IIJ外気冷却コンテナ型データセンター実験に見る和製クラウドの未来(3)

2010/8/23-1

水冷は貯水池などの設備が必要であったり、排水を行うときに適切な水温まで冷やしてから河川に放出することが法律で義務づけられているため、現時点では課題が多いという回答がされていました。

90kW分のサーバ

今回の実験では、熱が多く発生する環境での実証を行いたかったため、1U PCを調達するときに「1ラック10kW分、9ラックで合計90kW分のサーバを下さい」という依頼をして、わざわざ古いPCを調達したそうです。

実験の経過から、将来的にはPCのファンを全て取り除くことでPCの消費電力を削減できそうであることがわかっているとのことでした。 しかし、ラックに入るサーバの消費電力が下がると、場合によってはPUEが上昇してしまう可能性もあるそうです。 サーバの省電力が下がれば熱が発生する量も変わるので、空調の稼働量も変わると思われますが、サーバ側の消費電力削減の割合と空調での削減の割合によっては、結果としてPUE上昇もあり得るというのは何か不思議な感じがします。 分母と分子なので、まあ、そういうものだと思いますが。

ただ、PUEという数値よりも、全体的な消費電力削減による経費削減が重要だろうと思います。 また、色々と消費電力削減策が出来そうだという話は興味深いと思いました。

煙探知機を天井に付けられない!

コンテナ型データセンター内での煙探知機の設置方法も興味深かったです。

コンテナ内の空気循環は通常のデータセンターよりも強く、最も速いところで風速11m/sぐらいだそうです。 そのため、何かが発生したときには空気は上には行かずに、排気口へと全ての煙が吸い込まれてしまいます。

次の写真は、ホットエリア側の一番奥の壁にある排気口のアップ写真です。 排気口の前にある白いパイプの真ん中に小さな穴が開いていますが、ここから煙を検知するようになっています。

排気口前にあるパイプから吸い込まれた空気が、パイプを通ってホットエリア入り口付近の防災機器へと送られています。 排気口はホットエリア入り口とは反対方向にあるので、排気口から部屋の反対側までパイプが天井経由で伝っている形です。

防災機器として採用されているのは、能美防災が2009年に発売開始した火災予兆検知システムのPROTECVIEWでした。 能美防災といえば超高感度煙探知機VESDAが有名です。 コンテナに限らずVESDAはデータセンターで一般的に採用されています。

「人が入らない前提」ということで空気を強く循環させる環境だと、火災報知器もこんな感じの設置になっていくというのが面白かったです。

室温把握用USBシステム

室内の温度を細かく測定するために利用されているのが、USB温度計でした。 各ラックの前面(コールドエリア側)と背面(ホットエリア側)の上段、中段、下段に設置されていました。

このようなシステムを使って細かく温度調査をしているようですが、コンテナ内部での風が強いこともあり、室内でのラック毎に気温のムラはあまりできていないようです。

剥き出しの基盤が非常に素敵です。 変にキッチリ製品的な物があるよりも、こういう感じの方が「実験」という雰囲気が出ていて大好きです。

なお、このUSB室温把握システムはOpenBSDで動いています。 ハードウェアはStrawberry Linux社製のUSB温度計モジュールキットですが、今回の実験ではサーバがOpenBSDで稼働しています(Webサイトを見る限り正規サポートはWindows XPとWindows 2000)。 OpenBSDに関わっていてハードウェアに詳しく研究者な某氏(ここまで書けば解る人は解る筈。。。)がドライバを開発し、計測システムは堂前氏が書かれたとのことでした。

LED照明

コンテナ型データセンター内で使われている照明はLEDでした。 これは「消費電力を抑える」という姿勢を出すために、こうなっているそうです。

ということで、実用上重要かというとそういうわけではないようです。 蛍光灯をLEDに変更したところで、サーバや空調と比べるとあまりに小さな電力だったりします。 さらに、コンテナ型データセンターは「原則として人が立ち入らないこと」が前提であり、通常運用状態では照明が切れています。

とはいえ、ショールームの役割も果たしているIIJコンテナ型データセンター実験で蛍光灯よりもLEDの方が良いだろうとは思うので、そういうものだと思います。

ということで、LEDライト奇麗でした。はい。

将来はこんな感じ?

将来は、こんな感じで郊外にコンテナを平置きしたデータセンターを運営することを計画中のようです。

施設には常駐スタッフが数名いる状態になるようですが、常駐スタッフが行う作業は簡易なものが中心となるようです。 機器の設定などは基本的に東京にいるエンジニアが遠隔から行うとのことでした。

道路交通法とコンテナ型データセンター

今回の横幅3mというコンテナのサイズは、道路交通法上、輸送時に許可を必要とするサイズです。 許可を得るために、事前に通過する経路などを記載した制限外積載許可(道路交通法第五十六条)を出発地点の警察署に提出しなければならないのですが、申請に1.5ヶ月ぐらいかかるそうです。

(続く:次へ)

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