著作権と親告罪で話題の議論録より

2007/5/23

竹熊先生がブログで「【著作権】とんでもない法案が審議されている」というエントリを書かれていました。 どのような内容なんだろうと思い、原文(第8回知的創造サイクル専門調査会 議事録)を読んでみましたが、なかなか興味深い内容でした。

今回は、その議事録からいくつか個人的に興味を持った箇所を抜き出してみました。 以下は議事録の一部だけなので、原文の前後関係などもご覧下さい。 なんか、ダラダラと貼り付けになってしまいました。 ごめんなさい。。。

マスコミについて

○田中委員 特許庁が、新聞記事等に関して補足的な情報を付け加えて公表するような仕組みを作ることも、一つの手段であると思います。

○田中委員 例えば世界特許について、新聞を読んだ人は明日にでもそれが実現するかのように捉えるわけです。こちらは責任部署ですから社内から問い合わせを受けることになるのですが、それについてはまだ議会を通さなければいけないこと、実施は当分先であることを説明しています。このように、新聞記事には非常に誤解を与えている部分があります。それを少しでも解消していった方がいいだろうと考えます。何か支援することがあれば我々も協力するところが出てくるだろうと思います。

○久保利委員 それに関連して、要するに産学官とか、いろいろ皆、協力してということではあるのですが、今日もお見えかもしれませんけれども、マスコミが実際は非常にレベルが低いんです。したがって、今みたいなものは本当は正しい記事を書こうとすれば田中委員がおっしゃるとおり、こういう手続がこの後必要ですということまで書かなければ本当は記事になっていないはずなんですけれども、その辺を非常に手抜きをするものですから、特許庁にこれをやれ、あれをやれという話が出てくるので、本当はメディアがもっとちゃんとした報道をすべきだというメッセージをむしろこのワーキンググループとしては出すべきではないか。  ついこの間もある新聞に、エンタメロイヤーは4人しかいないと言われまして、何のためにエンタメロイヤーズネットをつくったんだという問題になったことも実はありますので、是非正確な報道、そして国民がそれを読んでなるほどとわかるような国民教育にもなるような記事を出していただきたいということをひとつお願いをしておきます。

○妹尾委員 しり馬に乗ってもう一つ申し上げます。  以前も申し上げたのですが、いわゆる知財ジャーナリストの方の育成が非常に遅れています。これは今、先生がおっしゃられたように限られた情報の中でのマスコミ報道を正確に行ってもらうことだけではなくて、知財ジャーナリストの方自身が増えなくてはいけないわけです。そして、その方々には最先端の深い知識を持っていただかなければいけません。

○中山委員 私もマスコミとのおつき合いが結構長いのですが、基本的には久保利委員のおっしゃっていることと同じなんですけれども、それにプラスして、往々にしてこういう会議で決定する前にマスコミに記事が出てしまう。実は今日の決定事項はもう新聞に出ています。これは決して珍しくなくて、これから議論をする、あるいはこれから決定するときにもう出ていて、しかもそれがかなり不正確なものが多い。つまり、出す方にも問題があるので、正確な時期に正確な情報を出すというふうにしていただきたいと思います。  といいますのは、マスコミで知的財産だけを専門にやっているということは到底人的に無理なので、これもやり、あれもやっている中の一つなんですね。したがって、まずこちらの方が正確な時期に正確な情報を出すということが一番大事ではないかと思います。

商標と農業

地域ブランドをやり過ぎると農協だけが強くなりすぎるのかもという問題があるんですね。

○八田委員 10ページの地域団体商標制度についてご質問したいと思います。例えば農産物の産地がきちんとわかるということは重要ですが、商標制度が農協の恒久化につながるとまずいと思います。特定の組織ではなくて、産地を認定することが重要な場合もあると思います。10ページから11ページに「その使用にあたっての地理的範囲や生産方法」ということがありますから、その地理的範囲をきちんと認定するということです。   農村では農協に入らないと肥料も何も入らないから嫌々ながら入るという人もいるけれども、断固独立にやるという人も結構いるわけです。その断固独立にやった人が同じ地域で同じ品質のものをつくっているならば、これはやはり認めてやるべきじゃないか。そのための具体的な方法としてはどういうことを考えていらっしゃるのか伺いたいと思います。  例えば、地方公共団体にこういう登録するものを認めるというようなことが可能なのか。あるいは、農協組合員でなくてもその地域で生産されたことが認められるならばやはり認農協がその事実を認定するとか、もろもろあると思うんですが、例えばどういうことを考えていらっしゃるのか。もし例示できるのならばお願いします。

○藤田次長 先生が御指摘のように団体が出願をしてまいりますので、その団体の中には農産物については農協が出願人になっているという例もたくさんございます。それで、審査の過程で特許庁が大変苦労していることは、例えばある地域ブランドがかなり有名になってきているけれども、それが農協の努力によってそういうブランドが確立してきたのか、実は農協ではない別の人たちによって確立されてきたものを農協が代表的に出願を出してきているようなこともあるのか。  したがって、表現はやや不正確で恐縮ですけれども、出願をしてきた団体が本当に自分のブランドとしてこれまで育ててきたのかどうかということも審査の対象になっておりまして、そこはなかなか判断が難しいところも恐らくあるんだろうと思います。  一方、仮に団体のアウトサイダーであっても、今までその地域ブランドを出していて出荷しているという方はもともとの権利がありますので、その方々はその団体のアウトサイダーであってもそれを使ってはならないということにはならないということであります。

○八田委員 特に天候とか土壌とかが関係あるようなものならば、できるだけ新規の人たちが、入れるようにしていただきたいんですが、例えば何とか農協ブランドというふうにするならば、これはわかりやすいと思うんです。特定の団体だけを非常に有利にしてしまって新規の参入を難しくすることだけは避けていただきたいと思います。

○下坂委員 実は地域ブランドに関しまして、私自身は専門調査会に所属させていただいている身ではありますけれども、52件の14%、それから4件か5件、昨日、一昨日で登録になっておりますので少し増えているのですが、14%で本当のところほっと胸をなで下ろしたところでございます。現実には地域ブランドか、それともいわゆる普通名称プラス地域の名前かということで、その使い勝手が非常に難しいところがございます。それで、地域ブランドの登録になりましたもの、出願中のものなどを全部リストで手元に置きまして、単純な一例なんですが、ある会社が例えば松坂牛のコロッケの文字を使いたい、大丈夫だろうかと言ってきたような場合に、松坂牛は出願されていないか、最初の使用は4月1日前かどうかとかなどいろいろな要素を考えながらそれが地域ブランドに引っ掛からないかどうか、もし登録になってしまったものがあればどのようにアプローチして、どのようにライセンスを受ければいいのか、彼らが金銭を要求するかどうかなどを考えることになります。例えば店が使おうという商標を30くらい選択しますときには、従来でしたらもうとんとんと、これは普通名称だということでいけたところが大変な苦労をしております。  それでお願いをしたいことは、地域ブランドの新制度は地方の活性化のためにとてもいいことであって、根本的には私も大賛成なのですが、地方ブランドがもう少し確立した段階で、商標権の効力などについて、中山委員などにお知恵を拝借しながら、どのように解決していけばいいかということを、是非検討していく必要があると思っております。

親告罪

親告罪だと、犯人を知ってから6ヶ月以内に訴えないと権利がなくなってしまうんですね。 あと、特許制度は昨年に親告罪から非親告罪に変わっていたんですね。

○中山委員 権利を強化しようとするときはとかくプラス面だけ強調されがちなんですけれども、全体を見てこういうマイナス面もあるということを申し述べるのが法律家の役割ではないかと思いますので、あえて申し上げたいと思います。  まず著作権侵害物品の広告の話ですけれども、これにつきましては結果的には私は余りマイナス効果はないのではないかと思います。つまり、うっかり強化するとチリングエフェクトが生じて産業界にマイナス効果を与えるものもあるわけですけれども、これに関してはいろいろ考えてみましたが、特にこれといった弊害はないと思われます。プラスはここに書いてあるとおりのプラスがあるわけです。  同様の規定は特許等にもありますが、それを見ておりましても別にこれといった弊害はない。むしろインターネットという最新の技術ができたことによって、やはり広告も規制する必要があるのではないかと思います。したがいまして、この点はこれで私は賛成でございます。  親告罪なんですけれども、これはちょっと考え直す必要があるのではないかと思います。ただ、結論的に言いますとどちらに転んでも社会はそれほど大きく変わらないだろうと思います。特許権は先年、これを非親告罪にしたわけですけれども、非親告罪にしたから何か変わったかというと全く変わっていないんです。というのは、強盗や殺人ですと警察がすぐ動いてくれますけれども、知的財産権侵害というのは基本的には民事の話ですから、うっかり警察が動くともう民事はすっ飛んでしまいますから民事不介入が大原則で簡単には動いてくれません。親告罪にしようが、非親告罪にしようが、ちゃんとした証拠を持っていて、こうこうこうですということを言わなければなかなか動いてくれないので、実際はほとんど影響ないのかなという気はいたします。  ただ、著作権は特許と比べますと侵害の範囲が広いというか、あいまいな面が多いわけです。翻案などがありますから、どれが侵害かわからない。窃盗などの場合は窃盗犯は自分は窃盗をやっているということがわかっているわけですからいいんですけれども、侵害かどうかわからないというときに、しかも第三者が告訴をして、仮に警察が動いてしまった場合にどうなるのか。権利者の方は、これは黙認しようとか、まあいいやと思っていても、実は第三者が告訴をするという場合もあり得るわけです。特に著作権は近年では全国民的に関係を持っている法律になってきましたので、こちらの方は特許とはまたちょっと違って場合によっては弊害が生ずる可能性もあるのかなという気がいたします。  確かに親告罪だと6か月という制限はあるわけですけれども、別に告訴をしておいて後から証拠を出してもいいわけですし、知的財産の場合はそれほど大きな問題はないのではないかと思います。それよりもむしろ何かマイナスの効果の方が大きいのではないかという気がいたします。以上です。

○久保利委員 それに関連して親告罪の問題ですけれども、むしろ私は見直しをしていただくことは、それ自体はマイナスではないのではないかと思います。  ただ、中山先生もおっしゃったとおり、今どういうふうになっているかというと、親告罪ですから告訴権者が必死になって証拠をそろえて訴えに行くわけです。そうしますと、基本的にはリジェクトされるわけです。やりたくないんです。それから、やる能力も余りないんです。したがって、捜査当局はなるべくならばこの著作権問題には触れたくないというふうに思っていますから、なかなか受けてくれないのですが、あれやこれや証拠書類をそろえてどうだ、これでもかと言って持って行ってもし警察がやらないのならば、それこそマスメディアに発表して警察はこういう犯人を甘やかそうとしていると言いますよというくらい脅かさないと、なかなか引き受けてくれない。その代わり、引き受けてくれたら警察のメンツにかけてもやってくれるわけです。  ということは、それだけ本気になった侵害された人がいれば警察は結局は渋々ながらでも動いてくれるというのは、実は親告罪だからそうなっているわけで、親告罪でないということになると告発はしましたよ、親告罪ではないけれども一応御通知しましたよ、捜査の端緒を与えましたと言っても、さあ動くのか。動くときに親告罪で告訴を受理してしまうと、あとはその事件をどうしたかということを報告し、内部できっちり検査をしなければいけなくなりますから、やることはやってくれますが、何もないとなるとやってくれるのかなというところがあるわけです。その意味では、私も親告罪にするということが直ちに捜査当局が非常にやりやすくなるということにはならないだろうとは思います。  ただ、もう一つ逆の手立てを立てて、例えば交通事故撲滅月間とか、交通安全週間などと同じように、とにかく著作権事件摘発強化月間みたいなものをつくって、この間できるだけそういう事件に特化して各警察は頑張りなさいというふうなことになって、今までは親告罪だったので告訴がこないと動けなかったけれども、今度は動けるようになったんですから、積極的に国民に対する啓発も含めて、捜査当局よ頑張りましょうという話がセットで出てくるならば、これは逆に効果的になるかもしれないという意味で、実は捜査当局の能力とやる気をいかに担保するかというところにかかっている。  それを何もしなければ、私は中山先生と同じ考えにならざるを得ないわけですし、そこがすごく強化されるということであればそれはプラスになる。したがって、親告罪の見直しというのは、何か別の強化策とセットにならないと真の効果は上がらないような気がいたします。以上です。

「大学は時間が進むのが遅いから6ヶ月じゃあ訴えられない」という意見。

○八田委員 制度の構築が必要だという今の皆さんの御意見に賛成です。しかし制度をつくるというのは大変なことなので、それが仮にできないとしても、この6か月というのは短過ぎると思うので、少なくともこれは変えていただけないかと思います。  例えば、大学で、先生が学生の論文を剽窃したというようなときに、学生は先生を在学中に訴えるのは非常に難しいと思うんです。それで、それは卒業を待ってからやるというようなことはあると思います。  それから、ほかの大学の先生が何かを剽窃したというときに、親告罪だから自分は訴えることができるのだけれども、まずは、向こうの大学の処分を見たい。そして、それが非常に甘かったら自分としては告訴したいというときに、大学の決定なんて6か月ぐらいすぐたってしまいますから、結局機を逸してしまってまずいことになるというようなことがある。だから、私はほかの分野はよくわかりませんけれども、こういう学術的なものに関しては6か月はちょっと短いと思います。

6ヶ月ネタ続き

○藤田次長 事実関係だけ御紹介を申し上げますが、刑事訴訟法の235条は親告罪の告訴は犯人を知った日から6か月を経過したときには、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴についてはこの限りでないということで例外が2つ認められております。1つは性犯罪の関係、それからもう一つは外国の元首、使節等が行う告訴あるいは外国使節等に対する侮辱、名誉棄損関係の告訴、この2つについては例外が認められております。

○久保利委員 刑訴法を変えなければだめだということですね。

世の中の半分は「模倣品でも良い」という意見

○下坂委員 模倣品23ページの「関係省庁が一体となった戦略的な広報活動の展開」のところで、模倣品・海賊版につきまして既に2、3年いろいろな発言がありましてから世論調査などを含めて行われております。非常に面白いことは、これら調査の初めから今回の調査までを含めて模倣品に賛成、反対が50、50の綱引き状況です。かなりの啓蒙活動費を使っていると思うんですけれども、このまま5年やっていったとしてもまた世論調査をしたら50、50ということになりかねない。

○前田委員 法整備のことではなくて雑談に近いのですが、昨年、中国に行ったときに上海に駐在している電気会社の方に「ちょっと面白いところに連れて行ってあげる」ということで、ある所へ連れて行っていただきました。すごく汚い長屋みたいな家の台所の横を通り、裏口を開けて、そこから2階に上がっていったら、この部屋の半分ぐらいの部屋全部に、にせ物ブランドが所狭しと置いてありました。買いに来るのはおもに日本人だそうです。やはり罪の意識がすごく希薄なのだなと思いました。

○八田委員 全く同一の意見なのですが、要するにこれは悪いことだというポスターを置いても説得性がない。なぜ悪いかという理由を簡明でいいからとにかくどのポスターにも説明する必要があるのではないか。理由は2つあります。  第一は、悪いと思わないということは極く自然の情だからです。有名なブランドの会社は安い原価の製品を高く売って暴利をむさぼっていると普通は考えるわけです。本当は安くできるものをそんなに高い値段でとんでもないじゃないかと皆、内心思っている。実は、既に出来上がったデザインは元来はただで出来るだけ多くの人に使ってもらうべきなんだけれども、知的財産権を守らなければ新しいデザインは出てこないから、常識的に言えば、暴利をむさぼる機会をあえて与えているわけです。そのことはここにいらっしゃるような方には当たり前だけれども、普通の人にはそれを厳格に守ることが新しいデザインをつくることなんですと知ってもらう必要がある。  2番目は、実は個人輸入を利用して暴力団の組織的な団体が資金稼ぎをしています。だから、個人で輸入しても取り締まらなければいけませんということを知ってもらう必要がある。  その2点は簡明にしかし説得的にポスターに入っていれば随分効果は違うのではないかと思います。

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