インターネットが格差を増大させる事例:ウガンダの場合
「Mwesige, P.G. (2004). "Cyber elites: a survey of Internet Cafe users in Uganda" Telematics and Informatics 21: 83-101」という論文を読みました。 この論文には、ウガンダでのサイバーカフェで聞き取り調査を行っています。 インターネットが使えるのは限られた裕福な人たちに限られていると書いてありました。 ウガンダという国の現状なども書いてあり、色々考えさせられる内容でした。
ウガンダの状況
この論文内では、「CIA World Factbook, 2001; World Development Report, 1999/2000 ITU Statistics, 2002」から以下のデータを引用していました。
人口 | 2390万人 |
平均寿命 | 43.3年 |
識字率 | 67% |
公用語 | 英語 |
100人あたりの電話所有人数 | 0.28 |
貧困率 | 43% |
固定電話加入者数 | 61,000 |
携帯電話加入者数 | 210,000 |
1000人あたりのラジオ所有数 | 123 |
1000人あたりのテレビ所有数 | 26 |
インターネット接続ホスト数 | 293 |
10000人あたりのインターネット接続ホスト数 | 0.13 |
インターネットユーザ数 | 60000 |
10000人あたりのインターネットユーザ数 | 26.64 |
100人あたりのPC所有数予想 | 0.31 |
上記データを見ると、そもそも電話線が来ていない家庭が非常に多いです。 論文によると、電話線がある家庭のほとんどは首都カンパラといくつかの主要都市にあるそうです。 コンピュータを所有する家庭は、電話線が来ている家庭よりもさらに少ないそうです。 電力供給も大きな問題らしく、多くの場所は電気がないそうです。 また、電気が来ていても停電が多く、パソコンを使うにはUPSが必須らしいです。 UPSをそろえなくてはならないというのもパソコン利用のコストを増大させる要因の一つだそうです。
2001年時点では、月20時間のインターネット接続費は110USドルだったそうです。 国民の90%が1日2USドルで生活していることを考えると、一般の人には高すぎるそうです。 インターネットを使える事がエリートとしてのステータスになっているそうです。
ウガンダのインターネットカフェでアンケート
インターネットカフェの利用料金は、だいたい30分2ドル+月額固定で6ドルだそうです。
この論文では、インターネットカフェ利用者に対するアンケート調査を行っていました。 どのようなユーザが何をしているのかなどを調べるのが目的のようです。
アンケート調査の結果、典型的はインターネットカフェユーザは、25歳、男性、未婚、子供なし、高校卒業以上の学歴だそうです。 60%が男性で、73%が未婚、78%に子供がおらず、平均年齢が25歳だったそうです。 80%が30歳以下で、4%が40歳以上だったそうです。 35%が高卒、39%が大卒、17%がそれ以外を卒業だそうです。
他のさまざまな調査でも同様のユーザ分布を示す結果が出ているそうです。 例えば、トルコの首都にあるインターネットカフェのユーザの80%は男性だそうです。 その調査では、90%のユーザが未婚で、大半が学生だったそうです。
ウガンダでのアンケート調査では、インターネットを使って何をしているかも聞いていました。 ユーザのほとんど(98%)は、電子メールを使っていました。 61%がウェブサーフィングを行い、調査を行っていたのは28%でした。 ただ、調査を行っていたユーザのほとんどは、北米とヨーロッパで学位を取得する方法を調査していたようです。
インターネットをビジネス、もしくはショッピングに使うと答えたのは5%だったそうです。 29歳のセールスマン曰く「インターネットで買い物はできない。クレジットカードがある国からしか買い物が出来ないように見える」と言っていたそうです。
総括
現状では、ウガンダでインターネットを使える人は、既に裕福な人ばかりだそうです。 また、お金が必要なだけではなく、英語を理解できないといけないというのも敷居を高くしている要因だそうです。 インターネットによってデジタルデバイドが解消すると言われていたが、結局デジタルデバイドを生み出しているというのは皮肉な事であると書いてありました。
ウガンダの人の多くは電子メールしか使っていないそうです。 インターネットによって得られる、研究やビジネスのチャンスに関して多くの人々がまだ気づいていないと書いてありました。
発展途上国におけるインターネットカフェは、インターネットを人々の身近な存在にする役目を担っているそうです。 ただ、商業的にインターネットカフェが行われてしまうと、貧困国内のデジタルデバイドを助長する要因になってしまうそうです。
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