「はてな村」は次世代オンラインコミュニケーションの鍵かも
はてなブックマークで演じられる、はてなコミュニティでの内輪ネタや馴れ合い状態を「はてな村」と揶揄する表現があります。 ここ数年、del.icio.usなどのソーシャルブックマークやDiggなどのオンラインニュースがネット界隈では流行していますが、はてなが提供するブックマークサービスは異質であると思われます。 どこが異質か、というと、提供しているサービスが細かい(自由度が他のサービスより高い)事と、そのサービスを利用している「村」と呼ばれるコミュニティが形成されていることです。
この「はてな村」という表現は、「他を寄せ付けない内輪集団」というネガティブなイメージで使われる事が多いと思いますが、この「村」が出来上がる構造こそ、次世代オンラインコミュニケーションの鍵になるのではないかと思う事があります。
今まで
今までのオープンなオンラインコミュニケーションは、特定のキーとそれに付随する1次元配列に並んだ情報に頼る形態が多いと思います。 例えば、2chなどの掲示板システムは、スレッドとそれに付随する1000個のコメントによって構成されています。 その1000個のコメントには、他へのリンク(ポインタ)になっているものもあります。
オンラインコミュニケーションではありませんが、検索エンジンも同様の構造です。 キーワードという特定のキーの下には、最大1000個のリンク(ポインタ)が並んでいます。
はてブ
はてなブックマークで行われる「はてな村」コミュニケーションは、これらとは異質です。 まず、話題になるものが時間とともに変化します。 アナロジーとしては、笑点で特定のテーマが与えられて各自が選んで答えていくような感じかも知れません。 その「話題」に沿って成長していくのがブックマークコメント(通称ブクマ米)です。 このブクマ米が木の枝を構成します。
そして、ある特定の「話題」に言及したブログのエントリも、そのブクマ米枝に付随するサブ枝として形成されていきます。
この木の根元は「注目エントリ」です。 「注目エントリ」が成長して「人気エントリ」という枝葉を構成していきます。
そして、この「木」は毎日違うものが生まれていき、各木と木の間に相関関係が形成されるものも出てきます。
今までのオンラインコミュニケーションは、自分でコンテキストを探し出し、そのコンテキスト内で各自が自律分散的に思想を述べるものでした。 しかし、「はてな村」では、多くの人にとってコンテキストは与えられるものです。 日々刻々と与えられるコンテキストに対して、各自が自律分散的に思想を述べる形が出来上がっています。
このコンテキストは、機械が無理矢理勝手に作り出すものではありません。 コンテキストも多くの人々によって形成されていきます。 しかし、コンテキストを作り出す人は、コンテキストに乗る人と比べると多くありません。 コンテキストを作り出す能力が高い人を「アルファブックマーカ」と呼ぶ場合もあります。
「はてな村」の興味深い現象の一つとして、「顔が見える」ことも挙げられると思います。 多くのソーシャルブックマークでは、ほとんどの人が自分用にコメントを書いています。 しかし、現在は自分で読み返すよりも「他人のウケを狙う」コメントが多い気がします。 そして、多くの「ウケ」を取れる人は「個」として認識されていき、「ああ、この人ね」という状況になっていきます。
未来型コミュニケーション
現在、「はてな村」はIT系のユーザが多いため、IT系コンテキストが多く出現します。 もう少しIT系ではないコンテキストも成り立つような仕組みと、「はてな村」のような仕組みをミックスした、他分野もカバーできるオンラインコミュニケーションを作り上げる事が出来れば、今のオンラインコミュニケーションを進化させられるのではないかと思う事があります。 2chは全てのコンテキストにマッチできるように細分化されています。 そこまでいかず、でも、「はてな村」ほどITだけに偏ったわけではないものを、プラットフォームや仕組みとして作れないのだろうか?と思うわけです。
残念ながら、どうやったらスイートスポットを作り出せるようなシステムを作れるかは、まだ思いついていません。 また、そもそもどこかをいじってコミュニティを細分化することが正しいのかどうかもわかっていません。 ただ、何となく「はてな村」という現状に皆が見落としている面白い何かが潜んでいる気がしてなりません。
このように、はてブを次世代コミュニケーションへの鍵だと思って見ると面白いです。 「はてな村」という揶揄が良く出ますが、何よりもあれだけオープンな環境で「村」を意識させるようなコミュニティを作り上げて維持できていることは凄いことであると思います。
追記:2007/12/6
はてなブックマークとそれによって形成される「はてな村」がわからない方は、「はてな人気エントリ」や「注目エントリ」をご覧下さい。 それらのページ中に赤で書かれた「100 users」などのリンクがあります。 そのリンクの中に書かれているリストが今回の内容を表したブクマ米の集合です。
そのコメント内や紹介されているブログで、何故か話が通じ合っていて、新規参入者には理解できない状態になっているのが「はてな村」です。 数日ぐらい読んでいくと、何となく色々見えてくると思います。 Welcome To The Jungle!
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