昨日の伝書鳩ネタの補足

2009/9/11-1

昨日、「伝書鳩はインターネットより早い?」という記事を書いたのですが、重要な箇所を見落としていたので追記です。

ITmediaの記事(ロイター経由)には以下のような一文が含まれています。

ダウンロード時間を含めると、データ転送にかかった時間は合計で2時間6分57秒。Telkomの回線を使った場合、同じ時間でデータの4%しか送れなかった。

「同じ時間でデータの4%しか送れなかった」というのは重要な情報です。 これからわかる大体のスループットは以下の通りです。 7617は2時間6分57秒を秒で表現したものです。

4GB * 8 * 0.04 / 7617 = 約176kbpsです。

伝書鳩プロジェクトサイトで公開されているWhite Paperを見ると、 実際に一度やってみた結果、4GBを送るのに2日と2時間6分22秒かかったそうです。

Initial tests indicate that it could take 2 days 2 hours 6 minutes and 22 seconds for a 4096Mb file using the existing infrastructure that we have, whereas loading 4Gb of data onto an external drive, andsending it via the pigeon, would take about an hour and a half, with the transportation taking 45 minutes of that.

2日と2時間6分22秒は173182秒で、そこから逆算できるスループットで言うと193kbpsなので、伝書鳩を飛ばした時との違いは誤差の範囲内と言えるのかも知れません。

TelkomのADSLサービス

TelkomはどのようなADSLサービスを提供しているのでしょうか?

Telkom : ADSL Products : At Office

  • Fast DSL up to 384kbps
  • Faster DSL up to 512kbps
  • Fastest DSL up to 4096kbps

今回の話題がダウンロードではなくアップロードであることを考えると、何となく実測値に合っている感じがします。

そもそもADSLって何だっけ?

ADSLはAsymmetric Digital Subscriber Lineの略ですが、「Asymmetric」というのは上りと下りの速度が非対称であることを示しています。 要は、今回の用途のようにアップロードに弱いという特徴がある通信技術です。

Wikipedia:ADSL」には以下のように書いてあります。

ADSLの特徴として、一方の通信帯域を削ることで、もう一方により大きな通信帯域を割り当てている(非対称)。通常は下り(ダウンリンク)の速度が上り(アップリンク)の速度よりも高速に設定されている。これは、一般家庭などでのインターネット利用ではWebアクセスなどの用途が主となるため、ダウンリンクデータの容量がアップリンクデータに比べてはるかに多く、ダウンリンクを優先することで総合的にデータ通信速度を高速化するためである。

その他、ADSLには様々な速度低下要因があります。 まず、電話局に設置された端末装置から利用場所までの距離が遠ければ遠いほど、データの損失が大きくなり通信速度が低下します。 例えば、wikipediaによると「クワドラブルスペクトラム方式の場合は局内端末装置から1kmで理論値の半分にまで速度が落ちる。」とあります。

また、送電線などから発生する電磁波や一部の無線通信によって発生するノイズによっても速度低下は発生します。 よっぽど電話局に近く無ければ論理値通りのスループットは、まず望めないのがADSLだと思われます。

伝書鳩プロジェクトの人たちが怒っている事

伝書鳩プロジェクトのThe Unlimited社が怒っているのはスループットではなく、主に安定性ではないでしょうか?

White Paperには以下のように書かれています。 まず、国内様々な箇所でデータ送受信を行っているそうです。

Like many businesses, we are also reliant on the provision of ADSL through our Telkom provider, and much of the data that we are sending runs across the beautiful province of KZN. With operations stretching from Empangeni in the North to Port Shepstone in the South, from the beautiful eastern shores of Durban and extending as far inland as Estcourt.

次に本題に入り始めます。 曰く「これらの箇所を不安定なバックボーンネットワーク上で運用するのは困難だ」そうです。

Co‐ordinating all of these operations and ensuring that we have one version of the truth, is difficult enough without the challenges of an unstable communications backbone.

「ここ3ヶ月ぐらい色々試行錯誤した。例えば回線が不安定過ぎてVPNが継続できないからsshを代わりに使う事にした」という感じの事を言ってますね。

Over the last 3 months, there have been a number of challenges, including VPN’s that would not stay connected because of instability on the lines, which forced a reconfiguration to use SSH instead.

曰く「ADSLはヨーヨーのようにアップとダウンを繰り返している。 特にひどいのがチャッツワースで、2009年6月〜7月の回線アップタイムは10%、ここ3週間の接続性は50%」だそうです。

In certain areas the ADSL lines were up and down like a yoyo. One which has been particularly challenging has been Chatsworth, where for the two weeks over the end of June 2009, beginning July 2009 we experienced a 10% up time. Over the last 3 weeks, August 2009, Chatsworth has been running at 50%.

「こんなんでITビジネスできるかぁぁぁ!」(意訳)

This has put incredible pressure on the business and the IT team in particular.

発展途上国とインターネット

発展途上国におけるインタネット接続性は大きな課題の一つであり、google scholarなどで論文を探してみると新しい発見があるかもしれないと思います。 個人的にはIPv4アドレス枯渇が迫りつつある中で、発展途上国が現在持っているIPv4アドレスの数などを見ると「大丈夫かなぁ。。。」と思う事があります。 LSN(Large Scale NAT)やIPv6導入のための必要経費発生なども今後ありそうです。

例えば、AfriNICが持ってるIPv4アドレスって凄く少ないんですよね。 (参考 : IPv4アドレス枯渇が視覚的にわかる画像)。

でも、例えばワールドカップをキッカケとして南アフリカ共和国では一気にIT化が進んだりするのでしょうか?

最後に

ITmedia:ADSL総括〜これまでの歴史を振り返る(2003年記事 特集20M超ADSLの真実)」あたりを見ると、速度だけに関しては10年ぐらい前の日本のインターネット状況を考えてみると良いのかもと思いました。 (発展途上国では停電など電力に関しての問題もある地域はあると思いますが...)

あと、最後に余談ですが、インターネットが万能のように錯覚してしまうこともあるとは思いますが、伝書鳩やバイク便や宅配便は今でも偉大ですよ!

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