とあるイベントにおけるTwitter中継事例

2009/11/4-1

昨日、某イベント(参考:全日本剣道連盟Twitterを開始)の中継スタッフ(i.e.お手伝い係)として撮影係をしていました。 中継はTwitterを中心とした形で行ったのですが、Web、ブログ、Twitter、YouTube、twitpicを横断した複合的な中継という形になりました。

全日本剣道連盟の広報職員以外で、今回オンライン情報配信のために活動をしていたのは5人でした。 私は、そのうちのハイスピードカメラ動画(スローモーション)撮影及び、撮影した映像編集係でした。 会場で「全剣連」と書かれた腕章をしながら報道関係者の方々の横でひたすら動画撮影を行っていました。

Twitter部隊の様子

昨日、その時の様子を写真で撮影してTweetされていました。 twitpic係の方が撮影をしていたので映っているのは4人です。

http://twitpic.com/o37ir - 5人体制でTwitter、公式ブログ、Youtubeチャンネルを更新中。#kendo
http://twitter.com/aj_kendo_f/status/5382535617

ネット中継スタッフは、特設サイトの製作をお願いした(株) ワン・トゥー・テン・デザインさんからのお二人、全剣連事務局の方が一人、情報小委員会委員の阿部君と私の計5人です。

twitpic更新は@k5n_act3さん(もう一人のかたは個人アカウントで昨日の活動を多く呟いていたわけではないのでここでの紹介は割愛)、Twitter書き込みは@Akihito_ABE、ハイスピードカメラ撮影と編集が私、YouTubeへの掲載と試合情報収集等が事務局の方でした。

なお、大会中に会場内の電光掲示板係の方々を見ながら「パソコンを持った二人組がTwitterしてるのかな?」と書いてみたり、その二人に手を振っていた方が観客席にいらしたようですが、残念ながら私達は外部からは見えない部屋の中にいました。

情報がTwitterに集約されて会場から出て行く

写真と動画の撮影係二人と、全剣連職員の方が激しく出入りする一方で、twitter係とブログ係はほとんど張り付き状態で色々と書いていました。 昼食は、全員が合間に弁当を室内で食べる感じでした。 私は、頂いた弁当に入っていた最後のおにぎりを食べたのは、決勝戦が終わった後でした。

準決勝と決勝までは2会場あったので、試合の途中経過などを含めるとひっきりなしに情報が入って来ていました。 Twitter係は確定している情報の範囲内で、あらかじめメモ帳に下書きを準備していて、確定情報が入り次第、編集してTwitterにupしていました。 そこへ、さらにtwitpicへの画像掲載通知や、YouTubeへの動画up終了通知などが届いて、それらをTweetするという流れでした。

このように、めまぐるしく登場する「情報」をTwitterが一カ所に集中させてリアルタイムに出しているようなイメージでした。 言い換えると、情報がTwitter係へと集約されて外へ出て行ってる感じでした。 集約された情報は、Twitterを経由してユーザへと伝わり、ユーザ側でまた多様に拡張されていくのだと思います。

もちろん、Twitterに集約される必要性は必ずしもありません。 公式ブログの更新だけを見ている人もいましたし、Twitterの存在を知らずに、公式YouTubeチャネルだけを見ていたユーザも多かったと思います。 ただ、Twitter経由で見ていた人にとっては、きっとリアルタイムマルチメディア中継のように感じたことだろうと思います。 140文字だけではない、写真や動画も駆使した剣道のTwitter中継です。

コミュニケーションに重点を置かなくても良い

良く「Twitterはコミュニケーションに重点を置かないと駄目だ」という意見を目にしますが、今回の @aj_kendo_f では、いわゆる「ネットらしいコミュニケーション」は、ほぼゼロでした。

今回、重要だったのは、恐らく「速報を得る手段が乏しい現状」に対して、何らかの行動を起こす事だったのではないかと思います。 全日本剣道選手権大会は、毎年NHKで放映されますが、放映されるのは準々決勝、準決勝と決勝のみです。 四回戦からの放映となり、一、二、三回戦は放映されません。 また、従来であれば個々の詳細な勝敗を知るには、全日本剣道連盟のWebで公表されるのを待つか、剣道時代か剣道日本か剣窓を見るのを待つという形でした。 その他は、Webを介さない現実世界での「クチコミ」です。

aj_kendo_f の現時点でのフォロワー数は278となっており、Twitter経由で多くの人々に情報を届けられたかどうかは不明です。 ただ、剣道のようなある意味非常に特殊なカテゴリでは、爆発的なbuzzよりも恐らく今後の継続的な運用が重要なのではないかと思われます(といっても次の中継等の予定が決まっているわけではないので、当分の間は休眠状態になるかも知れませんが。。。)。

例えば、全剣連YouTubeチャンネルでの昨日大会ビデオは数千回再生されているようです。 http://www.youtube.com/ZennipponKendoRenmei

YouTubeのチャンネルも開始当初は、急激な視聴を集めたというわけではありませんでしたが、海外を含めて徐々に業界内で認知されてきたと思われます。 Twitterに関しても、一部の愛好家の間で時間をかけて認知してもらえれば良いのかも知れません。

さらに、全日本剣道連盟のTwitterアカウントでコミュニケーション主体の運営はスタッフ的に非常に難しいですし、多くの剣道ユーザがそれを求めているとも思えません。 剣道の世界にどっぷりな人にとっては、全剣連が妙にフレンドリーだと逆に引くのではないかとさえ思えます。

「じゃあ、RSSでもいいじゃん!」という意見もありそうですが、RSSではなくTwitterが良いという理由もあります。 まずは、アテンションの粒度の問題です。 Twitterでは、複数の発信者が五月雨式に短い発言を行うので、個々の投稿に対するアテンション粒度は細かく、結果として全体的に継続的なアテンションを維持しやすくなっています。 さらに、Twitterでは全剣連以外のユーザとの「横の繋がり」があります。 その「横の繋がり」が新しい「味」を出します。

一方で、ブログなどによるRSSでは、更新頻度がTwitterほど短くないため、速報性と短い時間内でのアテンションの継続性が乏しくなります。 また、RSSは自前サーバに設置することが多いため、Twitterほどの粒度で読者が更新確認をしにくるとサーバがスケールしないという問題もあります。

といいつつ、そもそも論で、全剣連のWebサイトにRSSが無いという話もあります。。。。 そうなんですよね。。。。

Twitterの注意点

今回やってみてわかったのですが、にわか時込みのアカウントで本番を迎えると、スパムリストに入る可能性があるかも知れません。

昨日、@af_kendo_fのTweetは、#kendoハッシュタグで検索しても表示されませんでした。 恐らくTwitter本体からスパム認定されたのではないかと思います。

全日本剣道連盟の本物アカウントであると報告してフィルタリストから外してもらうのはどうすればいいのでしょうか? 全日本剣道連盟からどこかに対して「本物ですよ」と電話とかメールをしてもらえばいいんですかね?

撮影した動画

昨日私が撮影した動画で、YouTubeに掲載されたものは14本でした。

今回私が最も面白い動画が撮れたと思ったのが、1回戦の井本選手 対 小村選手の試合です。 上段の井本選手が小村選手の小手を打つのですが、その次の面を打ちに行く過程で弦(ツル)が相手の竹刀と擦れて摩擦で切れたと思われます。 その弦がスローモーションで揺れるのが非常に印象的であると同時に、最初の小手も次の面も両方とも思いっきり当たっているのも凄いです。


全日本剣道選手権大会1回戦 井本x小村 井本選手の面

次に、3回戦での内村選手の小手も個人的に好きな動画です。 完璧なタイミングで出鼻を打っていて、凄いです。

この小手は、仕切り直しの直後だったので撮影開始のタイミングが微妙に遅くなってしまっています。 あまりにとっさの出来事であったため、隣にいたプロのカメラマンの方もカメラを構える事すらできていませんでした。 小手が決まった瞬間の撮影陣から出たため息が印象的でした。


第57回全日本剣道選手権大会3回戦 染谷x内村 内村選手の小手

以下の撮影動画一覧です。

もっと撮影数を増やすには

2会場あることや、撮影後の編集を行う時間が必要であることなどから、これぐらいの数が限界でした。 カメラのバッテリーもかなりギリギリで、編集中に平行して充電を行うという作業の連続でした。

あともう一人動画編集係がいると、掲載本数が増やせるかも知れません。 空のメモリカードを撮影係に渡しつつ、撮影直後のメモリカードを受け取って編集作業を行うという流れが作れれば効率的だと思いました。 カメラのバッテリーももう一つ追加して、メモリカード交換時にバッテリーも交換すれば良さそうです。

ハイスピードカメラを使った経緯

今回はひたすらハイスピードカメラでスローモーション映像を撮影していました。

このハイスピードカメラはCasioさんからお借りしたCasio EXLIM EX-F1です。 今年4月に「剣道八段戦 取材記」という記事を書いたのですが、その記事を読まれたCasio社員の方からご連絡を頂き、無償で貸して頂ける事になりました。 一度はお断りしたのですが、オフでお会いしたときにもう一度オファーを頂き、興味を持ちました。 Casioさんは宣伝の意図があり、私は面白い動画を撮影する機材をお借りしたいという思惑が一致した形だと思います。

お借りして使ってみると、確かに剣道とハイスピードカメラは非常にマッチしており、今回は色々と面白い動画が撮影出来たと思います。 今回のネット中継班の中でも、ハイスピードカメラを使って撮影された動画は好評だったようで、twitpicにカメラの写真を掲載されたりしていました。

http://twitpic.com/o3nzi - ハイスピード撮影を可能にした今回の秘密兵器。CASIOのEX-F1。 #kendo
http://twitter.com/aj_kendo_f/status/5385434387

撮り逃しの無いカメラ

今回、ハイスピードカメラで撮影していてわかったのですが、ハイスピードカメラでの動画撮影は、通常カメラで決定的瞬間を狙うのと比べると恐らく簡単です。 カメラを剣士に向けていれば、審判が目の前に居るときや、選手二人が垂直に並んでしまった時以外は、決定的瞬間を撮影できることが多いです。

そう思うと、写真もハイスピードカメラのフレームの一つを取り出して利用出来れば非常に楽になると思います。 現状では、プロのカメラマンさんが選手の打突タイミングを読みながらシャッターを先押ししています。 指の動きや、シャッターのタイムラグを考えると、そうしないと当たる瞬間の写真が撮影できません。 動画撮影を行いつつ、特定のフレームを取り出しやすい編集ソフトがあれば、剣道の写真撮影は飛躍的に楽になると思いました。

このような用途は、剣道だけではなく、他にもあると思います。 例えば、記者会見で決定的な瞬間を狙ってシャッターを切りまくるような情景や、運動会での子供などが思い浮かびます。

恐らく、これぐらいは誰でも思い浮かぶ事で、単純に解像度や書き込み速度などの問題で実現出来ていないのだろうと予測していますが、数年後には「写真の撮影方法そのもの」が今と変化しているのかも知れないと感じました。 「はい、チーズ」と言いながら、大量に「画像としての写真」を取るのではなく、「一つの動画を画像のグループとして撮って、後から好きなフレームを選ぶ」という撮影方法へと10年後ぐらいには変わるかもと、妄想しました。

ハイスピードはパンドラの箱か?

今回、ハイスピードカメラを使ってみて、自分がいかに「見ていないか」が良くわかりました。 リアルで見ていて「凄い技だ!」と思っていた打突が後でスローモーションで見ると全く違ったイメージに映ることもありましたし、逆にちょっとした瞬間に凄い攻防があることもわかりました。

例えば、一瞬の間に入っている攻めやフェイントがスローで見ると多彩に見えます。 いかに自分が試合中の攻防を見逃しているかが良くわかりました。 そして、スローで見た時の人間の体勢というのは、一連の動作として見ている場合の体勢とはかけはなれたイメージになることもあるように思えます。

そう思うと、ハイスピードカメラの導入は、実は剣道の世界においてパンドラの箱を開ける行為なのかも知れないと思いました。 竹刀の剣先の実際の動きを通常ビデオの30fpsでは追えませんし、ましてや目でも追いきれていない人がほとんどだと思うと「そこに存在していたけど知らなかった世界」があるのかも知れません。

逆に、スローモーション映像の「わかりやすさ」が良い方向に働いてくれるかも知れません。 今までの剣道は、剣道をやっていない人にとっては、実際に会場で見ても「何をやっているのか見えない」状態でした。 竹刀の動きがどうなっているのか、剣道非経験者にも良く見える手段としてスローモーション映像は効果的だと思いました。

最後に

今回私はハイスピードカメラを使っていましたが、YouTubeでの再生回数を見ると全体を撮影した映像の方が需要は高いような気もします。 全体的な通常映像とスローモーションを適切に提供しつつ、ユーザ側が好みの映像を選べるようなバリエーションを提供する事が大事だと思いました。

最も再生されたのは以下の決勝戦動画です。


第57回全日本剣道選手権大会決勝 内村x高橋 ダイジェスト

なお、今回の全日本選手権でのネット中継手伝いでは、4月の八段戦での取材経験が非常に活きました。 次回は、どこでどのような活動が出来るのかは、現状ではまだ不明ですが、何か出来たら面白いと思う今日この頃でした。

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おまけ

副産物として、YouTubeの国内スポーツカテゴリが剣道だらけになりました(笑)。

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