テレビの非passive化とインターネットのpassive化

2008/7/11-1

最近は受動的(passive)なメディアであったテレビが能動的に変化して行き、逆に今まで能動的だったインターネットが受動的メディアへと変貌しようとしているのではないかと、ふと思いました。

HDDレコーダによるテレビの非passive化

今の日本における最大のpassiveなメディアは恐らくテレビだと思われます。 テレビに流れるコンテンツはテレビ局によって決定されます。 言い換えると、世の中の多くのコンテキストを作り出すのはテレビです。

しかし、HDDレコーダのようなPVR(Portable Video Recorder)が登場したり、YouTubeに勝手にアップロードされる動画を皆で見たりするような形態が増えると、今までは絶対だったテレビによるコンテキスト生成に陰りが見え始めます。

例えば、HDDレコーダに大量に色々入れるのは各ユーザです。 録画したものから、どれを見るか選ぶのもユーザです。

ここまでは、まだテレビによるコンテキスト作りは生きています。 選ばせるメニュー(番組表)がテレビによって生成されているからです。

ただし、意図しないものを意図せずに視聴者に注入するという機能は多少弱まるかも知れません。 録画したものが大量にあると、「とりあえず暇だから何でもいいから見る」という行為が減るからです。 過去に撮り貯めて見ていないものが列挙してあると、「とりあえず」でテレビをつけっぱなしにすることが減ると予想されます。

また、「キーワードマッチで何でもいいから録画」のようなものの出現もコンテキスト生成能力を弱めると思われます。 そこでは「ユーザに選ばせる」という行為が減っており、偶然選ばれたものを見る形になるためです。

さらに、HDDの容量を気にせずに「全番組録画」というようなHDDレコーダを利用して、インターネットで「楽しい」と話題になったものだけを後で見るという形態の登場によって、さらに「テレビのコンテキスト生成力」は弱まっていってしまうのではないかと思われます。

そして、今後もテレビの非passive化はどんどん加速していくのではないかと勝手に妄想してみました。

インターネット(Web)のpassive化

インターネットにある情報というものは、主に能動的なものです。 ユーザは自分の興味があるものを、自分で探して発見できたものを見ます。 これは、コンテンツの量があまりに多いためです。

しかし、最近は徐々にインターネット上に存在するユーザ(視聴者)のpassive化が進行している気がします。

多くのユーザが同じ「場所」を見るようになっていき、その「場所」がコンテキストを生成していきます。 各ユーザはある程度は能動的ですが、コンテキストが降って来るという意味では受動的になってきています。

例えば、2chで大きく話題になった情報がドンドン伝播していき各種ブログやニュースサイトで取り上げられるようになるのも、一種のpassive化ではないかと思われます。 IT系の人にとっては、はてなのブックマークも同様かも知れません。 digg、slashdot、del.icio.us、その他もコンテキスト生成所ですね。

要は、大規模に人が集まる場所が出来上がってきたという事だと思うのですが、大規模になればなるだけそこで発生したコンテキストを元に語る人が増えて、さらに集中化が加速していくのだろうと思います。

「インターネットで話題に」

コンテキスト生成能力を持ち始めたインターネットは、「話題」を作るようになってきます。

そして、その「話題」にはテレビ番組も含まれるようになってきたと思われます。 テレビがコンテキストを作ってインターネットに影響を与えるという形が逆転する番組も出てきている気がします。 例えば「インターネットで話題になったので見る」という番組が出現しています。

こうなってくると、何がどうpassiveなのかわからなくなってきます。

しかし、いくらインターネットがpassive化していっているとはいえ、今でもテレビはインターネットよりずっとpassiveなコンテキスト生成能力を持っています。 ただ、徐々にテレビのコンテキスト生成能力がインターネットに奪われている気もします。 そして、HDDレコーダの存在もそれとは無縁ではないような気もしています。

最後に

ここで書いているのはテレビとインターネットですが、雑誌等も同様の事が発生しているのかも知れません。

しかし、passiveであったテレビがドンドンpassiveでなくなり、逆にインターネットがpassiveになって行くというのは非常に興味深いと思いました。 それが良いことなのか悪いことなのかは良くわかりませんが、技術の進歩が世界を変えて行くということなのかも知れません。

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