OpenFlowが日本で流行る理由
ここ1年くらい、OpenFlowが結構話題になっています。 最近はOpenFlow単体で語られるよりも、SDN(Software Defined Networking)の実現手法のひとつとして紹介されることも多いのですが、とにかく色々なところでOpenFlowの話題を耳にします。 話題の中には、日本でのOpenFlowを活用した新ビジネスの開始や、導入事例紹介もあります。
ただ、OpenFlowの話題に関して、日本とアメリカで随分と温度差を感じることもあります。 OpenFlowが産まれ、仕様が決定されている本場アメリカよりも、日本の方がOpenFlowに関して凄く盛り上がっているようにも思えます。
導入事例の方向性も多少違うイメージがあります。 アメリカでOpenFlowを活用している事例は、大規模データセンターを保有する企業が自力でOpenFlowを活用して柔軟に管理が可能なネットワークを構築したというような話題が多いイメージです。 一方、日本では企業ネットワーク等でOpenFlowが活用される事例が紹介されていることがあります。
この違いは何だろう?と前から考えていたのですが、この前、「あ!こういうことか!」というのが解った気がしました。 全てがそうだとは思いませんが、そういう要素はあるだろうなぁという感じですが。
日本でOpenFlowが流行る理由、それはきっと、SI案件っすよ!SI案件。
OpenFlowは何でもできてしまうように思えるほど色々なことが出来ます。 実際は仕様上または機器実装上の制限というものがありますが、工夫をすればかなり色々と出来ます。 しかし、設定者が非常に細かく設定を行わないと逆に何もできない仕組みとも言えます。 何も設定しないと、通常ラーニングスイッチ並のネットワークすら実現できません。
「OpenFlowはプログラマブルである」と表現されることがありますが、OpenFlowをプログラミング言語に例えると「アセンブラ」だろうと私は思います。 世の中でC、C++、Java、Rubyとプログラミング言語の流行が変化していくなかで、「かゆいところに手が届くアセンブラは漢のロマン」というコンセプトで絶大な支持を得ているのがOpenFlowなんじゃないかというイメージです。 OpenFlowはプログラマブルなネットワークを実現しますが、言い換えると「プログラムを書かないと動かない」とも言えます。
さて、そのようなOpenFlowがSI案件として有能な理由ですが、私は以下のような要素があると考えています。
- OpenFlowは柔軟性が非常に高いので、これまで実現したくてもできなかったことや、できたとしてもお金がかかり過ぎたようなことを比較的安価な機器で実現可能となる場合がある。うまくマッチすれば発注者側に大きなメリットがある設計を実現可能。「いままでできなかった」というのが大きなポイントのひとつ。
- 既存のOpenFlowコントローラを使って何かをしようとした場合、ルール部分のプログラムを書いてコンパイルし直したり、追加モジュール等を実装して挙動をプログラミングしなければならないことが多い。結果として、現時点ではOpenFlowを自由に使うにはシステム開発を発注しなければならない場合が多い。
- 各組織にとって最適なOpenFlowの利用方法を提案する必要がある。OpenFlowを導入するには専門的なコンサルティングとネットワーク設計が必要。それができる組織は、現時点では多くはない。
- 現時点のOpenFlowは、全く同じことをしようとしても作る人によって違いが出ることが多いので、作った人以外はその後のメンテナンスが難しい可能性がある。
- 契約によっては、OpenFlowコントローラの機能変更を行えるのは、その機能の実装者(受注企業)だけになる場合もありそう。たとえば、発注者側がOpenFlowコントローラのバイナリだけを渡され、機能実装部分のソースコードへのアクセスが不能な契約であれば機能変更はできない。結果としてメンテナンス契約を他社に奪われることが、ほぼなくなりそう。
今年6月に行われていたInterop Tokyo 2012前にいくつかの日本企業がOpenFlowに積極的に取り組むという発表を行っていました。 当時、私は「OpenFlowってまだ色々と難しい部分もありそうなのに、何故なのだろう?」と不思議に思っていましたが、いまにして思えば、難しい部分も強い魅力なのかも知れません。 合理的な理由があってOpenFlowに積極的に取り組んでるのかもなぁと今は思えます。
OpenFlowの記事を好んだり、展示会等でOpenFlowネタがあると、そこに人が多く集まったりしており、日本では非常に多くの人々がOpenFlowに注目しています。 ユーザ側から見れば、「え!?これって何でもできる夢の仕組みじゃない?」という風に見えているような気もします。
一方、日本での異様なOpenFlow熱に関して、長年OpenFlowに取り組んでいた人々や、OpenFlow対応機器を発表している機器ベンダーが反響の多さに戸惑っている場面に何度か遭遇したりもしています。
そして、OpenFlowに日本的な商機が存在してそうです。 プライベートクラウドの次はOpenFlowか?みたいな感じかも知れません。
日本におけるOpenFlowの盛り上がりは、同床異夢状態なのかも知れないと思う今日この頃です。
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