IPv6はIPv4アドレス枯渇を直接解決するものではない(3)
しかし、それ以上にIPv4アドレスが枯渇した後のIPv4運用は「痛い」という感想も同時に持っている人が多いという印象を受けます。 IPv4ベースで今後も長期的に運用を続けようとすると、複雑さが上昇してコストが上昇しそうであるというのが理由です。
IPv6がどれだけ実際に使われるのかは、蓋をあけてみないとわからない面はもちろんあります。 しかし、どちらにしても、再来年以降のインターネットは、ネットワークトポロジが色々と複雑になりそうです。 IPv4だけがメインになるのであればIPv4を継続するために複雑な構成が増えるでしょうし、IPv6とのデュアルスタック環境が増えれば、それを原因とする問題点も色々と表面化するでしょう。
IPv6採用のタイミング
IPv6の採用に関してですが、私の考えとしては、ネットワークコネクティビティを提供するような事業者は、いまのうちから各種方式を調べておいたり、準備をすることで運用ノウハウを蓄積した方が良いのだろうと思います。
一方で、一般ユーザに関しては「適切な時期に対応すればそれで良いだろう」と考えています。 時期がくれば、IPv6サービスが普通に提供されるようになるだろうというのが私の推測です。 一般ユーザが現時点で無理にIPv6対応しても、特にメリットはなさそうです。 体験しておいたり、勉強したいという意味ではやってみるのは良いと思います。
私のサイトもIPv4アドレスの枯渇やIPv6を記事のネタとして扱ってはいますが、IPv6対応しているわけではありません。 現在利用しているホスティング会社にIPv6化に関して質問したことはありますが、基本的に対応時期は未定という回答でした。 IPv6対応するためにホスティング事業者を移行してIPv6対応をしようとまでは、現時点では考えていません。
来年以降になれば、恐らく様々なところがIPv6対応を開始し、私が利用してる事業者もそのうちすると思うので、そのときこのサイトもIPv6対応することになるのかも知れません。
最後に
IPv6への移行は非常に重要だと思います。 今後、世界中で多くの通信事業者がユーザをIPv6へと誘導しようとするのではないかと、私は推測しています。 そして、恐らく何年もかけてユーザはIPv6へと移行を促されるでしょう。
しかし、それとIPv4アドレス枯渇対策を考えなければいけないことは別です。 世界中のインターネットユーザはIPv4を利用しており、IPv4アドレスが枯渇した後もIPv4を使い続けます。 IPv6とIPv4は別のプロトコルであり、互換性がないので、既存ユーザが利用しているIPv4上でサービスを維持する方法に関して事前に考察することは非常に重要です。
さらに、IPv6がIPv4よりも使いやすかったり優れているか?という議論とも、また別の話です。 もっというのであれば、IPv6単体での話と、IPv4環境と平行してデュアルスタック運用される話も全く別です。 IPv6移行を促す過程で、IPv4とIPv6が混在するデュアルスタック環境が発生しますが、それが抱える様々な問題点や課題も徐々に見えて来ています。
IPv6はIPv4アドレス枯渇に対する長期的解決策であって、IPv4アドレス枯渇に対する直接的な対策でも緩和策でもないという視点で再来年以降のインターネットを考えた方が良いと思う今日この頃です。
おまけ
恐らくIPv6はどのような状況であっても「間に合う」という状態が発生しない「何か」なのだろうと思います。
もし、IPv4アドレスが枯渇するような状況になる前に世界全体がIPv6へと移行していたならば、IPv4利用者が激減する状況になるはずで、そのような状況下ではIPv4アドレスは枯渇しません。 そのため、「間に合う」か「間に合わない」かではなく、「IPv4って昔あったよね」と言う人が居るぐらいになりそうです。 さらにいうと、IPv4アドレスが枯渇する前にIPv6が普及していれば、「IPv4アドレスは枯渇しないじゃん!IPv6って本当に必要だったの!?」という意見が多く出る事だろうと思います。
一方で、IPv4アドレスが枯渇して、本当に困った状況になってから渋々様々な事業者がIPv6へと移行するような状況では、「IPv6は間に合わなかった」と言えそうです。
要は、問題発生前に何かを解決してしまうと、それに対して批判的な意見が増えるだろうし、問題発生してからではないと人々は動かないという事例の一つかも知れません。 現時点での状況を見る限り、IPv6は必要なものだろうと私は思いますが、それが本当に望まれているかというと必ずしもそうではなさそうだという微妙な感想を持ってます。
何というか、YesでもNoでもなくというアレな感想ですが。。。
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