「インターネットの形」を探るための基礎データ集
「インターネット全体の形」は誰も知りません。 どこがどのように繋がっていて、全ての組織を網羅した「網の地図」はどんな形になるのか?、一番遠い所同士の「直径」はどれぐらいになるんだろうか?、本当はどれぐらいの組織が繋がっているのか?、どれぐらいのデータが流れているのだろうか?などの疑問に正確に回答できる人は、恐らく一人もいません。
しかし、それらを推測するような研究を人々が行えるように基礎データを公開している団体がいくつかあります。 今回は、「インターネットの形」を探るための基礎データとなり得る情報を公開しているサイトを紹介したいと思います。
routeviews
アメリカオレゴン大学が公開しているBGP(Border Gateway Protocol)経路情報です。 フルルートデータが公開されています。 AS(Autonomous System,自律システム) Pathなどのデータを組み合わせるとインターネット地図を作る事も可能です。
University of Oregon Route Views Project
RIPE-RIS
Zebraの "dump bgp all ..." コマンドの出力結果を5分毎にアーカイブして公開しています。 パキスタンから流れた経路が原因でYouTubeが止まった時間帯のデータを見ると面白い物が発見できるかも知れません。(参考 : YouTubeがダウン--原因はパキスタンでのアクセス遮断か)
bgpmon
リアルタイムにBGP経路情報を提供しています。 他のサービスのようなコマンドラインダンプではなく、データをXML形式で提供しているという特徴もあります。
UCLA cyclops
登録すると設定した内容に関連するBGP経路の変更に関するアラートを送ってくれます。 Web UIを使って指定したASに接続しているASを調べる事も可能です。 試しに、「Connectivity」のところで「ASN or AS name」部分に知っているISPのAS番号を入れてみて下さい。 AS番号は、他のサービスで調べられます.
Cyclops alpha - open eye to your net
GLIF
ラムダネットワーキングをプロモートする目的で運営が行われているGlobal Lambda Integrated FacilityのWebサイトです。
GLIF : About GLIFによると、GLIFは光多重技術やその使い方などにフォーカスした団体ですね。
What is Lambda Networking and a LambdaGrid?
Lambda networking is essentially about using different 'colours' or wavelengths of (laser) light in fibres for separate connections. Each wavelength is called a 'lambda'. In lambda networking, the goal is to achieve ultimate Quality of Service by giving applications and user communities their own sets of lambdas on a shared fibre infrastructure, thus isolating the different communities from each other.
GLIFが公開している光ファイバ地図画像が非常に面白いです。 教育機関や研究目的の光ファイバ回線等は地図上に示されていませんが、大陸間に敷設された様々な光ファイバが可視化してあります。 まずは、どの大陸とどの大陸の間に回線が多いか少ないかなどを見て行くと面白いと思います。
iplane
アメリカ、ワシントン大学が提供しているtracerouteデータです。 世界中の様々な場所にひたすらtracerouteを行いまくって、結果を公開しています。 毎日2GB分のtracerouteデータって一体。。。
AS番号とWHOISデータ対応表
AS番号、名前、ハンドル、位置、組織名などが見やすく一覧になっているデータです。 WHOISをいちいち調べる手間が省けて非常に良いです。 2500番周辺を見ると知っている名前が出てくると思います。
マルチキャスト技術をベースにした企業であるMulticast Technologies社が公開しているようです。
Multicast Technologies : asn_expand.txt
Internet2 Networkデータ
Internet2(インターネット2)でのトラフィック情報(1分置きのグラフ)や、ISISによるIGP情報や、BGP情報を公開しています。 なお、Internet2は新しいインターネットというよりも、インターネット技術等を研究するためにアメリカの大学が集まったコンソーシアムという感じだと思うので、ご注意下さい。
Internet2 Network NOC - Research Data
JPIXでのトラフィック
JPIX(日本)でのトラフィック情報です。 Winny事件での逮捕者が出たタイミング毎にトラフィックがガクンと減っているように見えるのは気のせいでしょうか?
JPNIC AS番号表
JPNICが管理するAS番号リストです。 JPNICに対して返却済みの番号も記述されています。
最後に
これらのデータを使ったからと言って、「インターネットの本当の形」が正確にわかるわけではありません。 しかし、このようなデータを組み合わせる事によって面白い物が可視化される事もあります。 今後、このようなデータを使って「インターネットの形」を探求した論文をいくつか紹介しようと考えています。
情報 via id:osora
最近のエントリ
- 「ピアリング戦記」の英訳版EPUBを無料配布します!
- IPv4アドレス移転の売買価格推移および移転組織ランキング100
- 例示用IPv6アドレス 3fff::/20 が新たに追加
- ShowNet 2024のL2L3
- ShowNet 2024 ローカル5G
- ShowNetのローカル5G企画(2022年、2023年)
過去記事