IIJ外気冷却コンテナ型データセンター実験に見る和製クラウドの未来(5)
直近では、2010年8月3日に首相官邸Webサイトに掲載されている資料が参考になります。 総務省と国土交通省の回答では「特区としてではなく全国的に」という方向性になっています。 具体的には、総務省は現行制度でそのまま可能と回答しており、国土交通省は平成22年度中に新たに全国的に対応すると回答しています。 8月3日の回答を見る限り、特区として提案されたものが全国を対象としたものになっているようです。
「首相官邸:構造改革特区及び地域再生(非予算関連)に関する検討要請に対する各府省庁からの回答について」
総務省回答部分
このうち、総務省による解答は以下のようになっています。 総務省が回答を行っているのは茨城県からの要望に対してです。
「首相官邸:構造改革特区及び地域再生(非予算関連)に関する検討要請に対する総務省解答分の3ページ目「コンテナ型データセンターに係る建築基準法及び消防法の緩和」
該当法令等
消防法第17条第1項
制度の現状
消防用設備等(消火器具、屋内消火栓設備、自動火災報知設備等をいう。以下同じ。)については、防火対象物※の規模、構造、用途に応じて、設置、維持しなければならない。 ※ 防火対象物とは、山林又は舟車、船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属するものをいう
求める措置の具体的内容
コンテナ型データセンターの迅速かつ柔軟な事業展開を促すため、下記事項を要望する。
①コンテナ型データセンターを建築物扱いしない
②①が建築物扱いとなる場合、コンテナ型データセンター設置にあたっての建築確認申請を免除若しくは簡素化する
③②コンテナ型データセンターの火災警報や消火装置の設置を不要とする
具体的事業の実施内容・提案理由
【実施内容】
①コンテナ型データセンターを建築物扱いしない
②①が建築物扱いとなる場合、コンテナ型データセンター設置にあたっての建築確認申請を免除 若しくは簡素化する
③②コンテナ型データセンターの火災警報や消火装置の設置を不要とする
【提案理由】
我が国産業の国際的な競争力維持のためには、クラウドコンピューティングの進展等に対応できる、より大型でコストメリットがあるデータセンターの国内立地が必要である。
しかし、移設・増設が容易なため近年注目されているコンテナ型データセンターを設置する場合、わが国の現行制度ではコンテナが建築物と見なされるため建築確認申請や消防用施設の設置義務が課され、迅速な設置を妨げている。
茨城県は電力移出県であり、安価で安定した電力を供給できること、首都圏に近接し交通アクセスも優れていること、活断層がない安定した地盤の上に企業の多様なニーズに適合する安価な業務用地が数多く存在するなど、国内有数のデータセンター適地といえ、法の趣旨に添った安全確認ができる一定の要件を満たす用地への立地については、上述の規制等を見直すことにより、データセンターの効率的な集積が図られる。
【代替措置】
・コンテナ型データセンターは、常時遠隔監視されていること(メンテナンス時を除き人が近づかないこと)
・設置場所は強固な地盤の上に整然と整備され、周辺を緩衝帯で囲った用地であること
措置の分類
D
各府省庁からの提案に対する回答
コンテナが随時かつ任意に移動できない状態にあり、建築物として扱われる場合には、消防法上の防火対象物となり、防火対象物の規模、構造等に応じ、消防用設備等を設置しなければならない(例えば、一般の事務所等の場合、延べ面積300m²以上で消火器具の設置が必要など)。
ただし、消防用設備等の設置単位は棟ごとを原則としているため、いわゆるコンテナ型データセンターについて、各コンテナが構造的に独立しており、かつ、その床面積が30m²程度である場合には、消防用設備等の設置対象に該当しないことが一般的であると考えられる。
なお、複数のコンテナがダクトを用いて配線接続されているような場合であっても、各コンテナが構造的に独立しているのであれば、消防用設備等の設置単位はコンテナごとになることが一般的であると考えられる。
「措置の分類」を見ると「D」と書いてあります。 首相官邸Webサイトによると、措置のDは以下のように書いてあります。
分類
D 現行規定により対応可能
内容
* 既に施行されている現行規定により対応可能であるもの
※ 提案事項を別の制度を活用することにより対応できる旨の回答の場合は、本来の提案内容を実現するものではないため、本分類には該当しない。
※ これまでに構造改革特区の提案等に対する対応方針において本部決定された内容と同一の事項、地域再生基本方針等又は規制改革推進のための3か年計画(再改定)及び規制・制度改革に係る対処方針において措置することと閣議決定された内容と同一の事項で、未措置又は施行前のものは、A、B-1、B-2、 B-地ではなく、本分類に該当する。
このように、クラウド特区でなくても、構造的に独立していて床面積が30m²程度であるコンテナ型データセンターは消防用設備等の設置対象に該当しないとみなせるようです。
国土交通省回答分
国土交通省による解答は以下のようになっています。 国土交通省が回答を行っているのは北海道美唄市からの要望に対してです。
「構造改革特区及び地域再生(非予算関連)に関する検討要請に対する国土交通省回答分の4ページ目「コンテナ型データセンター設置にかかる要件の緩和」
要求事項 該当法令等
建築基準法第2条第1項
建築基準法第6条第1項
求める措置の具体的内容
コンテナを倉庫として設置し、継続的に使用する等随時かつ任意に移動できないコンテナは、建築基準法上の建築物に該当し、一定の建築物については着工前に建築確認を受けることが必要。
なお、4号建築物(都市計画区域等内に存する小規模建築物。鉄骨造の場合、1階建て、かつ、200m²以内)に該当し、建築士が設計を行ったものについては、建築確認検査において構造規定等に係る審査省略を受けることができる。
また、都市計画区域等外に存する小規模建築物については、建築確認検査は不要である。 コンテナ型のデータセンターは、平成16年12月6日 国住指第2174号「コンテナを利用した建築物の取り扱いについて(技術的助言)」における建築物から除外する。
具体的事業の実施内容・提案理由
データセンターの建設コストの削減を図ることにより、、国内データセンターの国際競争力強化を図るとともに、そのサービスを安心して利用できる環境を整備することを目指す。
措置の分類
B-1
各府省庁からの提案に対する回答
内部に人が原則として入らないコンテナを活用した通信機器収納施設については、建築基準法第2条第1号の建築物に該当しない設備機器として取り扱うことに関し、運用を明確化し、特定行政庁及び指定確認検査機関等に対し周知徹底を図る。
「措置の分類」を見ると「B-1」と書いてあります。 首相官邸Webサイトによると、措置のB-1は以下のように書いてあります。
分類
B-1 全国的に対応(平成22年度中に対応)
内容
* 提案内容について、新たに全国的な対応をするものであり、遅くとも平成22年度中に実施するものであって、対応策が明確であるもの
※ 対応時期、対応策が明確でないものは、本分類に該当しない。
※ 現行制度上制限されていたものが、制度が改正され、制限されなくなるもののみでなく、従来、制限の対象とされてこなかったものについて、その旨を周知徹底するために文書を発出すること等(関係団体のホームページへの掲載等による周知を含む)であって対応策が明確であるものを含む。
国土交通省からの回答に「内部に人が原則として入らないコンテナを活用した通信機器収納施設については」とありますが、やはり人が入らないというのが大きな要素のようです。
分類がB-1であることから平成22年度中に、内部に人が入らないコンテナ型データセンターが建築基準法第2条第1号の建築物に該当しない設備機器とみなさえる条件が明確化されるとともに、その運用方法も明確化されることが予想されます。
(続く:次へ)
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