緑藻と二酸化炭素からバイオディーゼル燃料が生成される仕組みに関する研究 [ORF2008レポート]
どこにでもいるような緑藻がディーゼル燃料(軽油)を生成する仕組みの研究です。 慶應義塾大学先端生命科学研究所による研究です。
3年ほど前に、一般的な緑藻が二酸化炭素からディーゼル燃料を精製することが発見されたそうです。 その仕組みを使ったバイオディーゼル燃料の実用化に関して、様々な機関が研究を行っているとのことでした。 しかし、燃料が生成されるメカニズムは解明されておらず、冨田研では「何故ディーゼル燃料が生成されるのか?」を研究しているそうです。
研究の流れ
展示されていたパネルには、以下のような研究の流れが書かれていました。
当研究所で開発されたキャピラリー電気泳動-質量分析計と高速液体クロマトグラム-質量分析計を組み合わせ、藻の通常時と油産生時に細胞内で生産されたり、分解されたりする物質(細胞内代謝物質)を網羅的に測定します。 通常時と油産生時の違いを比較することにより、この藻がどのようなしくみ(代謝機構)で油を産生するのかを明らかにします。 そして、油産生に重要な物質や遺伝子を予測・検証して、それらを目印に油成分大量に産生する藻を作出します。
展示されていた緑藻
説明員の方の説明によると、今回展示されていた水槽に含まれる藻の容量は約20リットルだそうです。 ここから約小さじ一杯のバイオディーゼル燃料が生成されるとのことでした。 生成にかかる時間は約96時間であるそうです。
通常であれば水中の藻は硝酸イオン(窒素栄養)を取り込んで増殖していきますが、硝酸イオンが全て消費されてしまうと、藻は光合成をしながら油を産生していくようになるそうです。 自然界では、硝酸イオンは他の生物が排出する老廃物などから発生するアンモニアが分解されることによって供給されます。
不思議に思ったので、窒素栄養分が無い環境の作り方に関して聞いてみました。 窒素栄養分を無くす方法は単純なものでした。 展示されていたような水槽では、人為的に供給しなければ窒素栄養分は供給されず、1日ほどで藻によって消費されつくしてしまうそうです。 藻は1週間ほどの寿命を持っているので、残りの期間は二酸化炭素と光を供給すれば油を産生するそうです。
その他色々
藻以外にも冨田研究室として様々なポスターが展示されていました。 研究成果を生かしたベンチャー企業を起業されている方もいらっしゃるそうです。 説明員の方に説明して頂いた順から書いていくと、、、
蜘蛛の糸を人工的に作る研究 : 非常に強い強度を持っている蜘蛛の糸を作るにはどうすれば良いかを遺伝子を解析することによって発見しようという試み。
砂漠環境に強い遺伝子の研究 : 砂漠環境に生息しているバクテリアの遺伝子構造を網羅的に解析することにより、そこで生きるのに適した遺伝子構造を探す。 これによって、例えば捌く環境に強い植物を作る事が可能になるかもしれない。 同様の研究として塩濃度が強い土壌で育つ植物を作るという研究がある。
深海メタゲノム : 深海という極限環境に生息しているバクテリアや古細菌を網羅的に解析する。 例えば海底火山の噴出口など。 大型生物ではなくバクテリアなどを解析するのは、バクテリア等の方が多様で大型生物が生息できないような環境でも生息できるなど、適応環境が幅広いため。
最後に
私にとっては未知の分野でしたが、色々面白かったです。
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この記事はORF2008レポートです。
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