変な物売り場
和蓮和尚さん(キャズムを越えろ!)の「商品陳列棚を決めずらい商品は売れない...という特性がイノベーションを阻害する」を読んで連想したものです。
要は「そりゃここにあるだろ」って誰もが思うようなコーナーが思い浮かばない商品は売れない*1ということである。
と書いてありましたが、まさにその通りだと思います。 ただ、個人的な感想としては、問題は商品棚ではないと思っています。 一番の問題は、長い説明が必要になることと、頑張って説明しないと商品の嬉しさや、それを使って何がどう良くなるかが連想しにくい事だと思います。
店頭での販売員をやった時の感想として、音楽を聴く、テレビを見る、などの直接的に用途が想像がし易い商品を売るのは比較的簡単です。 興味がありそうなお客様に対して、商品の付加機能を説明したり、機種ごとの特徴を説明すれば良いからです。 あとは、激安の海外製製品などを含めた数多くある機種の特徴を覚えていて臨機応変に対応できるかどうかが勝負になる気がします。
説明が大変
陳列棚が無いというのは、その製品のカテゴリが存在していないということと同義だと思われます。
12年前は、町の小さな電気店でイーサネットケーブルコーナーが存在する事はあり得ませんでした。 しかし、現在は小さな電気店でイーサネットケーブル専用コーナーが存在することもあります。 フラット型、カテゴリ5、カテゴリ6、RJ45だけ、生ケーブルなどが並んでいる事も、昔ほどレアではなくなりました。 (もちろん、電話線を含んだネットワークケーブルコーナーで1種類だけという事も多いです。)
12年前にイーサネットケーブルの使い方を連想できた人が世の中にどれだけいたでしょうか?
ネットワークを使う事を楽しいと思っていた人が、家の中に10MbpsイーサネットのHUBを置くことはあったと思います。 ただ、その人が客人に対してホームネットワークの便利さを説いても、客人は「ハァ???」だったと思います。
そして、その頃の家電量販店にとってHUBは売れ筋商品ではなかったと思います。 (その頃のイーサネットスイッチは高すぎて量販店で扱ってなかったと思います。)
このように、人々が容易に連想しないものであるため、多くの人が「欲しい」と思う事がそもそも少ないのが問題であると思われます。
愚痴ってばかりいてもしょうがないので解決策になりそうなものを考えてみた。これは参考になるかも、と思った事例は家具量販店のIKEAだ。IKEAでは「○○商品群の棚」なるものは存在せず*3、こんな部屋、あんな部屋といった部屋のサンプル、いわば商品の「使用例」が並んでいる。
と和蓮和尚さんも書かれている通り、必要なのは「商品」ではなく、「ユースケース」を広く多くの人に知ってもらう事だと思います。 何が嬉しいのかを知らないものを買う人は非常に少ないので、嬉しさを重点的に伝えるのが良いと思います。
「カテゴリが無い」というカテゴリを作ったらどうだろう
カテゴリが存在していないのであれば、いっそのこと「無カテゴリ」というカテゴリを作ってしまってはどうだろうかと思いました。 例えば、家電量販店の一角に「変なもの売り場」「キワモノ売り場」という、「変」である事を前面に出したコーナーを作ってしまってはどうでしょうか? 「変わっているガジェット」というだけで、最初は用途が良くわからなくても心躍ってしまう人がいる気がします。
さらに、そこに吸い寄せられる人種は、カタログを置いておけばある程度読み漁るでしょうし、販売員が鬱陶しくなるほど根掘り葉掘り質問をするのが大好きだと思われます。 今までになかった「新しい楽しさ」があるのであれば、理解を示してくれるかも知れません。
変なものショップ
家電量販店は「量販」をすることが目的です。 そのため、出来るだけ「売れるもの」を優先的に売ると思われます。
「無カテゴリ商品」は売る労力が極端に大きく、しかも売れないという分野の物であると思われます。 そのため、現状のような状態になっているのであると予想しています。
月並みな案ではありますが、そのような物を売る場所は、やはりWebだと思います。 「変なもの売り場」をWeb上に作り上げれば良いのではないでしょうか。
Web上の「変なもの売り場」に必要なのは、「商品の陳列」ではなく、「信頼できるコンシェルジェによる納得できる解説」だと思います。 現状で繁盛している「変なもの売り場」と言えそうなのは、価格コムと人気のガジェット系ブログである気がします。
ただ、価格コムでは自分が興味を持っていない製品を調べる事は少ないですし、ガジェット系ブログでは最新情報以外を見る機会が少なくなります。 これら二つを足して2で割ったような、「商品の陳列」が存在しつつ、「コンシェルジェ」が存在するようなWeb空間があれば良いのかも知れないと思いました。 さらに、先日のJストリームさんの記事で紹介したようなPIP(Person In Presentation)技術と変なものショップは相性が良かったりするかも知れません。 商品毎にビデオを制作するのが大変でしょうが。。。
これは、一見誰でも出来そうな事である気もします。 大量の商品をアフィリエイトリンクで陳列するところまでは誰でも出来ますが、そこに「信頼感」を出すというのは並大抵の事ではないだろうと思われます。
製品を作っている所が出来る事
普通に販売店に置いてもらっても売れにくい物をWebで売ろうと思うと、情報を公開する事が大切になってくると思われます。 例えば、取り扱い説明書をPDFなどの形式で誰でもダウンロードできるようにしたり、使い方だけではなく、機能の詳細や動作原理などを解説したマニア向け解説を公開するという手法が良いと個人的に考えています。 販売員のための売り方/アピールポイントマニュアルなどがある場合には、それを公開してしまうのも良いかも知れません。
既にある程度行われ始めていますが、使い方ビデオやユースケースビデオをYouTubeなどの動画配信サイトにばら撒くのも効果的だと思います。
最先端の事をやっているのであれば、その「やっていること」自体に興味を持つ人は多いはずです。 公開するだけで勝手に解析して、情報を伝播してくれる人は多いはずだと思います。
多くの企業が情報を公開していけば、竹の子のようにWeb上に「変なもの売り場」が増えていくと思われます。 これらは主にアフィリエイトやドロップシッピングなどの形式で運営されるかも知れません。
単にリンクを張るのではなく、時間をかけて良い物を選んできているとわかる「信頼できるコンシェルジェ」は一部になるとは思いますが、その一部の人が興味を示したときに解説をし易い状況を作ってあるかどうかが大きいような気がします。
思いつき
さらに、色々考えていって、最終的に思いついたWebサービスがあるので紹介したいと思います。 価格コムとガジェットブログとブログランキングを組み合わせたようなサービスです。 サイトの名前は仮に「ガジェシェルジェ」とします。 なお、これは思いつきで書いているだけで、実際に私がこれをやろうとしているわけではありません。
ガジェシェルジェでは、価格コムのように商品が陳列してあります。 各商品名のところに、厳選されたガジェットブログがトラックバックを張れるようになっています。 これにより、人気ガジェットブログがコンシェルジェになります。
さらに、売れ行きではなく、注目の製品がPVやユニークユーザなどの指標でランキングされていきます。 これにより、ユーザは「買いたく無いかも知れないけど、変で面白い」物が発見しやすくなるかもしれません。
ガジェットブログにとっては、読者誘導ができるという利点があります。 ただし、そのためには、ガジェシェルジェが十分成長して読者数を伸ばせそうだと思えなくてはなりません。 ガジェシェルジェが製品情報や企業からの試作品貸し出しなどの仲介をしても面白いかも知れません。
そのサイトをどうやって運営するかは、月並みで広告と商品へのアフィリエイトになってしまうのかも知れません。。。
というより、書き終わってみると価格コムさんが従来の「売れ筋」ではなく「変なもの」という視点のコーナーを作ったり、ガジェシェルジェのような事をすればそれで良いような気もしてきました。 まあ、単なる妄想ということで。
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