ソフトバンクが最上位インターネットプロバイダ「Tier 1」に
昨日、ソフトバンクによるスプリント買収が発表されました。 スプリントは米国3位の携帯電話事業者なので、モバイルが注目されていますが、スプリントは世界3位(Renesys調査より)のTier 1でもあります。
Tier 1とは、世界中のISPやコンテンツ事業者等にインターネット接続性を提供するインターネットプロバイダです。 インターネットそのもののバックボーンとも言えます。
ソフトバンク、NTTと並んでTier 1へ
日本の大手キャリアとしてはNTT、KDDI、ソフトバンクがあげられますが、今回、ソフトバンクによるTier 1が実現すれば、キャリア3社中の2社がTier 1になります。 NTTもTier 1ですが、今回のソフトバンク同様に米国企業(Verio)を買収してTier 1になりました。
今年2月に、Renesysが発表したインターネットプロバイダランキングでは、スプリントは4位(3位)でした。 Renesysのランキングでは、Level3が1位、Global Crossingが2位、NTTが3位、スプリントが4位となっていますが、昨年、2位のGlobal Crossingが1位のLevel3に買収されているので、実質NTTが2位、スプリントが3位となっています。
なお、1位と2位が合併したので、現時点では恐らく1位が2位を大きく引き離して圧倒的なシェアを誇っているものと推測できます。 昨年4月時点での計測データでは、Level3+Global Crossingは50%以上のマーケットシェアのある圧倒的1位になり、2位のNTTと3のスプリントは、それぞれ20%強のシェアになっているとありました(参考:Level Crossing - Renesys Blog。複数社と契約するのが一般的であり、マーケットシェアは合計して100%ではないのでご注意下さい。)。
別の見方をすると、ソフトバンクによるスプリント買収が予定通りに完了し、スプリントが今のシェアを維持するのであれば、インターネットプロバイダとしてのソフトバンクはNTTと同等のレベルになるとも言えそうです。
まだ買収が完了したわけではない
ただし、現時点では、まだソフトバンクによるスプリント買収が完了したわけではありません。 ソフトバンクが発表した報道資料に、以下のようにあります。
当社によるスプリントの戦略的買収(子会社化)について(PDF)
当社とスプリント両社の取締役会で決議された本取引は、スプリント株主による株主総 会における承認、競争法上の承認、連邦通信委員会(Federal Communications Commission) による承認その他監督官庁の通常の承認、及び表明・保証違反がない等その他の前提条件 の充足(又は放棄)が条件となります。
参考までに、米国証券取引委員会で公開されているソフトバンク、STARBURST、SPRINT NEXTELによる合意および合併計画を示す文書は、以下のURLから見られます。
Tier 1とは何か?に関して
Tier 1とは何かを知るには、インターネットにおいてISPなどのAS(自律システム)がどのように相互接続をしていて、そこにかかるコストを誰がどのように負担をしているのかに関する商習慣を知る必要があります。 相手との力関係に応じて、払うのか、払わされるのか、それとも無償で相互接続するのかが決まります。
Tier 1は、インターネットの中心的な存在ですが、最近はその影響力の低下が指摘されています。 かつては非常に強い存在であったとされるTier 1に替わって大きな影響力を持ち始めているのは、GoogleやFacebookなどのコンテンツ事業者です。
そこら辺の話は、拙著「インターネットのカタチ - もろさが織り成す粘り強い世界」の8章「論理的な通信の密集地帯」で解説しているので、興味のあるかたは是非ご覧頂ければと思います(はい。自著の宣伝です。)。
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