バックボーンの容量が頭打ち

2010/6/16-3

ビデオとインターネットに関する話題では、長距離通信での転送容量が頭打ちになっているのも、不安要因の一つだろうと思われます。 この先、ビデオトラフィックの増加はどこまでいくのか予想が付かない反面、コストに見合うレベルで回線速度を増強する勢いが停滞しそうであることが既に見えてしまっています。

現在、多くのインターネット通信事業者がバックボーンネットワークで利用しているのが10Gbpsの10ギガビットイーサネット(以降、10GbE)です。 10Gbps以上の容量が必要な場所では、10GbEを複数束ねるリンクアグリーゲーション機能を活用して、仮想的に40Gbpsの通信インターフェースとする運用は様々な場所で使われることもあります。

(余談ですが、10GbEは最近低価格化しているので、これからはISPやキャリアの中だけではなく、一般用途でも普及していきそうです。)

100ギガビットイーサネット

10GbEの次として登場しているのが、40GbEと100GbEですが、これらの標準化が開始されたのは2005年頃です。 そして、この40GbEと100GbEの標準化は、2010年6月(今月、もうそろそろ)に完了するとされており、まだ完了していません。 要は5年間10Gbps以上の通信技術が登場してなかった状態です。

さらに、現在のビデオトラフィックの伸びを適切に処理するためには、今月標準化が完了する100GbEよりもさらに数倍容量がある通信方式が必要とされますが、その方式がどのようなものになるのか、今のところ全く見えていません。 そのため、少なくとも数年は、100GbEよりも通信容量が大きい、いわゆる「速い」通信方式が存在しない状態が続きます。 アップグレードしたくても技術的に速度の限界が見えてしまっている状態と言えます。

Tbpsの通信

ここまで読んで「あれ?ギガ単位って遅いんじゃない?テラbpsってニュースあったよね?」と感じる人もいると思いますが、それに関しては多少事情が異なっています。

私が知っている新しいニュースとしては、今年の3月にNTTが発表した以下の実験結果があります。

2010年3月25日 「NTTニュースリリース:光ファイバ1本で世界最大容量69テラビット伝送に成功

しかし、実はこれは「光ファイバ1本」であり、「光1波長」ではありません。 ニュースリリース文は以下のようになっています。

日本電信電話株式会社(以下、NTT 東京都千代田区 代表取締役社長 三浦 惺)は、1本の光ファイバに、1波長171Gb/sの信号を432波長多重させ世界最大となる毎秒69.1テラビット(Tb/s:テラは1兆)の大容量データを240km伝送させることに成功しました(図1)。これまでの光伝送容量の世界記録となっていた32Tb/sを2倍以上更新したもので、将来求められる基幹光ネットワークを構築するための有望な技術として期待されます。  本成果は、2010年3月25日(米国時間)OFC/NFOEC2010にてポストデッドライン論文として発表する予定です。

このニュースリリースを読むと、DWDMを利用して432波長多重させているということで、1波長は171Gbpsです。 世界記録最新の記録を樹立する通信技術でさえ、1波長では100GbEの1.71倍でしかないので、 100GbEの十倍や数十倍の通信速度を持つ規格が数年以内に登場する可能性は非常に低いと言えそうです。

今後、どうなるのだろう?

100GbEよりも数倍「速い」通信方式が登場する可能性があるとしたら、波長多重技術の進歩によって今よりも多くの波長を光ファイバの1芯に詰め込めるようになったり、数十本や数百本の波長を一つの通信インターフェースとして扱う方向に進むのかも知れません。 100GBASE-LR4も25Gbpsを4波長だったりしますし。

だだし、100GbE規格が出来るまでに5年近くかかっていることからもわかるように、相互接続性が確保できるような規格が決まるには、それなりの時間がかかります。 しかも、対応機器が登場してから、それが普及して機器の料金が下がるまでには、さらに時間がかかります。

その一方で、インターネット上でのビデオ利用は急速に拡大しており、ビデオトラフィックも急激に増加しています(参考)。

このような状況もあり、ビデオトラフィック急増に対して、単純に回線速度を上昇するという方法では対応できなくなる可能性もありそうです。 最近、現行行われているP2Pトラフィックに対するDPIを活用した帯域制限から、各ユーザが利用した総トラフィック量を基準としての帯域制限が増加しているというアンケート結果が出ていましたが、ここら辺の「通信速度の限界」が関連してそうです(参考:帯域制御に関する実態調査結果)。

追記

高速イーサネットだけが通信手法というわけではありません。 高速通信のイーサネット以外ではSONET/SDH OC-768(約40Gbps)がバックボーンで利用されていました。(参考:ZDNet Japan: Yahoo! BB基幹ネットワークに大容量40Gbs対応のOC-768/POS」インターフェースカードを導入)

OC-768の次の規格が約160GbsのOC-3072/STM-1024ですが、こちらはコストが高くなるので標準化が行われていないそうです。 以下、Wikipedia (Synchronous optical networking)からです。

The next logical rate of 160 Gb/s OC-3072/STM-1024 has not yet been standardised, due to the cost of high-rate transceivers and the ability to more cheaply multiplex wavelengths at 10 and 40 Gb/s.

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