IIJ 月額945円、SIMのみの契約可能なLTE接続サービスを発表
IIJの中の人から「マニアックだけど面白いサービス開始するから話を聞きに来ませんか?」とのお誘いを頂いたので、お話を伺いに行きました。
今回発表されたのは、LTE接続サービスを使用した「IIJmio高速モバイル/Dサービス」です。 docomoのモバイル網を利用したMVNO(Mobile Virtual Network Operator/仮想移動体通信事業者)サービスです。
MVNOには、いくつかの方式がありますが、IIJmio高速モバイル/DサービスはL2接続モデルによるMVNOです。 MNO(Mobile Network Operator/移動体通信事業者)であるdocomoがモバイル網アクセスを提供し、MVNOであるIIJが顧客との契約やインターネット接続性確保を提供します。 L2接続モデルでは、MVNOがMNOと「ネットワーク接続」を行い、その接続分だけの費用をMNOに支払うというものです。
IIJmio高速モバイル/Dサービスはdocomo網を利用しますが、LTEで接続できるエリアではLTEで接続し、LTEで接続できないエリアでは3Gで自動的に接続します。 LTEと3G間でのハンドオーバーも可能です。
IIJmio高速モバイル/Dサービスには、月額945円のミニマムスタート128プランとファミリーシェア1GBプランの2種類があります。 以下、それぞれの特徴です。
ミニマムスタート128プラン
- 初期費用3150円
- 月額945円
- 128kbpsで常時接続可能
- 通信機器とSIMが別(SIMもしくはmicroSIMを選択可能)
- 525円/100MBの追加クーポン購入でLTE本来の通信速度を利用可能に(LTEエリア以外では3Gの通信速度)
- クーポン無効の128kbps状態で、3日あたりの通信量が366MB(300万パケット)を越えた場合、速度規制が行われる場合あり
ファミリーシェア1GBプラン
- 初期費用3150円
- 月額2940円
- 最大3枚までのSIMカード(SIMもしくはmicroSIMを選択可能)
- 1GB分のクーポン付き
- クーポンが切れると128kbpsのミニマムスタート128プランと同等の条件に(プリペイド式ではないので、1GB分を使い切っても128kbpsでの通信が可能)
- 追加クーポンは525円/100MB
データ通信定額制でありつつも、従量課金の要素も入っているという点が面白いと思いました。 動画やダウンロードをするのでなければ、月額945円で128kbpsのミニマムスタートプランで十分です。
一方で、動画を見たり、Ustreamで中継をしたくなったときにはクーポンを購入するなどして追加料金を支払わないと十分な品質の通信ができないという仕様です。 たとえば、1GB分のクーポンがあれば1Mbps相当の映像圧縮品質でのUstream中継が2時間ぐらいできます(Ustream Producer Proでの映像の最高品質が1Mbps強。ただしVBRなので被写体に依存します)。
基本的にSIMのみの契約で、必要に応じて機器も購入可能というサービス設計もマニアックで好きです。 ファミリーシェア1GBプランだとSIMが3枚まで提供されるというのも面白いです。 担当の方、曰く「1契約でSIM3枚提供は国内初です」とのことでした。
なお、両方のプランともにSIMはユーザに貸与されるものなので、解約時に返却する必要があります。
ユーザに対して割り当てられるIPアドレスは、IPv4プライベートアドレスです。 IPv6も予定はされているようです。
LTEモバイルルータ NI-760S
IIJmioでは、ネットインデックス社製の「LTEモバイルルータ NI-760S」も販売するそうです。 高速モバイル/Dサービスの申し込みと同時に購入すること可能とのことでした。
NI-760Sと2種類のSIMを並べて撮影してみました
商品設計とその背景
新サービスの紹介だけだと記事としてつまらないと思うので、MVNOの仕組みを紹介しつつ、IIJmio高速モバイル/Dサービスの設計思想を推測してみたいと思います。
まず最初に理解しなければならないのが、「なぜ、IIJ高速モバイル/Dサービスはマニアックなのか?」です。 もう少し考え方を広げると「なぜ、MVNOによる通信サービスはマニアックなのか?」という考え方もできます。
IIJmio高速モバイル/Dサービスと同じくMVNOによるモバイル接続事業としてNECビッグローブのサービスが2012年2月1日に発表した「BIGLOBE 3G」があげられます。 「BIGLOBE 3G」は、午前2時から午後8時に限定した3G網MVNOサービスを1770円で提供すると発表されています。
NECビッグローブのサービスとIIJのサービスは制限の手法が全く異なりますが、両方とも何らかの「制約」がある通信サービスを低価格で提供するという部分は共通しています。
なぜ制約があるサービスをMVNOで提供するかというと、単なる価格勝負を行ってしまうと十分な通信品質を確保できないサービスになってしまったり、既に大きな顧客ベースを持つMNOであるdocomoとの直接的な競争になってしまう可能性があるからではないかと推測しています。 小売店が生産者と価格勝負をして勝てるかというと、よっぽどのことが無い限りは勝てなさそうです。
で、どうするかというと、非常にマニアックな顧客層を狙って価格勝負をしたり、法人顧客などが必要とするような付加機能を実現することでMNOが手を出しにくい部分を狙ったりするというのが多そうです。
なお、「128kbpsで945円って、マニアックなところを狙ってますね」と言ったら担当の方が「新規市場の開拓も狙ってゆきたいんです」という意気込みが返って来ました。
MVNOの仕組みと「お金がかかるところ」
次は、どうして価格勝負が可能かをMVNOの仕組みをもとに説明したいと思います。
(続く:次へ)
最近のエントリ
- 「ピアリング戦記」の英訳版EPUBを無料配布します!
- IPv4アドレス移転の売買価格推移および移転組織ランキング100
- 例示用IPv6アドレス 3fff::/20 が新たに追加
- ShowNet 2024のL2L3
- ShowNet 2024 ローカル5G
- ShowNetのローカル5G企画(2022年、2023年)
過去記事