AkamaiがP2Pサービスを発表(2)
CSDでは、トラッカー機能をAkamai Control Planeが提供し、P2Pによるクライアント同士の通信をAS(Autonomous System)内に停めることができるようです。 それによって、AS外へと向かう(もしくは流入してくる)P2Pトラフィックが発生せず、CSDがISPの対外線に対して大きな負荷はかけないというもののようです。
さらに、Akamaiサーバと組み合わせることで、従来のP2Pが得意としない出現頻度が少ないコンテンツの高速化にも対応したとのことでした。 AS内に存在するP2Pクライアントがコンテンツを持っていない場合には、Akamaiサーバが従来のコンテンツ配信と同じ方法でコンテンツを提供するようです。
ユーザは、NetSessionというプログラムをPCにインストールすることを求められます。 NetSessionは、Windows版とMac版があります。 Adobeの体験版などをインストールするときに、Adobeダウンローダをインストールすることを求められるのと同じように、CSDで配布されているものをダウンロードするときにAkamai NetSessionをインストールすることを求められるイメージだそうです。
このNetSessionというプログラムが、Control Planeとやり取りをしながらP2P的な作業を行うようです。 Control Planeが、クライアントPCにインストールされたNetSessionの状況を把握し、統制が取られた状態でP2Pが行われるので、効率的にP2Pデータ配信が行えたり、P2P上でコンテンツ配信を停止するということが可能になるのだろうと思います。
CSDはAkamai流のP4P実現?
P4Pとは、ISPがP2Pに協力することによって、ネットワークに対する負荷を大幅に軽減しようという試みです。 (参考:P4P : P2Pの進化系?)
Akamai CSDは、P4Pという考え方に対するAkamai的な解なのかも知れません。
アメリカのP4P技術ワーキングループに、Akamaiはオブザーバとして参加していたようです。 また、P4Pで中心的な役割を果たしていたYale大学のHaiyoung Xie氏を2008年に雇っているようです(ソース:Akamai Technologies: Getting Serious About P2P - Seeking Alpha、Yale大学関係者による研究発表資料(PPT)でHaiyoung Xie氏に関して「yale now at akamai」と記述)。
世界中の多くのISP内にAkamaiサーバを設置しているAkamaiならではの手法ですが、ISP内部でのみP2P的なコネクションを確立させ、相手がいない場合にはAkamaiサーバがデータをソースから効率的に取得するというハイブリッドなP2Pは仕組み的な美しさがある気がします。
こういう仕組みを思いつく事が出来ても、実際に「運用」として出来てしまうのは、世界でAkamai以外に無い気がします。 「どうやってISPに機器を置いてもらうの?」という点で、皆がスタックしてしまうアイデアや研究は結構多そうです。
それを実験的にではなく、商用サービスとして提供できてしまうところにAkamaiの凄さを感じます。
Aeria Gamesの事例はBitTorrentからの乗り換え?
Akamai CSDを活用した事例紹介としてAeria Gamesが紹介されていましたが、もしかすると、この案件は商用サービスであるBitTorrent DNAからの乗り換えなのでしょうか?
「Aeria Games and IAHGames Select BitTorrent DNA to Accelerate Downloads of Massively Multiplayer Online Games (MMOGs)」2008年9月15日に行われたBitTorrent社からのプレスリリース
だからどうというわけではないのですが、アメリカでのCDS(Content Delivery Service)競争の激しさを感じさせられる事例だと思いました。 どうも見ていると、アメリカでは利用するCDSをコンテンツ事業者が色々と切り替える事例が目立つように思えます。
(続く:次へ)
最近のエントリ
- 「ピアリング戦記」の英訳版EPUBを無料配布します!
- IPv4アドレス移転の売買価格推移および移転組織ランキング100
- 例示用IPv6アドレス 3fff::/20 が新たに追加
- ShowNet 2024のL2L3
- ShowNet 2024 ローカル5G
- ShowNetのローカル5G企画(2022年、2023年)
過去記事