IPv4アドレス枯渇に関して色々
あと半年後ぐらいに予定されているIPv4アドレス枯渇に関して箇条書きにしてみました。 とりあえず、ざっと思いつくのはこんな感じです。 何か思い出したら、また箇条書きにしてみるかも知れません。
- IPv4とIPv6には互換性がないので、結果として二つインターネットが出来る形になる
- IPv4アドレスが枯渇してもIPv4は使われ続ける
- IPv6への移行が進むとしても、ペースは遅いと予想されている
- IPv4が全く利用されなくなるほどIPv6への移行が進むかどうかを疑う人は日本では特に多い
- 全体としてIPv6へと移行する方向であるが、それがどれぐらいの速さかまだ誰にもわからない
- 2010年現在、IPv6ネットワークは世界的に拡大し続けている
- 2010年時点で最も積極的にIPv6を推進しているのがフランス
- 2010年に入ってからアメリカでも積極的にIPv6が用意されている
- IPv4アドレス枯渇は、ただちに一般ユーザに影響を与えるものではない
- IPv4とIPv6のデュアルスタック環境は世界中で運用され始めている
- IPv6の運用が本格的に開始されると、様々な不具合が発生するだろう
- IANA(Internet Assigned Numbers Authority)プールの枯渇は、IPv4アドレス枯渇の一つの指標でしかない。日本における本当の枯渇はAPNICのプールが枯渇してから。それは恐らく2011年末か2012年開始直後。
- IPv4アドレス枯渇時期の予測として世界で最も参照されているのがpotaroo予測である
- potarooで提供されているデータを見ると、何となく次のIPv4アドレス割り当て時期が予想できる
- potarooの言うRIR(地域インターネットレジストリ/Regional Internet Registry)在庫枯渇は、APNIC在庫枯渇そのものを示すかどうかは分からない。どのRIRが最後の/8を貰うかは不定(そろそろ想像でき始めるくらいかもしれない)だから。
- 現在JPNICからの分配もAPNICプールからで、JPNIC自身が過去に割り振られたブロックはごくわずかなので、日本における本当の枯渇は、JPNICから分配されているLIRを含め、APNICとほぼ同時期。
- IPv4アドレスの枯渇は、今のインターネットを停止するものではなく、規模拡大が制限されるというもの
- IPv6はIPv4アドレス枯渇への長期的解決策であるが、短期的にはIPv4アドレス枯渇に対する対策とIPv6への対応は全く別の話
- IPv4アドレス枯渇は、ホスティング屋さんに大きな影響を与えそう
- IPv4アドレス枯渇時点で、より多くのIPv4アドレスを保持している事業者は、IPv4アドレスを保持していない事業者よりも有利になる
- IPv4アドレス枯渇は、インターネットインフラ業界の「ふるい」になりそう。設備投資を要求するが、顧客にとって新しいサービスの魅力を産み出すわけではないので、体力がないとツライ。
- IPv4アドレスをつけることができず、IPv6 onlyなサーバが登場しはじめる時期がそのうち発生すると推測される。
- NTT-NGNとIPv6マルチプレフィックス問題は、どうなるんだろう?来年4月になってみないと、まだ色々見えない。
- IPv4アドレスが枯渇すると、NATの利用が増える
- ISP全体でNATを行うようなLarge Scale NAT(LSN、別名 Carrier Grade NAT)が登場する
- CGNはキャリア以外から不評だったので、LSNという名前が登場した。
- LSNが増えると、IPv4を利用したP2Pは行いにくくなる。そのため、P2Pは早期にIPv6へと移行するかも知れない
- LSNは、規模が大きくなるため、一般家庭用のNATとは構造が大きく異なる
- IPv4の運用コストは、IPv4アドレス枯渇後に徐々に上昇していくだろう
- Webサーバを運用する管理者は、IPv4アドレスだけではなく、通信時のTCPポート番号も管理する必要が出る。これは、LSN利用時にユーザを特定するためにTCPポート番号が必要となるから。
- Web屋さんにとっては、IPv6表記を考慮したアクセスログ解析が必須となる
- 世界のIPv4アドレスの1/256の大きさである/8ブロックは1ヶ月分の需要しか満たせない。
- /8ブロックの1/256である/16ブロックは、ざっくりと計算すると世界の3時間分の需要しか満たせない。
- 現時点でIPv4アドレスを保持している組織に「持ってるんだから返せ」と言っても、焼け石に水でしかなく、実はあまり建設的ではない。
- IPv4アドレス枯渇は地域性が強い話題である。インターネットは世界で5つに別れており、アジア太平洋地域のAPNICが最も早く影響を受ける。
- 最も影響が出るのが遅いのが、恐らくアフリカ地域のAfriNIC。
- 中国では、2012年からIPv6を本格的に開始し、2015年には移行完了したいという目標が発表された
- 2010年時点での中国でのインターネット普及率は31.6%(Internet World Statsより)であるが、世界に占める中国ユーザの割合は2割である。しかも、中国ユーザは今の2倍以上に増える可能性がある。
- 「検閲してるんだし、中国のユーザが全部NATの下に行けば良い」という意見が散見されるが、プライベートIPv4アドレスで最大となる10.0.0.0/8が1600万個しかIPv4アドレスを表現できず、中国の人口に対して/8ブロック一つがあまりに小さ過ぎることに気がついていない人は多い。本当にそれをやろうとするのであれば、かなりの工夫が必要だろうと思われる
- 2010年時点でのインドでのインターネット普及率は6.9%(Internet World Statsより)である
- インドでも2012年からIPv6を開始したいという発表が行われた
- 「IPv4アドレス売買」という規定はRIRには無い。あるのは「IPv4アドレス移転」に関して。移転に伴って金銭のやり取りがあるかないかはRIRは関知しない。
- インターネットユーザ数は増加し続けており、その増加が停滞するまでIPv4アドレスに対する需要は単調増加するだろう。
- IPアドレスは使い続けるものであり、使ったら消えるわけではないので、「消費」するものではない。
- 事実上の「IPv4アドレス売買」は、IPv4アドレス枯渇後に行われるだろう。ただし、それによってIPv4アドレス枯渇問題そのものが解決するとは考えにくい
- IPv4アドレスを目当てに会社ごと買収してしまうという方法もある
- いまのところ、IPv4アドレス移転はRIR内でしか認められていない。
- RIRを跨いだIPv4アドレスの移転が認められない限りは、「IPv4アドレス売買」や「IPv4アドレス市場」が活発になっても、世界のIPv4アドレスの半分はARIN管轄なので、APNIC管轄内にある日本ではIPv4アドレスがあまり流通しない可能性がある
- ARINでinter-RIR移転のプロポーザルが提案されたが、各種課題を抱えており、実現までの道のりは、まだまだ遠いと言わざるを得ない
- アメリカではIPv6の話題が非常に増えている。
- IPv4とIPv6の違いはアドレス長だけではない。プロトコルとして異なる部分が細かいところで色々あり、それが今後色々な影響を与えると推測される
- IPv6は契約に対してアドレスを振る可能性がある。IPv4だとSOHOルータを再起動すると違うIPv4アドレスが付く環境が多いが、現時点での流れではIPv6では引っ越しても同じIPv6プレフィックスが付く環境が多くなりそう。
- IPv6の運用でどうなるかが定まっていない部分は実は多い
- IPv6のアドレスは128ビットであるが、/64をほぼ固定で1セグメントで使うことになっているので、実際には2の128乗分のという無限のアドレスがあるわけではない
- IPv4だけで動くプログラムをIPv6とのデュアルスタックへと書き換えるのは、結構大変。一つだったものを二つに増やすのは非常に難しい
- IPv4とIPv6のデュアルスタックのプログラムを書く時に、フォールバックの挙動を正確に把握するのは結構しんどい
- ソフトウェアは利用されることでバグやセキュリティホールが修正されていく側面があるが、現時点では、まだあまり利用されていないIPv6関連コードに大きな穴が隠れている可能性は否めない。黎明期のIPv4の状態がIPv6で開始されようとしているとも言えそう
- DS-Lite(Dual Stack-Lite)とか、非常にややこしい名前をつけるのは、やめてもらいたかった
- LSN、DS-Lite、A+P、NAT444、NAT464、6rd、SAMは、提案そのものを見るのも楽しいが、提案をしている人物が所属している組織のおかれている環境を含めて考えると、バリエーションや特徴から納得出来る部分がある。それらの導入を考えるのであれば「どれが優れているか?」という視点も大事ではあるが、「どれが自分の環境に合っているか?」という視点も必要だと思う
過去に書いたIPv4アドレス枯渇/IPv6関連記事
- IPv4アドレス枯渇。その意味と恐らくこれから起きること
- IPv6はIPv4アドレス枯渇を直接解決するものではない
- OECDレポートから垣間見える「日本のIPv6」
- 「IPv4アドレス売買」とIPv6への移行
- IPv4アドレス枯渇/IPv6関連記事一覧
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