子供の監視は昔よりしやすくなっているはず。技術的には。
子供に携帯を持たせるべきかどうかや、フィルタリングに関して話題になっているようです(記事参照)。 今回ここで書く話は直接その話と関係があるわけではないのですが、子供を持つ知人と話をしていて思った事を中心に書いています。
技術の進歩で子供の行動が水面下へ
知人曰く「技術の進歩で子供の行動が水面下へ潜むようになったと思う」だそうです。 このような意見は何度か耳にしたことがあります。
例えば、「昔は家に固定電話が一つあるだけで、誰と連絡を取っているかがなんとなくわかっていた」という事を言う人がいます。 子供を含めた各自が携帯電話を持つようになり、直接子供同士がやり取りをするようになったということです。
インターネットに関しても同様に語られているところに遭遇したこともあります。
本当は昔よりもわかりやすくなっているはず
このように、技術の進歩によって子供の行動は水面下にもぐってしまうようになったのでしょうか?
状況によっては昔よりも水面下に潜っているという点には同意しますが、それは技術的な問題ではないと感じています。 技術的には、むしろ逆に「監視をし易い体制」になっているのではないかと思います。
良く出てくる例としてはGPSで位置がわかるというものがあります。
携帯電話も通話記録を見れば、各自が誰といつ話したかがわかります。 ただ、通話記録の問題点としてはリアルタイム性がないところかも知れません。 1ヶ月に一度の粒度では粗過ぎてあまり使い物にならない場合もあります。 何日も待たされたのでは忘れてしまいます。 例えば、Webなどを使ってその場で子供用携帯の通話記録が見られるようになると随分状況は変わると思います。 これは技術的には可能です。 (実現への問題は技術以外の部分だと思っています。)
インターネットに関しても同様です。 親が子供のメールやWebを監視していれば色々わかります。
これらの技術は既にあります。 企業が従業員のメールを監視するのは当たり前のように行われていますし、Web閲覧の履歴等を監視し続けるスパイウェアも一般的です。
親が子供に対してスパイウェアを仕掛けて、インターネット上のやり取りを監視することによって、子供が話さない「事実」を知ることが可能になります。 親に正直に話をする子供(中高生以上を想定)は少ないのではないでしょうか? 少なくとも私は親にほとんど話をしていないですし、あの頃は「いかにばれないか」が命題であった事例もたくさんありました。
メールでのやり取りを監視していれば、子供同士のトランザクションを生で知ってしまえます。 Webでの閲覧を見ていれば、子供の「興味」まで知る事ができてしまいます。 例えば、検索単語を見ていて「死ぬ 方法」などを探していたら、かなりの確率で緊急事態だと思って対処が可能になるかも知れません。
なお、あまりに監視を容易にし過ぎると、今度はプライバシーの問題に遭遇します。 親であっても子供をそこまで監視するのは倫理的にどうなのかという問題もあります。 また、パスワード等が判明したときなどのセキュリティ上のリスクというものもあります。 ここら辺はトレードオフなのではないかと思います。
フィルタリング
フィルタリングもあった方が良いとは思いますが、親が判断してつけさせるかどうかを考えられるべきだと思います。 判断とは、数あるフィルタリングサービスから思想的に合致するものを選べる事を含みます。 画一的に全員から「有害情報」を取り除くのはあまり現実的とは思えません。
また、小中学生ぐらいの子供に対する監視は肯定するような親でも、成人になった子供に対しては監視をすべきではないと考える人は多いと思います。 未成年の間に無菌室で育った子供がいきなりフィルタ無しの成人になったときのギャップが怖いような気もします。 守る人が守ってあげようと思えて、守られる方も言う事をきくかもしれない時期にフィルタなしを経験できた方が良いのではないでしょうか。
いい大人になってから覚えてしまった悪い遊びは破滅的に身を滅ぼすキッカケになるという話もありますし。。。 悪過ぎない悪い遊びは子供のうちに多少やってみるのが良いのかも知れません。
リテラシの問題
現状では、問題は技術ではなく、主に情報リテラシやサービスの問題だと思われます。 (なお、そのようなサービスが行われていない事を「技術的にできていない」と表現する場合には、「技術的な問題である」という表現も可能だと思うのでご注意下さい。)
技術的には可能だがよっぽどマニアックな人でなければその存在や利用方法を知らないという問題が、まずあると思います。 技術を知らなくても、親が色々出来るようなセット(サービス)の充実が今後発展すれば多くの問題は緩和するのではないかと私は考えています。
携帯電話事情
携帯電話を持っていないとクラスの中で徐々に話題についていけなくなり、仲間はずれになっていってしまうという事情もありそうです。 本当は持たせたくないけど、仕方がなく持たせるという行動を取る人が増えて行く結果、結局さらに「持ってないと仲間外れ」状態が加速するのかも知れません。 そういう意味では、鶴の一声で一斉に子供の携帯電話を廃止して欲しいと願っている親はむしろ多数派なのかも知れないと感じることもあります。
最後に
親が子供を監視するというと「そこまでやるか?」と感じる方もいると思います。 「そこまでやりたい人はそこまで出来る」「そんなことしたくない人はしない」という選択肢が存在するのが重要なのではないでしょうか? (もちろん、選択肢が多すぎると考えるの自体を止めてしまう人が増えるので選択肢が多すぎるのは問題です。適度な粒度で選択が出来る必要があります。)
技術が進歩すれば必ずと言っていいほど何らかの副作用が発生します。 車が無い世界では交通事故は発生しません。 しかし、だからと言って車が悪いわけではありません。
技術の進歩と副作用の度合いはトレードオフであり、技術による利点と問題点とを天稟にかける作業が必ず発生するのではないでしょうか。 携帯電話やインターネットという恐ろしく便利なツールによる副作用は今後も色々と表面化すると思われますが、その度にパニック(ヒステリー)状態にならずにトレードオフを考えて冷静に対処をしていくのは非常に難しい作業のような気がする今日この頃です。
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