JPNE、フレッツ光ネクストで下り最大1GbpsのIPv6 IPoE期間限定試験サービス
昨晩、「World IPv6 LaunchにあわせてJPNEがIPv6接続試験サービスをするので話を聞きに来ない?」と言われたので行ってきました。
今回行われる試験サービスは、World IPv6 Launchの取り組みというよりは、タイミングを合わせたものという位置づけのようです。 この試験サービスを利用するユーザのメリットはIPv6 IPoEを試せるというものですが、IPv6 IPoEは下り最大1Gbpsなので、IPv4で通常のISPサービスを受ける時の下り速度上限200Mbpsよりも広帯域であるという側面もあります。
個人的には、ISPを通じて利用される前提のVNE(Virtual Network Enabler)に対してエンドユーザが直接申し込めてしまうという大胆さが面白いと思いました。
インタビュー
以下、インタビュー内容です。
Q: 今回の試験サービスの特長を教えて下さい
今回の試験サービスは、フレッツ光ネクスト回線をご利用のユーザ様が、IPv4接続用に契約しているISPに関わらず、IPv6 IPoEを試せるというものです。 一般的には、各ユーザ様がIPv4接続用に契約しているISPのサービスとしてIPv6接続サービスを申し込みます。
日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE) 中川あきら氏
今回の試験サービスでは、弊社Webサイトに必要情報をご記入頂けば、6/29までIPv6 IPoEサービスが無料でお試し頂けます。
ただし、既にIPv6 IPoEをご利用の方々は、既にIPv6 IPoEを通じてIPv6インターネットに接続されているので、今回の試験サービスをご利用頂く必要がありません。
Q: 通常サービスと今回の試験サービスの違いを教えて下さい
日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE) 久保田聡氏
まず、約1ヶ月限定の試験サービスであることがあげられます。 試験サービス期間終了とともに強制的に切断されます。
次に、弊社に直接お申し込み頂くという違いがあります。 通常のIPv6 IPoEサービスの場合、ISP様にお申し込み頂きます。
お申し込みは弊社Webサイトから簡単に短期間で行えます。
参考:
Q: ISPを直接やる準備ですか?
いいえ。違います。 通常サービスでは、ユーザ様から弊社に直接お申込頂く事を考えておりません。
Q: IPv6 IPoEはNTTとISPの両方への申し込みが必要だったと思うのですが、何で今回のサービスはJPNEだけに申し込んで実現できるのでしょうか?
IPv6 IPoEを実現するためにはフレッツv6オプション(取材者注:通称「網内折り返し」)と、IPv6 IPoEの申し込みの二つを行う必要があります。
NTT東西様との申し込み手続きの簡素化に関する取り組みの一環で、ISP経由でも申し込み代行が可能となっています。
Q: 何で、このような試験サービスを行っているのでしょうか?
IPv6 IPoEをもっと多くの方々に知って頂きたいと思って行っています。 また、より多くの方々にお試し頂くことで、間接的にIPv6活性化に貢献できればと思います。
Q: IPv6 PPPoEサービスを申し込んだうえで、IPv6 IPoEを申し込むとどうなりますか?
ちょっと回答に困る質問ですが、実は、両方同時に申し込むことも可能です。 ただし、両方を同時に利用することはできません。
IPv6 PPPoEをご利用の環境ではアダプタが利用されます。 IPv6 PPPoEおよびIPv6 IPoEの両方に申し込みを行われたとしても、ユーザ様ご利用の端末がアダプタに接続されている場合、IPv6 PPPoEのトンネルを通じてIPv6通信が行われます。
一方、両方の契約を行ったうえでアダプタを取り外し、アダプタを経由しない通信を行った場合は、IPv6 IPoEで通信が行えます。
Q: もしかして、アダプタの前で分岐して接続すれば、IPv6 PPPoEとIPv6 IPoEのマルチホームが出来ますか?
それは想定されている用途ではないと思います。
Q: 本来ならばISPが接続するVNEにユーザが直接申し込めるということですが、この試験サービスを使うと一時的に通信速度がアップしますか?
今回の試験サービスは、契約視点で見ると各ユーザ様がISP様ではなくVNEである弊社へと直接お申し込み頂きます。
一方、技術的な視点で見ると、今回の試験サービスと本来の商用サービスでの接続形態は全く同じです。 そういった意味では、今回の試験サービスだから通常よりも通信速度が向上するというわけではありません。
しかし、現在IPv4接続サービスのみをご利用のユーザ様にとっては、今回の試験サービスをご利用頂くことで通信速度が向上する可能性があります。 一般的に、フレッツ光ネクストでIPv4によるインターネット接続サービスをご利用の場合、下り最大速度が200Mbpsに制限されます。 IPv6 IPoEは、下り最大速度が1Gbpsになるので、そういう意味ではIPv4接続より広帯域なネットワークとなります。
参考:
- NTT東日本:「フレッツ 光ネクスト」におけるインターネット(IPv6 IPoE)接続および「フレッツ・v6オプション」の提供開始について
- フレッツ 光ネクスト>サービス内容(戸建て)の「フレッツ光ネクストファミリー・ハイスピードタイプ、下り回線(データ受信)」部分
Q: このサービスを申し込んでも、ユーザがリゾルバ用に設定しているDNSサーバがVNEを向いておらず、IPv4のISP DNSサーバでAAAAフィルタが設定されている場合、実際の通信ではIPv6 IPoE側の接続が利用されないと思うのですが、JPNE DNSサーバの情報がJPNE Webサイトには記載されていません。ユーザはどうやってIPv6 IPoE側のDNSサーバアドレスを知ればいいのでしょうか?
試験回線開通のお知らせメールに記載されています。
参考:
最後に
今回の試験の特長は、IPv6 IPoEを利用していないISPでIPv4接続サービスを利用しているユーザであっても、JPNEのIPv6 IPoEを期間限定で使えてしまうというところが面白さだと感じました。
言い換えると、フレッツ光ネクストを利用していれば、IPv4とIPv6で全く別のISPと契約することも技術的には可能であるということをこの試験サービスが示しているわけです。 現時点では、主にビジネス的な理由でIPv6接続性のみを提供するISPは一般的ではありませんが、たとえばNAT64/DNS64などの64変換技術を利用すればIPv6のみであってもユーザに対してインターネット接続サービスを提供することは可能です(あと、将来的には4rd/SAMでIPv4サービス提供とか)。
ただ、AkamaiなどによるCDNとの相性などを考えると、IPv4とIPv6で全く別のISPを定常的に使うにはIPv4とIPv6でDNSの使い分けをしたくなるわけで、IPv4/IPv6デュアルスタック環境の在り方やIPv6マルチプレフィックスの在り方というのは今のままじゃなくて新しく作り直した方が良いんじゃないかと思いはじめている今日この頃です。
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