女性コンピュータエンジニアが少ない理由

2006/9/6

コンピュータサイエンス分野を専攻する女性が何故少ないのか? この問題を扱うACM-WというワーキンググループがACM内にあるそうです。 たしかに、情報工学系の学部には女性が非常に少ない気がします。

色々調べていたら、この問題に関してまとめてある論文(2002年)を発見したので何と無く読んでみました。 今回読んだ論文は「An ACM-W Literature Review on Women in Computing, Denise Gurer, Tracy Camp, SIGCSE Bulletin, Vol.34, No.2, 2002」です。 結構納得させられる内容でした。

コンピュータに興味を持つ女性の割合は、年齢が上昇するほど減少するそうです。 この論文では、問題点や取り組みを12種類に分類していました。

  • early in the pipeline (幼少期)
  • attitudes (意識、考え方)
  • computer experience (コンピュータ経験)
  • computer games (コンピュータゲーム)
  • mentoring and role models (指導、役割配分)
  • self-confidence (自信)
  • computing environments (コンピュータ環境)
  • societal influences (社会的影響)
  • teacher and family encouragement (教師や家族による激励)
  • all-female environment (女性だけの環境)
  • graduate school (大学院)
  • balancing work and family (仕事と家庭との両立)

幼少期

女の子は早い段階でコンピュータに対する興味を失うそうです(*1)(*2)。 男の子は言われなくても色々いじっていくそうですが、女の子は許可を与えられるまでコンピュータをいじらない傾向があるそうです(*3)。 男の子は先生の時間を占有しようと質問をしまくる傾向があるそうですが、女の子は自分で調べてみようとする傾向があるそうです(*4)。 これらの違いは、女の子を不満にさせる要因になっているそうです。 そして結局、女の子はコンピュータを嫌いになり、男の子も女の子も「コンピュータは男のものだ」という認識をしてしまうそうです。

この傾向にならないようにするには、コンピュータを使いこなす女の子が近くにいるか、もしくはコンピュータを使いこなす女性の教師が近くにいる以外の方法は今のところないそうです(*5)(*6)(*7)。

平等にコンピュータを使わせる事も、課題の一つだそうです。 多くの場合、男の子はコンピュータ室を占有したがるそうです。 結果として女の子がコンピュータの経験をつみにくくなるそうです。

男の子はコンピュータを自分のものとして支配するのを好むそうです。 一方、女の子はゲストユーザとしてつつましくコンピュータを使うのが好きだそうです(*8)。 結果として、男の子は知識を蓄えていき、女の子は後ろで見ているという状況になっていくそうです。 結果として、女の子はコンピュータ経験を積む事をあきらめていき、男の子ばかりが詳しくなっていくという状況ができあがるそうです。

重要なのは、女の子に同等の学習機会を与えると、男の子と同等の能力を示すということです(*9)(*10)。 以上の理由により、幼少期に女の子が同等のコンピュータ経験を積む機会を作る事が重要と論文には書いてありました。

(*1) Broihier, Fleetwood, Krendl, "Children and Computers: Do SexRelated Differences Persist ?", Journal of Communication, 39(3), pp.85-93, 1993
(*2) Jepson, Perl, "Priming the Pipeline", SIGCSE Bulletin, 34(2), 2002
(*3) Bernhard, "Gender-Related Attitudes and the Development of Computer Skills: A Preschool Intervention", The Alberia Journal of Educational Research, 38(3), pp.177-188, September, 1992
(*4) Huber, Scaglion, "Gender Differences in Computer Education : A Costa Rican Case Study", Journal of Educational Computing Research, 13(3), pp.271-304, 1995
(*5) Fletcher-Flinn, Suddendorf, "Computer Attitudes, Gender and Exploratory Behavior: A Developmental Study", Journal of Educational Computing Research, 15(4), pp.369-392, 1996
(*6) Linn, "Fostering Equitable Consequences from Computer Learning Environments", Sex Roles, 13(3/4), pp.229-240
(*7) Stanley, Stumpf, "The Gender Gap in Advanced Placement Computer Science", College Board Review, 181, pp.22-27, July, 1997
(*8) Elkjaer, "Girls and Information Technology in Denmark, An Account of a Socially Constructed Problem", Gender and Education, 4(1/2), pp.25-40, 1992
(*9) Anderson, "Females Supass males in Computer Problem Solving: Findings from the Minnesota Computer Literacy Assessment", Journal of Educational Computing Research, 38(1), pp.39-51, 1987
(*10) Moroh, Sturm, "Gender and Computer Science Majors: Perceptions and Reality", National Educational Computing Conference, pp.189-191, 1995

意識

一般的には、男子の方が女子よりもコンピュータに対して肯定的だそうです(*11)。 ただし、違いが顕著になるのはある程度大きくなってからだそうです。 幼稚園、保育園、小学校の生徒は肯定的であるそうです。 また、多くの時間コンピュータに使っている子供ほど肯定的であるそうです(*12)(*13)。

もう少し大きな子供に対しては女性の教員が教える事が効果的であるそうです。 女性の教員が教えた女の子は、全くコンピュータ経験が無い場合でも肯定的な態度を示すそうです(*14)。

(*11) Bulkeley, "Gender Affects How User See the Computer", Wall Street Journal, pp.B1,B5, March 16, 1994
(*12) Loyd, Gressard, "The Effects of Sex, Age, and Computer Experience on Computer Attitudes", AEDS Journal, 18(2), pp.67-77, 1984
(*13) Shashaani, "Gender-Differences in Computer Experience and its Influence on Computer Attitudes", Journal of Educational Computing Research, 11(4), pp.347-367, 1994
(*14) Corston, Colman, "Gender and Social Facilitation Effects on Computer Competence and Attitudes toward Computers", Journal of Educational Computing Research, 14(2), pp.171-183, 1996

続きは、また今度

追記 2006/9/8:女性コンピュータエンジニアが少ない理由(2)

追記 2006/9/10:女性コンピュータエンジニアが少ない理由(3)

追記 2006/9/12:女性コンピュータエンジニアが少ない理由(4)

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