Googleが1Gbps回線をユーザに提供へ、に関する妄想
早速NANOGで話題になってますが、Googleがアメリカの家庭に1Gbps回線を提供するそうです。 5万〜50万人(公式ブログにpeopleとあるので)に対して一般的な家庭への回線費に近い価格での1Gbps回線提供をするようです。
- BusinessWeek: Google to Build Network in Challenge to AT&T, Verizon (Update3)
- Official Google Blog: Think big with a gig: Our experimental fiber network
- TechCrunch: Google、ブロードバンド事業の実験開始へ - 1GBPSの高速光回線を5万世帯以上に提供
このニュースを見て、色々と妄想したことを書いてみようと思います。
まず、今回の1Gbps回線提供によって「やりたいこと」として、公式ブログ中では以下の3点が述べられています。
Next generation apps: We want to see what developers and users can do with ultra high-speeds, whether it's creating new bandwidth-intensive "killer apps" and services, or other uses we can't yet imagine. New deployment techniques: We'll test new ways to build fiber networks, and to help inform and support deployments elsewhere, we'll share key lessons learned with the world. Openness and choice: We'll operate an "open access" network, giving users the choice of multiple service providers. And consistent with our past advocacy, we'll manage our network in an open, non-discriminatory and transparent way.
1点目は「超高速回線を人々が手に入れると、どのようなアプリケーションが生まれるかを見てみたい」というものですね。 Internet2も10年以上前から同じようなことを言っていた気がするので、高速回線を手にしたユーザがどのような斬新なアプリケーションを産み出すかというのは大きなテーマなのだろうと思います。
2点目は、新しい光ファイバネットワークの構築方法を模索するということですが、これは「リアルネットワークを動かしながら経験を得て、社内で新しいものを産み出す環境を作る」という話だと思いました。 ここら辺は非常にGoogleが上手いなぁと思うと同時に、凄いなぁと思えた点です。 GoogleにはISPをやったり、ラストワンマイルのアクセス回線運用経験が現時点ではないのだろうと思いますが、このような「実験」を行うことでそれらを得てしまおうとすると同時に、この実験を行うことそのものがプロモーションにもなり、一石二鳥どころか一石十鳥ぐらいいけるのではないかとも思えました。
3点目ですが「Openness and choice」ということで、回線利用者が好きな「service provider」を選択できると書いています。 この「serivce provider」の意味するところが良くわからなかったのですが、ISPだとするとこれって某フレッツ?という感じですかね。 まあ、でも、Net Neutrality(ネットワーク中立性)の文脈で語られているので、恐らくは「某ComcastのようにbittorrentやVPNをブロックしたりしないぜ!」と言っているのだろうと思いました。
日本で「実験」が行われる可能性は?
このGoogleの「実験」は日本でも行われるのでしょうか? 私の個人的な感想としては、恐らく同様の「実験」が近いうちに日本で行われる可能性は低いのではないかと推測しています。 これは、アメリカがナローバンドの国だからこそ実行された話であり、日本では同様の「実験」はインパクトも必要性もないのだろうと思います。
Googleは日米間の海底ケーブルを保持しており(参考:Internet Watch: KDDIやGoogleが出資の海底ケーブルが千倉に陸揚げ、2010年春運用)、ネットワーク的な足がかりを整えてはいるようです。
しかし、1Mbpsあたりの単価が世界一低いと言われている日本では(参考:Gizmodo Japan: 国別インターネット接続速度&料金チャート:世界トップは日本)、たとえば、KDDI auひかりホームやUSEN光ギガビットアクセスなど、既に一般家庭用の1Gbps回線はあります。
今回の「実験」に意味があるのは、BusinessWeekの記事にもあるように、Verizon FiOS、AT&T U-Verse、Comcast DOCSIS 3.0が提供しているサービスが最大でも50Mbpsであるという背景が存在している気がしています。 Gizmodo Japanの記事を見てもわかるように、日本と比べるとアメリカはナローバンドの国といえますが、そこに対して切り込むからこそGoogle 1Gbps実験は斬新な取り組むになるのだろうと思います。
一般家庭などへの光ファイバ敷設が「当たり前」ではないアメリカで「実験」を行うことに意味があっても、既に光ファイバ加入者数がADSL加入者数を上回っているぐらい光ファイバが「当たり前」の日本でやっても意味がなさそうです。 他業者が実現するのが難しいところにGoogleが切り込んでくれるから意味があるのであって、既に世界一の費用対効果を実現してしまった日本国内では、近いうちにやらなそうだというのが私の感想です。
行き着く先はNGN?
でも、今回のGoogleによる光ファイバ回線実験のニュースを見て、色々複雑な妄想が浮かんできました。 たとえば、以下のような妄想が脳裏をよぎりました。
- IP電話サービスを回線とセットで提供したりするのかな?
- テレビ映像再配信を行ってCATVサービスを回線とセットで提供したりするのかな?そのための専用セットトップボックスを用意するのかな?
- セットトップボックスを配布するなら、当然VoDはYouTube使うよね?
- YouTubeをテレビで見られるようにするセットトップボックスを配るなら、当然YouTubeの有料オプションを回線費と一緒に徴収できるようにするよね?
- 回線を提供し始めたらトリプルプレイ的なところもきっとやるだろうなぁ
- IP電話をSIPで制御するとして、IP電話以外もSIPで制御とか言い始めたら何処かで聞いた話っぽくなりそうだなぁ
- これって行き着く先はGoogleによるNGNじゃない?
- これが本気で軌道に乗ると、電話もテレビ配信も全部基盤となるインフラを握る企業が登場するのかな?
日本ではNTTがNGNを推進し、アメリカではGoogleが日本のNTTになりたそうに見えるという感じですかね。 ISPが登場し始めた頃は「これからは自前でインフラを持たない時代だ!」という話が色々なところで言われてましたが、最近は「やっぱりインフラ持ってるところが最強だよね」という話になりつつある気がする今日この頃です。
(p.s. 「自前でインフラ持つのは時代遅れだよね!」って、違うものを連想させるかもですね。あ、それはまたそれで。)
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