Netflixストリーミングの50〜60%はテレビ番組
Netflixは、郵送のレンタルDVDベンチャーとして開始されましたが、現在は米国インターネットトラフィックの約25%(ただし今年5月時点。参考)を発生させていると言われるコンテンツ事業者でもあります。 YouTubeが約10%とあるので、その約2.5倍です。
このような米国コンテンツ事業者の巨人であるNetflixのストリーミングのうち、50〜60%は映画ではなく、テレビ番組であることが同社chief content officerのTed Sarandos氏によってMIPCOM conferenceで公表されました。
記事中には、Ted Sarandos氏の発言として以下のようなものも紹介しています。
"That can be mis-perceived as Netflix giving up on movies, which it's not. It's just consumers saying what they want,"
訳)このことをNetflixが映画をあきらめる兆候だという風に誤解しないで下さい。 これは、単に顧客が何が欲しいかというだけの話です。
これは、恐らく、Starzとの契約更新ができずに2012年2月28日以降はWalt Disney StudiosとSony Pictures Entertainmentのコンテンツを配信することができなくなる点と結びつけて語られてしまうのを警戒した発言だと思われます。
- Reuters: Starz to pull content from Netflix as talks fail
- GigaOM: More bad news for Netflix: Starz ends renewal talks
一方で、DiscoveryやDreamWorksのコンテンツをNetflixで配信できる契約を獲得したというニュースも報じられており、Netflixがどのような配信コンテンツを獲得できるのかが注目されています。
- Reuters: Netflix, Discovery in streaming deal for TV shows
- New York Times: Netflix Secures Streaming Deal With DreamWorks
ネット配信事業とDVDレンタル事業の分割
Netflixは、9月にネット配信事業と元々の郵送DVDレンタル事業の分割を発表しました。 ネット配信事業がNetflixという名前のまま残り、郵送DVDレンタル事業はQwiksterという名前になります。
- BBC News: Netflix splits DVD and streaming service
- Reuters: Netflix splits DVD and streaming services
これによって、ネットストリーミングのNetflixとDVD配信のQwiksterで別々の課金となり、事実上の値上げであるという報道が多く行われ、Netflixの契約数が100万契約減りました(25 million → 24 million)。
100万契約減ったとはいえ、それでも、オンラインストリーミングサービスとして2400万契約あるのが凄いと思います。 このような契約数を見て「日本ではなぁ」という感想を持たれる方々も多いような気がしますが、個人的には元々の環境の違いが大きい気がしています。
米国では日本のように無償で流れているテレビ番組を見る人が非常に少なく、多くの人々がケーブルテレビを利用しています。 インターネットへの接続も、ケーブルテレビ事業者が提供するサービスを利用する事が多いのも特徴です。 さらに、ケーブルテレビ事業者が提供するセットトップボックス(Cable box)などを経由した視聴を行うため、オンデマンドサービスに慣れているという背景もありそうです。 (ただ、日本でもケーブルテレビによるインターネット接続は増えているので、それによって今とは違ったコンテンツ視聴形態が普及する可能性はあるのかも知れません。)
NetflixとLevel3とComcastの件
Netflixのトラフィックはあまりに巨大であるため、その挙動が通信事業者に影響を与えることもあります。
アクセス網を提供するケーブルテレビ事業者のComcast(米国最大手)が、Tier 1であるLevel3とのPeeringを行うための料金を請求するということが2010年11月に発生しました。 従来であれば、Tier 1側が料金を受け取ることがあっても、一方的に料金を払うという事態はない(or稀?)とされていたので、アクセス網であるComcastが通称「Hyper Giants」の一つとして強くなっているのが表れている事件だと思いました。
- The Official Comcast Blog: Comcast Comments on Level3
- Level3: Level 3 Communications Issues Statement Concerning Comcast's Actions
そのことを解説したGigaOMの記事(Comcast vs. Level 3: Netflix Didn’t See This Coming)が面白いと思いましたが、個人的にはNetflixが主に利用するCDN事業者をAkamaiからLevel3へと変更(参考)して間もなくこの事件が発生したことに関連があるのかどうかに興味があります。
Netflixは、他のコンテンツ事業者同様に複数のCDN事業者を使い分けていますし、2010年前半にLevel3からAkamaiに乗り換えたと言われているので、どこまで直接的にCDN事業者変更が影響を与えているのかは知りませんが、何らかのトリガーにはなってそうな気がしています。
Netflixまわりは今後も色々ありそう
日本でサービスが行われていないこともあり、日本ではあまり大きな話題になりませんが、米国のニュースでは今後もNetflixまわりでは色々ありそうな気がしています。
最近のエントリ
- 日本のIPv6採用状況が50%を超えている件について
- 「ピアリング戦記」の英訳版EPUBを無料配布します!
- IPv4アドレス移転の売買価格推移および移転組織ランキング100
- 例示用IPv6アドレス 3fff::/20 が新たに追加
- ShowNet 2024のL2L3
- ShowNet 2024 ローカル5G
過去記事