全日本剣道連盟YouTubeチャンネルが開設されるまでの道のり
昨日、全日本剣道連盟(以後、全剣連)によるYouTubeチャンネル開設が発表されました。 第五十六回全日本剣道選手権大会 特設サイトとセットでの試みです。
- 財団法人全日本剣道連盟公式YouTubeチャンネル
- http://jp.youtube.com/ZennipponKendoRenmei
- 何を目的としているのか
- いつどこで何をするのか
- それによってどのような効果が期待できるのか
- 先行事例としてはどのようなものがあるのか
- それを行うには予算がどれだけかかるのか
- 人的労力はどれだけ必要なのか
- それを行うリスクはどれだけあるのか
- 日本のIPv6採用状況が50%を超えている件について
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- ShowNet 2024 ローカル5G
情報小委員会
実は私は約11年間全日本剣道連盟の情報小委員会の委員を行っており、YouTubeチャンネル開設に関しては中の人です。 情報小委員会は外部の専門家を集めた諮問機関であり、意思決定は出来ません。 全日本剣道連盟事務局とは別です。
基本的に世の中の現状と、どのような事ができるかに関しての意見をまとめる作業を中心に行っています。
情報小委員会には、私以外に各種経歴を持つ数人の方々がメンバーとして参加しています。 阿部晶人(SFC剣道サークル同期、現在オグルヴィ・ワン・ジャパン所属)と私が「若い」メンバーで、その他は全員40歳以上です(最年長は70歳ぐらい)。
今回のYouTubeと選手権大会特設サイトは阿部さんと私が中心になって提案しています。 Webサイト制作などで発注先との交渉やマネージメントはプロの阿部さんが多くの部分を見ています。
選手権大会/YouTube提案
今回の提案を初めて行ったのは今年前半だったと思います。 提案を提案としてまとめあげて、それを役員に説明できる形にするまでかなりの時間を要しています。
そして、説明を行うには以下のような要素が不可欠でした。
中でも、先行事例紹介は重要でした。 「YouTubeコンテンツ提供者まとめ」を書いたのは役員の方々にYouTubeの現状をプレゼンするための情報を集めたついでに記事にしたものです。
プレゼン時に「CBSやBBCもチャンネルを開設しているんですよ!」と言ってもあまり興味を示していただけなかったのですが、「自民党チャンネルもある」という話は非常に興味を示していただけました。 先行事例を紹介するには、できるだけ「わかりやすさ」を大切にすることが重要だと学びました。
情報小委員会の帰りに、阿部君の「剣道を普及させる活動」の一環である剣道面白ブログパーツに関しての話を聞いて、ブログで紹介したのが「弱気なブログを剣道で撃破」でした。 結果、百式さんなどの大手ブロガーの方々に取り上げて頂き、「剣道」というコンテンツが剣道とは無関係なブログやWebで拡がって行くという状況をリアルタイム報告しつつ示せたのも大きかった気がします。
「インターネットを使えば剣道とは関係がないところでも剣道が話題になるんだ」という実感を持てた事例は印象に残ったと思われます。
役員の方々に「それが良いものだ」という認識が拡がってからは、行動は非常に迅速でした。 一度GOが出てからは非常にスピーディに話が進むことがあるのが全剣連の良いところです。
プレスリリース
実は、全剣連は、剣道時代/剣道日本という剣道雑誌以外に対する同時プレスリリースをしたことがあまりないようです。 そこで、今回は初の試みとして「YouTubeにチャンネルを開設したこと」をプレスリリースするという提案をしました。
具体的には、プレスリリースの日程を数ヶ月前から決定し、それに向けて準備を進めました。 公開できるコンテンツを準備 IT系オンラインニュースサイトでプレスリリース先が掲載されている箇所にプレスリリース文を送信しました。
プレスリリース送信先の探し方
オンラインニュースサイトの探し方がわからなかったり知らないという方は「オンラインニュース」という単語で検索をしてみると良いかも知れません。 発見したサイトの運営組織ページを見たり、「お問い合わせ」ページを見たりしながら、プレスリリースを受け付けてくれそうなところかどうかを判断していきましょう。 最近ではブロガーへのプレスリリースも少しずつ増えている気がします。
雑誌などの〆切に制約がある媒体の考慮
2大剣道雑誌には多少早めにプレスリリース内容を伝えてありました。 雑誌メディアには原稿の締切日というものがあり、プレスリリース周辺日に雑誌紙面にて情報を掲載して頂くには1ヶ月ぐらい早めに伝えなければならないためです。 このとき、早めには伝えましたが「他には言わないで下さい」というお願いをしました。 とは言え、雑誌以外でのプレスリリースによる情報の方が世の中には先に出ます。 ただ、今回のプレスリリースは業界誌の読者とは違ったジャンルに対して出しているので、あまりかぶっていないと考えています。
手探り
私にとってもプレスリリースをするのは初めての経験でした。 取材を受けたり、質問に対応したり、プレスリリースを受け取ったりしたことがある人は全剣連や情報小委員会にいましたが、「剣道」という情報を剣道界以外に積極的に出そうという試みはあまり行われていませんでした。 関係者全員が初めてであり、試行錯誤でした。 今後、色々とやりながらプレスリリースを行う体制も整えていくのだと思います。
プレスリリース文
プレスリリース文を書いたことがない場合、どのように文章を書くかで悩むと思います。 ゼロから全部やるとなると立ち尽くしてしまう人でも、原案があると修正作業などは行いやすいです。
そこで、今回は私がプレスリリース文の原案を書いてみました。 とはいえ、私もプレスリリース文を書くような経験が無いので、「NIKKEI NET 日経プレスリリース」に掲載されている各種プレスリリースを参考にしながら文章を考えて原案を作りました。 どのような情報が掲載されているか(例えば発表組織や連絡先やURLなど)、どのような言い回しが多いか、どのようなレベルでアピール文を書いている事が多いか、などを中心に色々見ました。
作成した原案を元に全剣連に修正をして頂きました。 出来上がった原稿はPDF形式にして頂き、メールにPDFを添付する形で送信してもらいました。 PDFが添付できない送付先には、原文とPDFへのURLを記載する形にしました。
参考になれば幸いです
○○連盟というスポーツや文化団体は日本国内に色々ありますが、自らプレスリリースを出すという事をしていない組織も多いのではないかと思います。 私は、情報を持っているところが積極的に情報を開示して行く事によって、様々な文化やスポーツに関しての情報が露出する頻度が上がれば良いと考えています。 今回は、そのような組織の参考になればと思い、あえて書いてみました。
各種問題
剣道界では、取り組むべき各種難題があります。 例えば、韓国のクムド問題などは結構深刻です。 恐らく剣道人口は減少していますし、オンラインでの剣道情報はまだまだ不足していると思います。
情報小委員会は、主にITに関連する話題に関する諮問機関なので、「世間がこうなってますよ」「このような事が出来ますよ」というのを可能な限りわかりやすく伝えるのが役目です。 そのため、様々な問題に対する根本的な解決方法を提案できるわけではありませんし、すべきでもないと考えています。
個人的には、現状では今回の全日本選手権特設サイト設置及びYouTubeチャンネル開設など、情報を広めるという観点から側面的に支援をする方策に関して重点的に提案して行きたいと考えています。 情報開示とは関係ないものも含まれますが、個人的に私が過去に関わったものとしては、全剣連事務局内のコンピュータ化、事務局内LAN整備、kendo.or.jpの取得や、全日本剣道連盟のWebサイト開設/リニューアル、全日本剣道連盟が独自にホームページを更新できる体制を作るなどの各種手伝いをしてきました。
前進しています
結果として歩みは非常に遅いと思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、最近の全剣連は徐々に前進するスピードが上昇していると思われます。 平均年齢が60歳を超える意思決定機関が多い全剣連としては、異例のスピードで変化に適応しようとしているのだと思います。
世間が変わり、インターネット上での情報流通が「当たり前」になってきたことや、意思決定をする役員の方々が自分自身でもインターネットを利用して「便利さ」を実感していただけるようになったというのが大きいのかも知れません。
YouTubeでのチャンネル開設はゴールではなく、スタートです。 今後、映像を撮影してコンテンツを作り上げるという作業をルーチン化し、全剣連が自らコンテンツを作り出したり情報発信を出来るような体制作りを行い、継続的に映像という形の「情報」を世界に発信し続ける事ができるようになることが重要です。 情報を出す事で認知度を上昇させ、各種勘違いを多少でも抑制できればと考えています。
最後に
情報が公開されていない分野は非常に多くあります。 そのような業界では、情報を求めていつつ、半ばあきらめている人が多いと感じています。 「IT技術者」が知り合いにいない場合が多く、「何ができるのか?」「世間では何が起きているのか?」「自分たちは遅れているような気がするが、本当なのか?」のような疑問に対する返答を得られないためです。
もちろん、組織内システムの発注先企業との交流はあります。 しかし、そこはあくまで組織内のシステムを発注する先であり、「その組織がどうあるべきか?」を相談するような先ではありません。
そのような組織の中に入って行って、情報を公開できるような体制を作って回る事が本当に良いことかどうかは、残念ながらわかっていません。 情報を公開してしまったがために、パンドラの箱を開いたような状態にならない保障はありません。 微妙なバランスの上に成り立つ組織というものもあります。 そもそも、収入にもならないのにそんなことに首を突っ込みたいという物好きも少ないかも知れません。
私は自分が何故、このような手伝いをしているのか自分でも良くわかっていません。 思い起こせば学生の時から11年間続けていますが、生活の糧としてやっているわけではありません。 月に1度か、2ヶ月の1度の委員会という限られた時間内で、何をテーマにして、どのような提案をまとめ上げられるかに関してひたすら試行錯誤している気がします。
今まで続けてきた理由ですが、Linus流に言うと「それが楽しいから」なのかも知れません。 他者から見ると恐らく単なる自己満足でしかありません。 公開されていない情報があって、それを求めるユーザが多数いることがわかっていて、ちょっとした事でその情報が公開できるという事実がわかってしまったので、今は走っているのかも知れません。 何処まで何が出来るかは、わかりませんが出来る範囲内で今後も色々やってみたいと考えています。
なお、ここに書いている内容は私個人としての意見であり、全日本剣道連盟の意思とは無関係なのでご注意下さい。
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