おいしいきのこ 毒きのこ
「おいしいきのこ 毒きのこ - 見分け方がよくわかる!」という本がTwitter上で宣伝されていたのを見て、おもわず購入してしまいました。 キノコ大好きです。
この本の魅力は「食べる」ことを重点に置いていることです。 食べられるキノコに関しては、それぞれ美味しい食べ方も紹介されてますし、本の最後に料理の方法もまとめて解説されています。
キノコを食べるというコンテキストで重要なのが毒キノコの存在です。 「食べられるキノコ」だけを扱うと危険なので、食べられるキノコと同時に毒キノコも紹介してあります。 各種類毎に間違えやすい似ている毒キノコや、見分け方が丁寧に記述されています。 毒キノコの解説でも、似ている食べられるキノコが記載されているページ番号が書かれており、何となくHTMLのハイパーリンク的な思想が書籍内にあるのも好感が持てます。
あと、この本で非常に良いと思ったのが、写真がやたらと奇麗なことです。 結構大きく奇麗な写真ばかりです。 さらに、自生している写真だけではなく、スタジオ撮影された全体写真や切断面解説写真もあります。 スタジオ撮影の写真によって、普段であれば土に隠れている一番下のツボ部分の形状も良くわかります。
いくつかキノコの本は購入してますが、私が見た他の書籍は図鑑的に数を揃えることに重点を置いているように思えます。 そのような良くあるキノコ本とは違い、スタジオ撮影された写真や調理されたキノコ料理写真の美しさが「主婦の友社が作った書籍だからかなぁ」という感じです。
死に至る
この本の前半で食べられるキノコを紹介されていますが、後半は毒キノコについてです。 「死に至る」という表現が所々にちりばめられていて、読んでいて結構ビビります。
中でも強烈なのがp.126ドクツルタケ(毒鶴茸,Amanita virosa)とp.128フクロツルタケ(袋鶴茸,Amanita volvata)で、1本食べると死に至るそうです。
ドクツルタケの中毒症状例は以下のように記述されています。
タマゴタケモドキと同様の中毒を起こす。 食後数時間後に激しい胃腸系の中毒症状があらわれ、いったん回復、その後4日から1週間ほどで肝臓肥大、黄疸、胃腸からの出血など内蔵の細胞が破壊され死に至る。
「このきのこがきちんと見分けられなければ、白いきのこは食べてはいけない」とのことでした。
なお、p.182〜p.185で毒きのこに関して解説してありますが、「致命的となるきのこ毒」として、以下のように記述されています。
テングタケ属などがもつアマトキシン類は、タンパク質の合成を阻害し、細胞組織が再生されなくなるように作用します。 このため、きのこを食べて消化し吸収してしまうと、ゆっくりと、しかし確実に肝臓や腎臓組織が破壊され、組織がスポンジ状となり、致死的な結果となります。
かなり強烈です。
日本国内にある麻薬キノコ
p.136ワライタケ(笑茸,Panaeolus papilionaceus)とp.138ヒカゲシビレタケ(日陰痺茸,Pilocybe argentipes)の解説は以下のような文で開始されています。
麻薬成分シロシビン、シロシンを含むため、2002年に法令で採集、所持、販売が禁止されたきのこ。 興味本位で採集してはならず、見つけた場合、最寄りの保健所や警察署に届け出なければならない。
厚生労働省のサイトを見ても、以下のように書かれています。
「厚生労働省 : 自然毒のリスクプロファイル : キノコ : ヒカゲシビレタケ」
シロシビンなど催幻覚成分を含むマジックマッシュルームの一種で、麻薬及び向精神薬取締法で麻薬原料植物及び麻薬として規制されている。使用することも所持することも違法である。
具体的な政令は以下のようになっています。 キノコの具体的な種類ではなく、成分で規制されているようです。
「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」
(麻薬原料植物)
第二条 法別表第二第四号の規定に基づき、次に掲げる植物を麻薬原料植物に指定する。
一 三―〔(二―ジメチルアミノ)エチル〕―インドール―四―イルリン酸エステル(別名サイロシビン)及びその塩類を含有するきのこ類(厚生労働大臣が指定するものを除く。)
二 三―〔二―(ジメチルアミノ)エチル〕―インドール―四―オール(別名サイロシン)及びその塩類を含有するきのこ類(厚生労働大臣が指定するものを除く。)
この政令を見ると「麻薬原料植物」となっているのが微妙な感じです。 きっと法律用語的には菌類も植物に分類されるのかもと漠然と思いましたが、そこらへんは良くわかりません。
余談ですが、「厚生労働省 : 自然毒のリスクプロファイル」は写真も掲載されていて面白いですね。 こういうのを見ると、気がつかないだけで自然毒は結構身近な存在だと再認識させられます。
素手で触ると危ないキノコ
p.156カエンタケ(火焔茸,Podastroma cornu-damae)を紹介している文章の始まり方も強烈です。
冬虫夏草やベニナギナタタケ、サルノコシカケの仲間と間違って採集されることがあるが、皮膚刺激性の成分があり、素手で触ると危険。 死亡例もある猛毒菌で、細菌毒成分が明らかにされた。
さらに、その中毒症状例の項目では、以下のように記述されています。
食後30分で悪寒、腹痛、頭痛、しびれ、嘔吐、下痢などの胃腸系と神経系の中毒症状があらわれる。 その後、各臓器不全、脳障害など全身に症状があらわれて死に至る。 皮膚や粘膜のびらん、脱毛など体表面にも症状が出る。 毒性分は刺激性が強く、汁に触れただけでも皮膚障害が出る。
怖いですね。。。
ついでなので、この前撮影したキノコ写真
ついでなので、最近、私が撮影したキノコ写真です。
本を見ながら調べてみたのですが、p.81のカンゾウタケ(肝臓茸)なのではないかと推測されます。
他のキノコは、何であるか良くわかりませんでした。
最後に
ということで、きのこを自分で採集して食べるのはやめておこうというのが、この本を読んだ感想です。 自分の素人知識をベースにしながら命をかけたロシアンルーレットをやる気にはなれません。。。
写真を撮影して愛でる程度に停めようかと思います。
このブログでのキノコ関連記事一覧
なお、過去に撮影したSFCに自生しているキノコのひとつ(2008年9月:きのこスゲエ!)は、ひどい場合には呼吸障害や昏睡となる結構強い毒がある種類らしいこともわかりました(p.120 テングダケダマシ,Amanita sychnopyramis f. subannulata)。 非常に似ているテングダケとの見分け方として「傘のイボが角錐状となることで見分ける p.120」とあります。 ブログに頂いたコメントは、「テングタケダマシかも。であれば残念ながら食べられないようです。」というものですが、その通りでした。
おまけ
JANOG26の発表資料作成のために、きのこる先生を作って撮影しました。
この画像を好きに使って頂いて良いです。 プレゼン資料やアイコン等で使って下さい。
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