Interopクラウドサーバネットワークゾーンの構成
Interop ShowNetのNOCブースに「クラウドサーバネットワークゾーン」というエリアがあります。 今回、このクラウドサーバネットワークゾーンに各種サーバ仮想化技術を活用したデモが展示してあります。
ShowNetサーバ仮想化デモ
クラウドサーバネットワークゾーンで、VMwareによる仮想化サーバが運用されています。 VM上で動作している主なサービスとしては、Interop内で利用するDNSキャッシュサーバ、ShowNet用トラブルチケットシステム、その他各種実験用のOSインスタンスなどが挙げられます。
クラウドサーバネットワークゾーンでは、複数のベンダや複数の仕組みを組み合わせた混在環境でのサーバ仮想化を実現しています。 サーバ仮想化の概念図は以下のようになります。
上記図のように、クラウドサーバネットワークゾーンの構成はVMが下位の機器構成に依存せずに仮想化されています。
まず、真ん中のレイヤは物理的なサーバを表しています。 今回のデモでは、Cisco UCS(Unified Computing System)と2UのIBM x3650が物理サーバとして利用されています。 かなり乱暴にCisco UCSを説明すると、Cisco UCSは、シスコシステムズ合同会社によるブレードサーバシステムです。
Cisco UCS
これらの物理サーバに対するストレージとして、今回のデモではiSCSI、FC(Fiber Channel)、FCoE(Fiber Channel over Ethernet)の3種類が同時に利用されています。
この物理サーバとストレージを包括的に使えるようにする仮想化しているのが、VMwareです。 VMwareによって、各VMは、下位のハードウェアの差異を意識せずに使えます。
ライブマイグレーション
このような複数ベンダによる混在環境で、VMが物理サーバ間を移動するライブマイグレーションも可能です。
ライブマイグレーションの便利な点としては、たとえば、ハードウェアの交換を無停止で出来る点や、ハードウェアの負荷が上昇してきたらいくつかのVMだけを別VMへと移動させることで負荷分散が可能という点が挙げられます。
今回の環境においても、仮想マシンのCPUやメモリ負荷が上昇すると、自動的にリソースが空いている物理サーバにマイグレーションするVMwareの機能を利用しています。
それ以外にも、たとえば、特定サーバへのトラフィックが上昇してきたら別ハードウェアへとVMが移動するような環境が出来れば、ロードバランサという概念が今後は変わってしまう可能性もありそうです。 ただし、いまのところ、そこまで出来る製品を私は知りません。
ファイアウォール
これらのVMへのセキュリティを提供しているのが、Cisco ASA 5580とJuniper SRX3600です。 ファイアウォールの下に、仮想化されたVMが設置されたセグメントが作られており、各種サービスが動作しています。
配線を極限まで削減しつつ冗長化
このクラウドサーバネットワークゾーンで面白いのは、圧倒的にケーブル数が少ない点です。 Extreme Summitが4台構成のスタックとして1台に、Cisco Nexus5010が2台構成のスタックとして1台に見えるように、それぞれ設定されていて、物理的に複数台のスイッチが仮想的に1台になっています。 これにより、裏にあるスタック用10Gbpsケーブルによる冗長構成が実現しています。
Cisco ASA 5580とExtreme Summit
さらに、サーバ仮想化とVLANなどによるネットワーク仮想化を組み合わせて、物理ケーブル2本で冗長構成まで実現している部分もあります。 まず、シャーシ型ブレードサーバであるCisco UCSによって複数台サーバの電源管理などをまとめつつ、物理ケーブル接続数も減らせています。
FCoEを処理するBrocade 8000 & Cisco Nexus 5010
FCoEとFCを扱っているのは、Brocade 8000とCisco Nexus 5010です。 FCoEとFCを両方とも同じスイッチに接続して扱えるというのが、これらのスイッチの強みです。 一つのスイッチからFCoEとFC両方への接続をまとめたうえで、Cisco UCSとIBM x3650への接続が行われるため、ストレージと物理サーバ間の配線がシンプルになります。
ネットワーク仮想化との組み合わせ
このように、VMと物理サーバとストレージが仮想化を中心としつつも、階層化された状態になっています。 今回のサーバ構成では、直接的に活用されていませんが、ネットワークも同様に仮想化されています。 (ただし、以下の図ではいくつかのネットワークスライスをピックアップしただけなので、コレ以外にもスライスはあります)
このように、物理的な制約と各種「構成」が切り離されて行く事で、今後は自動化が行いやすい土壌が出来て行くものと思われます。
最後に
今回の展示での面白みは、異機種同士が接続しつつもVM環境としては包括的に仮想化され、ストレージの種類も複数を混ぜて運用出来ているという「Interopらしさ」が挙げられます。
運用の現場では、このような混在環境を作るよりも、シングルベンダで全てをまとめることを好む傾向がありますが、今回のデモのように様々な機器を統括的にまとめつつ、最終的にはVMという形でシームレスに全てを扱っているという状態が作れることがデモとして展示されています。
個人的にはケーブル数の劇的な減少も印象に残りました。 今後、ネットワーク冗長化や耐障害性を考慮しつつ、効率的なサーバ効率化をするための方法論が練られて行く物と思えました。
関連
- Interop Tokyo 2010直前に過去を振り返る座談会(後編)
- 今年のShowNetみどころ
- Interop Tokyo 2010直前に過去を振り返る座談会(前編)
- 2010年Interop ShowNetの心
- 2010年Interop記事一覧
- 2009年Interop記事一覧
最近のエントリ
- 「ピアリング戦記」の英訳版EPUBを無料配布します!
- IPv4アドレス移転の売買価格推移および移転組織ランキング100
- 例示用IPv6アドレス 3fff::/20 が新たに追加
- ShowNet 2024のL2L3
- ShowNet 2024 ローカル5G
- ShowNetのローカル5G企画(2022年、2023年)
過去記事