を避けるには、IPv6を使うユーザーを増やすことが求められる。
- これがIPv6本格普及のために必要な唯一の方法
- 2桁台のIPv6利用率が必要
- 一つの解決策
- IPv6を本格的に普及させるため、既存のオプションをわずかに変更
- できかぎり広範囲にこの解決策を普及させる
- 進捗を評価できるよう「数値目標」を設定することが大切
- Googleは求められれば、「数値目標」の設定に必要なデータを提供可
- これ以外の提案に同意いただけない場合であっても、この提案は受け入れていただきたい。
マイクロソフトによる発表
マイクロソフトの田丸健三郎氏が、OS提供者の視点で発表をされていました。
その中で、興味深かったのが以下のような部分です(14ページ)。
避けるべき解決策
- プレフィックス ポリシーの編集など、ホストの構成を変更する
- プレフィックスポリシーの編集は推奨されていない。(少なくともWindowsにおいて)
- ユーザーが何らかの作業を行わなくてはならず、ITスキルの違いによるコミュニケーションの難しさ、構成変更作業における誤り、作業負荷発生など様々な課題が内在する。
- ユーザーの使用状況を想定することは出来ない。モバイルユーザーなどは、自宅、モバイルWiFi、外出先など、その接続環境は一定ではなく、接続できなくなる可能性がある。
- ポリシーのスタンダードな構成がない
- プレフィックスポリシーを編集することは一般的な方法ではない。
この部分に関しては、最後の質疑応答で質問されていましたが、World IPv6 Dayの対策としてプレフィックスポリシー変更を推奨したところ、それによって想定できないトラブルが発生したことがあったためであると回答されていました。
NTT東日本による発表
NTT東日本の井上福造氏が「フレッツ光におけるIPv6インターネット普及に向けたNTT東西の取り組みについて」という発表をされていました。
発表内容は、非常に大きな変化を公表するものであり、NTT IPv6閉域網問題が大きく動いたという感想を持ちました。
8ページ目
課題1:IPv6 IPoEの申し込み方法の簡素化
- IPv6 IPoE(ネイティブ方式)の申し込み簡素化
- IPv4と同時に、お客さまがワンストップで申し込み手続きを完了する仕組みの提供(6月以降に提供予定)
- 新規申し込み回線へのフレッツ・v6オプションの工事費無料化
- NTT東日本:5月下旬申し込み分より
- NTT西日本:6月上旬申し込み分より
- VNE事業者様の新規参入枠拡大
- VNE事業者拡大の目途は立った
- 具体的な可能参入数とスケジュールについては条件が固まり次第、公表する
9ページ目
課題2:IPv6 PPPoEをご利用いただく際のイニシャルコストの低廉化
- IPv6トンネル対応アダプタの更なる低廉化
- NTT東西では提供開始時に1万円を切る販売価格を実現
- さらに無線LANカードとセットにして割賦による提供も実施中
730円/月(ボーナス併用12回払いの場合)- ISP事業者様の販売計画を鑑み、ビジネスベースで更なる低廉化を検討
※ 網終端装置のIPv4/IPv6デュアルスタック対応を実施し、ISP事業者様のコストを低廉化(12月以降に提供予定)
10ページ目
課題3:Bフレッツ/光プレミアムはマイグレーションによって、お客さまへのIPv6インターネット提供
Bフレッツ/光プレミアム
- マイグレーションはネットワーク基幹部分は平成24年度末に、一部サーバについては平成25年度末を目途に完了
- マイグレーション完了後のIPv6インターネット提供方法について検討中
口頭で、Bフレッツ/光プレミアムは現在6割と述べられていました。
JAIPAによる発表
恐らく、先日行われたISP説明会と同じ内容だと思います。
参考:JAIPA「World IPv6 Launch対応について(第2版)」公開
最後の議論
Googleに対して「問題があるDNSの定義」とは何であるかという質問があり、DNS情報公開時にデシジョンの基準についても出来るだけ透明性を確保したいという発言がありました。
マイクロソフトとGoogleに対して、それぞれ「IPv6閉域網は、こわれているのか?」という質問が行われました。 「IPv6でクローズドなネットワークに繋がるのは駄目なのか?」や「フォールバックするような環境を作ることが駄目なのか?」のような感じで、何度か表現を変更しつつ質問が行われていましたが、「フォールバック問題が発生するIPv6ネットワークは壊れている」という趣旨の回答が行われていました。
VNE数の増大がどれぐらいのオーダーなのかに関しての質問がありましたが、それに対してNTT東日本の井上氏は、まだ調整中であり正式な数は申し上げにくいとしながらも、「数十」と発言されていました。 その後、既存のVNEからビジネス的な観点なども必要であるという意見も出ましたが、「数十」というのは技術的な数値であり、合理的な数値がどれぐらいになるのかは今後検討が必要という話もありました。
Googleの発表資料中(24ページ)に「オプション4」という項目があり、そこに「イコールアクセスではない 3つVNEによる寡占」とありますが、そのことに対してJPNEから、すぐに契約したいというお客様がおらず儲からないことを述べつつVNEが増えればIPv6が普及するというのは短絡的ではないか?という意見が述べられ、それに対して「交渉の当事者ではないので、IPv6が普及するのであれば、その手段はどちらでもよい。VNEを増やしてほしいという声がISPからあったので載せた。」という趣旨の返答が行われていました。
BBIXから、「目途がたった」の根拠がNTT東日本に質問されました。 それに対して、網のキャパシティ増強などによって経路数増加に対応できるようになったと回答されていました。 ただし、現時点のルールが3社限定を前提としているため、VNE数が増加するのであれば、その部分に関して変わる可能性もあるとされていました。 また、非公式に「数十」とされたのは、あくまで技術的な観点であり、論理的な数と現実的な数は別であるとも述べられていました。
最後に「IPv6普及の数値目標」に関して、静かでありながらも激しい議論がありました。 「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」での数値目標を策定すべきであると、Googleが強く主張したのに対して、複数の教授から「国ではなく業界団体で自主的に行うべきである」という意見が述べられていました。 個人的には、この議論は結構ドキドキする内容で、傍聴していて多少怖かったのですが詳細は割愛致します。 興味があるかたは、総務省から公開されるであろう議事概要を後日ご覧頂くのが良いと思います。
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