AkamaiがP2Pサービスを発表(3)
ISPとの関係は?
AkamaiによるWebキャッシュは、ISPの対外トラフィックを軽減するというメリットをAkamaiサーバが実現しています。 Akamaiの強みは、ISPとの共存関係?が成り立っている、もしくは微妙なバランスを保っているという点だろうと個人的に想像しています。
しかし、今回公表されたCSDは、必ずしもISPでのトラフィックを軽減するとは限らず、むしろトラフィックを増大させる可能性もありそうです。 CSDが人気サービスとなった場合、ISPとの関係がどうなるのかに微妙に興味を持ちました。
アカマイ・テクノロジーズ・インク
インダストリーマーケティング担当副社長
ラヴィ・マイラ(Ravi Maira)氏
プレス発表会での現場記者からの「Akamai CSDを利用することでAkamaiカスタマーはサービス提供料金が低下しますか?」という感じの質問に対して、ラヴィ・マイラ(Ravi Maira)インダストリー・マーケティング担当副社長は「我々はAkamai CSDを無償で提供し、それによって価格が変わるようなことはしません。AkamaiカスタマーはCSDを使うことによって、より高品質な映像を受け取れる」という風に答えています(正確な表現は思い出せてません。すみません)。 CSD導入を契機にアカマイの価格引下げが起きる可能性を問う質問に対して、CSDは無償提供するものでありカスタマーの選択肢を増やすが他のサービス価格改定は考えていない、という回答のようです。 カスタマーにとっては、選ぶと無料で配信品質が上昇するサービスとしてAkamai ESD for Commerce内のCSDは存在するという形のようです。
ということは、ISPにとっては「Akamai CSDでトラフィックが減る」ということにはならなそうです。 というのは、「CSDを使うと視聴者は、より高品質な映像を視聴可能」というのが「CSDを使うとAkamaiキャッシュだけよりもP2Pによって域内トラフィックは増える」とも言えそうだからです。 Akamai CSDを使わずにAkamaiサーバのキャッシュだけで通信が行われるよりも+アルファな帯域がISP内をP2P的に流れることになるのかも知れません。
しかし、AS間を跨ぐバックボーントラフィックが増えるわけではなく、あくまで域内のトラフィックが増えるだけという考え方もありそうです。 域内トラフィックに関しては、事業者によって事情は違いそうですが、もしかしたら特に大きな影響がない話なのかも知れません。
帯域制限とユーザへの影響?
もう一つ気になったのが、今後増えると思われる、ISPによるユーザへの帯域制限との兼ね合いです。
「総務省総合通信基盤局電気通信事業部データ通信課:帯域制御に関する実態調査結果(PDF) 平成22年3月」を見ると、DPI(Deep Packet Inspection)を使ってP2Pそのものに対して帯域制限をするよりも、トラフィックを多く発生させているヘビーユーザに対して制限をかける方式が増加傾向にあります。
Ciscoの調査によると、2009年のP2Pを含まないビデオトラフィックは、全体の1/3であり、2010年の終わりには40%に近づくそうです。 去年と今年だけを見てもビデオトラフィックが増えているのがわかります。
さらに、Ciscoの試算では、今年はP2Pが帯域占有のトップでなくなります。 2000年以来、P2Pはインターネットトラフィック発生量が常にトップでしたが、今やインターネットビデオは、P2Pトラフィックを越える規模になりつつあるということのようです。
このような背景もあり、P2PトラフィックをDPIで特定して帯域制限をするよりも、単純に各ユーザが発生させるトラフィック量に応じて帯域制限をかけるのがトレンドになっていきそうです(ただし、現時点では多くの有線ISPは割と大きめの容量で帯域制限をかけています)。
帯域制限のトレンドが、今後顕著になったときに、CSDによるP2Pがユーザに与える影響があるのか、もしくはほぼ無いのか、どうなるのかはその時になってみないとわからなそうな気もしました。
State of The Internet 2010 1Q版
アカマイ・テクノロジーズ・インク
ネットワークス担当副社長
ノーム・フリードマン(Noam Freedman)氏
今回のプレス発表では、State of the Internet 2010 1Q版に記載されていると思われる情報を使った発表もありました。 個人的に、State of the Internet 2010 1Qは非常に楽しみにしているのですが、まだ公開されていないようなので、公開されたら読みたいと思いました。
今回の発表中に、ビデオのビットレートが高い方が連続視聴時間が長くなるという内容がありました。 今回は、ワールドカップ映像配信の結果から、高品質な受信をしているユーザほど視聴時間が長いということでした。
(続く:次へ)
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