とある柔道大会におけるUstream中継事例

2010/5/26-1

とある柔道大会におけるUstream中継事例 (PDF)」が先ほど公開されていました。 全日本学生柔道連盟による柔道大会Ustream中継の報告書です。 Ustreamによる柔道大会のネット中継は非常に画期的ですが、報告書が公開されるということも、恐らく画期的なのだろうと思います。

平成22年5月23日(日)に日本武道館で開催され、「平成22年度東京学生柔道優勝大会(男子59回 女子21回)」の試合風景をUstreamを使用してライブ配信をした。
 以前から映像関係には興味を持っていたが、専門の知識がない為、実行に移ることができなかった。そこで5月18日にTwitter上で競技関係者のためのソーシャルメディア勉強会のお誘いを受け、勉強してきた。勉強会で、「情報発信は、実はそんなに難しいことではない」との意見に後押しされ、「新しいことをしよう」という考えに至った。
 いつもは学生連盟委員OBとして後輩の大会運営の指導(まだまだ勉強中ですが)をしているが、今回は執行部の先生方にも相談して運営は補助的立場として、配信を中心に動けることになった。

この報告書のタイトルは、私が去年に書いた全日本剣道連盟による全日本選手権大会Twitter中継記事「とあるイベントにおけるTwitter中継事例」に似ている気がします。 最初に全日本学生柔道連盟の報告書タイトルを見たときに「やるな。。。斬新な演出だ。。。(でも報告書を読まれるであろう柔道の先生方は元ネタ知らないだろうなぁ)」という感想を持ちました。 こういうウィット大好きです。

この大会中継は、柔道関係者の方々が独自にUstream中継をされたものです。 私は、東京学生柔道優勝大会の手伝いに行ってませんし、事前準備も手伝ったわけではありません。 本番前と本番中にUstreamを見たり、Twitterで中継されている方と会話をしたりしただけです。 やはり、情熱がある人が「やる気」さえ出してしまえば、今の世の中は競技中継ができちゃうんですよね。

ちょっとした思いつきで行った、競技主催者のためのソーシャルメディア勉強会ですが、こんなにも早く間接的にネット中継実現への後押しになったのは、個人的に嬉しかったです。 全日本剣道連盟での試みが、間接的に他の団体が活動する糧になったというのは、恐らく良い事だろうと考えています。 やはり、公開可能な範囲内で情報を公開すると、何らかの広がりはあるものですね。

(ソーシャルメディア勉強会に関しては「競技主催者のためのソーシャルメディア勉強会」参照)

テレビがいらなくなる?

柔道中継の報告書の中に、以下のような文章があります。 全日本剣道連盟で行った八段戦のときも、中継映像をご覧になった剣道の先生方は非常に驚いていました。 実際に行われている大会中継映像を先生方に見て頂くのは非常に効果がある組織内啓蒙活動はないのだろうと思います。

今回のライブ放映に関しては、東京学生柔道連盟会長、顧問の先生方に許可を頂き実行できました。
 先生方の反応は大変良く、「テレビは必要ないじゃないか」と冗談まじりなコメントを頂き、逆に色々と注文を頂きました。(汗)

恐らく、ネット中継の凄さを表現しているのであって半分冗談ではあると思いますが、「テレビは必要ないじゃないか」というのは、実は非常にリアルな話だと思います。 各種競技を主催されている組織の方々が、やる気を出してしまうと、急激にネット中継へと視聴者がシフトする可能性を秘めていると思います。

アメリカでGoogle TVの発表もありますし、数年後には、日本でも家庭用TVでも放送局ではない主体が行っているネット中継を見られるようになるのかも知れません。 テレビで放映されることが少ない競技であっても、ちょっと手を伸ばせばお金をかけずに、愛好家へ映像をリアルタイムに届けられる時代になりました。 ここ、1〜2年で、ここら辺の状況は劇的に変わったと個人的には思います。 動画配信に関しての専門知識ゼロで、しかもサーバ代をかけずに誰でもネット中継をできてしまうなんて、5年前だとあり得ません。

ネット中継と責任

しかし、テレビ局ではない主体がネット放映を行うことには、視聴者の期待や、責任という面もあります。

報告書でも懸念事項が述べてあるように、放映することで大会協賛企業を集めやすくなる可能性がある反面、ネット中継を成功させる責任というものも発生します。 しかも、Ustreamという太平洋の向こうにある企業のサービスを無償で利用している状態であるため、絶対に成功させるように万全の準備をすることは、ほぼ不可能です。 Ustream本体が何らかの障害によって落ちていたり、インターネットインフラがなんらかの理由で障害が発生していたらアウトです。

インターネットは信頼性があるインフラとして設計されていないという点と、視聴者の期待は、残念ながら両立しなさそうです。 しかし、時間が経過し、様々な事例や試みが蓄積されることで、ネット中継も洗練されていくのだろうと思います。

一方で、個人的には、ネット中継を試みる人が増えれば増えるほど「テレビの中継技術とか撮影技術とか段取りって実は凄げぇ」と実感する人も増える気もしています。 現時点では、テレビ番組並みの品質を素人がコンテンツとして実現しようとするのって凄く難しいのではないでしょうか。

ネット中継は入り口

最近思うのが、動画というのは、非常に訴求力があってわかりやすいということです。 特に、高齢な方々が意思決定に重要な役割を果たされる体制になっている競技団体にとっては、ある意味最強の情報化ツールなのだろうと思います。

しかし、個人的にはネット中継はゴールではなくスタートだと思っています。 ネット中継は非常に派手で魅力的ではありますが、リアルタイムでの中継は「その瞬間」を共有するだけであり、持続性がありませんし、あまりに刹那的です。

私の考えでは、映像によるネット中継は、情報公開の一手法でしかないと考えています。 言い換えると、映像は事実の一側面でしかないというのが私の考えです。 文字も画像も映像も音声も、全て情報の形態でしかなく、どれをどのタイミングで、どこまで公開するかという範囲を、現状に即してどこまでするかという調整が大事なのだろうと思います。

全てを無制限にオープンにすることは、恐らく害もあるだろうというのが私の考え方なので、最適な公開範囲を探りつつ、可能な限り公開度合いを大きくする必要がありそうです。 そういった意味で、ネット中継というのは、各種競技にとって良い入り口になりそうだと感じています。

ネット中継を経験することで、文字情報の公開範囲も模索しながら拡大していくというのが出来るのではないかなぁと。

最後に

情熱さえあれば、様々な武道やスポーツなどの競技主催者が愛好家のためにネット中継を行える時代になったなぁという実感が強くなった今日この頃です。

p.s. 今後の柔道界でのネット中継事例をヲチするには、@galaxy14judoさんをTwitterでフォローすると良いかも知れません。

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