IIJ外気冷却コンテナ型データセンター実験に見る和製クラウドの未来(2)
コンテナ内部は以下の写真のようになっています。 左写真がサーバ前面があるコールドエリア側で、右写真がサーバ背面があるホットエリア側です。
コンテナ内部の温度調整は、2008 ASHRAE Environmental Guidelines for Datacom Equipment(以後、ASHRAE 2008)の基準を満たす範囲に保たれるそうです。 ASHRAE 2008では、データセンター内での温度と湿度が満たす範囲を規定しています(2004年のバージョンが厳し過ぎるので2008年版では条件が緩和されたようです)。
ASHRAE(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers,アメリカ暖房冷凍空調学会)は、名前の通り、暖房、冷凍、空調などに関する国際的な学会です。 ASHRAEは、空調に関連する規格やガイドラインも策定していますが、様々なところでこれらの規格が参照されています。
この基準を満たすために外気冷却などを行うのですが、外気冷却だけでは無理なので、従来通りのコンプレッサを活用した温度調整との併用になっています。 ただし、コンプレッサが電気を多く消費するので、可能な限りコンプレッサを動作させないことが重要とのことでした。 一番良いのは扇風機で外気を送風するだけのようですが、そうもいかないのが現実のようです。
あと、「外気冷却」という単語からも、コンテナ型データセンターを考える時に冷やすことを真っ先に連想しそうですが、単純に冷やせば良いというものでもないようです。 もちろん上限が問題なのはその通りなのですが、実は「下限」も非常に大きな問題になるようです。
たとえば、気温が下がり過ぎると結露しはじめたり、HDDのグリスが機能しなくなるという問題が発生します。
また、温度だけでなく湿度の下限も重要な要素であるそうです。 冬に外気を使っていて湿度が下がり過ぎてしまうと、静電気が飛んで故障の原因となります。 そのため、湿度が下がり過ぎると加湿する必要があるとのことでした。
日本では必要なさそうですが、カラカラに乾燥した地域では夏の加湿も必要になるという話題も説明中に出ていました。 地域の特性によってコンテナ型データセンターも細かいローカライズがあるのかも知れません。
このような問題に対処するため、IIJのコンテナ型データセンター実験では、冬はホットエリアからの暖まった空気と外部冷気を混合した混合空気を使っています。 これにより、ダンパーで羽根の傾きを変えるだけであり、低い消費電力で冷え過ぎた外気を暖めることが可能です。
IIJ.news vol.99より
このように、外気運転、混合運転、循環運転という3モードを使い分けているIIJのコンテナ型データセンター実験ですが、夏場はPUE 1.3、冬場はPUE 1.1、通年で換算するとPUE 1.2ぐらいになるだろうとのことでした。
PUE(Power Usage Effectiveness)は、The Green Gridが推奨しているデータセンターのエネルギー効率を示す指標です。 PUE値は、データセンター全体の消費電力をIT機器による消費電力で割ったものです。
現在、日本国内でのPUEトレンドは1.7ぐらいではないかと思います。 IIJのプレス発表中で「データセンター運用コストの大きな割合を占める電気代の約4割は、IT機器の排熱を冷やすための空調システムが占めています」と書かれており、PUEが約1.7であることがわかります。 2009年1月に総務省「第4回情報通信分野におけるエコロジー対応に関する研究会」でNTTが行ったプレゼンテーションの資料(NTTグループの地球温暖化防止への取り組みについて)を見ると、「PUEによるデータセンタの評価」というページ(11ページ目)で「現状の平均的なNTTビル」のPUEが1.7であるとされていることからも、最近の国内PUEトレンドは1.7ぐらいなのではないかと思えました。
今回のIIJ実験のように通年PUE 1.2であれば外気冷却によるコンテナ型データセンターは、従来よりも大幅に消費電力が削減できると言えそうです。
なお、余談ですがGoogleの発表によると、Googleでの最も効率が良いファシリティでのPUEは1.10のようです。「Google: Data Center Efficiency Measurements」。 今回のIIJ実験では、冬の間はGoogle内で最も効率が良いファシリティと同等の効率だったということだろうと思います。
水冷は?
外気冷却装置の話題で水冷に関しても話が出ました。
(続く:次へ)
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