「IIJグループビジネスの海外展開について」に行って来た

2011/10/18-1

10月14日(金)に開催された「IIJグループビジネスの海外展開について」という記者説明会に参加してきました。 日本のISPが海外向けに接続事業者としてではないサービスを展開する方法に興味がありました。

記者説明会の内容としては、昨年IIJがAT&Tジャパンのビジネスを買収したことによって、IIJグローバルソリューションズが設立され、日本から海外へと進出する企業に対してネットワークサービスを提供していますが、そのサービス内容が拡充されたというものでした。

14日に発表されたプレスリリースは、以下の2点です。

事業背景

最初に、IIJ代表取締役社長の鈴木幸一氏から「IIJグループの海外戦略」というタイトルで、IIJによる海外展開の背景や目的が紹介されました。

IIJがアジアに進出したのは1995年で、当時、アメリカセントリックなネットワークから脱し、アジアのインターネットバックボーンを作ろうとしたそうです。 当時は、国益とインターネットのハブ論が一体になってしまったということもあり、本来目指していたアジア内でのメッシュ構造ではなく、スター構造となってしまった話や、「かなり長い間インターネットトラフィックを私どもが運んでおりました」というように、トラフィックを運ぶという意味でのアジアでのIIJの活動が行われて来たことが紹介されました。

しかし、近年は、「インターネットが接続する、トラフィックを運ぶという時代から、使われ方が変わって来ており、象徴的なことを言えばクラウドコンピューティングのようになってきている」ことから、「アジア各国の方が従来のハブ論ではなく、サービスとして利用して頂くような時代が来たのかな、ということが大きな背景としてある」としつつ、「もちろん一番大きな背景は、日本のfactoryというか製造部門がどんどん海外に出て行く、それが中国が中心であったのが、たとえばバンコク、あるいはインドネシア、将来はミャンマーといった東南アジア全域に広がって来ており、そこでインターネットを使うための様々なサービスに対して非常にリクアイアメントが増えて来た」いう背景によって今回の海外展開があったとされていました。

IIJグローバルの海外拠点およびサービス展開

次に、「IIJグローバルの海外拠点およびサービス展開」というタイトルで、IIJグローバルソリューションズ代表取締役社長の岩澤利典氏から発表が行われました。

「日本の市場がシュリンクしていることから、日本でビジネスを行っていた企業の海外進出を検討している」という状況であることから、「海外とのネットワークであるグローバルネットワークのニーズがいままで以上に高まって来ている」と述べていました。

そのような状況で、「国内企業WANサービスとして、様々なキャリアの回線を利用しながらソリューションとして提供しているノウハウをそのまま海外へと展開していく」とのことでした。 「ローカルのキャリアの品質は、日本のキャリアと比べると厳しいものがある」ので「最も良いグローバルなキャリアとローカルなキャリアの組み合わせを選択してソリューションとして提供する」ことが求められていた一方で、「なかなかキャリアの世界では、それは実現できない」とのことでした。 さらに、日本語、英語、中国語によるヘルプデスクを用意してあると紹介されていました。

それらの現状に加えて、今回発表されたのが国際的なVPNサービスを実現する「Net de! World」のようです。

SMF(SEIL Management Framework)も紹介されていました。 SMFは、ルータなどのネットワーク機器を遠隔から自動的に設定出来るフレームワークを実現すると述べられていました。 SMF機能は、ジュニパーネットワークス社機器上でソフトウェア搭載され、現在日本国内で提供中だそうです。 SMF機能や、ソフトウェアルータのSEIL/x86の海外展開が準備中とのことでした。

クラウドサービスの海外展開

最後に、IIJ執行役員第三事業部長兼国際事業推進室長の丸山孝一氏から「IIJグローバルの海外拠点およびサービス展開」に関する紹介が行われました。

「日本で展開しているビジネスもしくはサービスを、日本と同じように海外でできないかという要望」が多く、「日本で行われているe-ビジネス、e-コマース系のビジネスを早くスタートさせるために、日本と同じような環境で素早く構築できないかという声」があるそうです。

米国では、2月よりクラウドホスティングサービス(Point Red)、8月よりプライベートクラウドサービスを、2011年度中にパブリッククラウドサービスを提供開始予定とありました。 中国では、2012年2月よりプライベートクラウドサービスを、2012年度上期よりパブリッククラウドサービスを提供開始し、その他アジア・欧州では2012年度より提供予定だそうです。

クラウドサービスの海外展開に関して、コンテンツプロバイダ向けIaaS基盤とソリューションも紹介されていました。 現地携帯キャリアとの連携による課金ソリューションの提供などが予定されているそうです。

海外の拠点としては、以下のように発表されていました。 IIJ Globalが独自に行うものと同時に、「IIJ単独では非常に厳しいので、様々なパートナーと提携して勧めさせて頂いています」とのことでした。

  • 米国には1996年に設立されたIIJ Americaがニューヨーク、ロス・アンゼルス、サンノゼの3拠点 中国では、IIJ Globalの100%子会社であるIIJ Global Solutions Chinaを2012年2月に設立予定
  • アジア諸国ではタイのバンコクに駐在事務所を2011年10月に設立。2012以降に各国で駐在員事務所を順次設置予定(シンガポール、ベトナム、マレーシア、インドネシア、インド、香港等々)
  • 欧州では、サービスプロバイダ、SIer等との提携やM&A等により、事業基盤の設立を検討中。

具体的には、クラウドサービスの基盤となるデータセンターの方々や、クラウドを構築して頂けるようなSIパートナー、もしくは販売等を助けて頂けるパートナーとの交渉が行われているようです。

アジアにおいては、日系企業だけではなく現地の企業も取り込めるように、パートナーとの連携を模索するとも発表されていました。

コンテナ型データセンターの海外展開

現在、松江にあるコンテナ型データセンターを海外展開を現在検討中であることが紹介されました。

アジアでは、大規模にコンテナを設置するのではなく、コンテナ1台からの小規模を含む中小規模での設置を可能にしたいとのことでした。

(取材は松江ではなく実証実験が行われている場所でしたが、参考にどうぞ→「IIJ外気冷却コンテナ型データセンター実験に見る和製クラウドの未来」)

最後に

今回の発表は、大まかに言えば、IIJグローバルがヘルプデスクや論理的な接続地点となる拠点をこれから世界中に増やして行くというものでした。 クラウド用の拠点を増やすことで、通信速度を上昇させられる地域が増えたり、VPN的な終端地点を増やすことで企業用のプライベートネットワークを構築しやすくする目的があるようです。

今回の私の中での発見は、「VPNサービスの提供」という部分でした。 言われてみれば一般ユーザがVPNを利用できない国もあり、そのよう状況で国境を跨いで企業ネットワークを構築するノウハウや契約を提供できる日本企業というのは、海外展開する日本企業にとっては重宝するのかも知れないと思いました。

あと、会見中の質疑応答で「海外では電信柱に剥き出しの回線があったりする」という話や、「その地域でどこから回線を調達すれば良いのかを知っている」という話も印象的でした。 確かに、海外での現地の回線調達は想像もつかないなぁと。

色々なところに色々なニーズがあるんだなぁと思った記者説明会でした。

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