「米国は実名制」という人は「Pseudonym」という単語を調べた方がいいかも
「米国は実名制だから日本のネットもそうすべきだ」という意見がありますが、それに対する反論でお約束的に登場するのが「実名 vs 匿名ではなくハンドルネームも考慮すべきだ」という意見です。
日本では、「ハンドル名」「仮名」「ペンネーム」という表現で語られることが多いのですが、英語では「Pseudonym」という単語もあるようです。 「Pseudonymous」とは、「偽名の」「仮名の」や「ペンネームの」という意味で、「Pseudonymity」という単語はペンネームを利用するということそのものの概念を表現しています。 「Pseudonym」と「Pseudonymity」に関するWikipediaページもありました。
「Pseudo」という単語は、「擬似的な」「偽の」「仮の」「見せかけの」という意味を持ち、コンピュータ業界では「擬似的な(仮想的な)」という意味を持って利用されることも多いです。 例えば、Unix系OSでは「Pseudo device」というものがあります。
余談ですが、他にも色々と「Pseudo」という単語を良く聞きます。 「○○モドキ」「ニセ○○」「○○ダマシ」のようなものです。 個人的に「Pseudo」を良く見るのは、キノコや熱帯魚などのペットの流通名や種名です。
このような「Pseudo」という表現が入っている「Pseudonyms」という単語は、いかにも「ネット上の仮のハンドルを作る」というようなイメージがある単語です。
Slashdot記事
今まで、「Alias」という単語は知っていたのですが、「Pseudonyms」という単語は知りませんでした。 この単語を知ったのは、本家Slashdotに以下のような記事(通称「タレコミ」)を見たためです。
「Ask Slashdot: Do We Need Pseudonymous Social Networking?」
中には「Anonymous Coward」というSlashdotではお約束(というかデフォルト)の匿名で以下のような発言もありました。 うまい冗談ともうけとられているようで、まるで2chでのやり取りを見ているようです(笑)。
by Anonymous Coward
I always use my real name, and all others must, too.
(訳)私はいつも実名を使っているし、他の人もそうしなければならない。
反対意見としては、Slashdotで「ソーシャルメディアでみんなが実名を使ってくれないと知り合いを発見できない」という意見もありました。 「日本でも友達と繋がるから」という理由でmixiやFacebookで実名登録をしている人は私のまわりでも多いです。 というより、ネット上でそのまま実名で活動している人が私の周りには多いというのもありますが、まあ、用途に応じてハンドル名と実名を使い分けている人も多いという印象です。 さらに、ハンドル名と匿名も必要に応じて使い分けている人が多い気もしています。
実名/ハンドル名/匿名は対立する概念じゃなくて平行して存在する概念じゃない?
もう散々言われている話ではありますが、実名で活動してようと、ハンドル名で活動していようと、都合が悪い事を書き込むときには匿名で書くということが可能です。
そのため「ネット上で実名で発言している」というのと「その人が匿名の書き込みを一切していない」というのは同義ではなく、実名で発言する人を増やしたところで、匿名での中傷は減らない可能性もありそうです。 逆に、実名やハンドル名が定着することで「都合の良いことだけを実名やハンドル名で書く」という行為が増える一方で、「都合の悪いことや非難されやすいことは匿名で書く」というのが増えることで、匿名での表現における中傷等の「濃度」が上昇し、以前よりも荒れてしまう可能性もありそうな気がしています。
日本国内で「米国は実名が当たり前」という意見の多くは、日本から米国のネットをざっと見たときの感想のような気がします。 同じように「外からの視点」という意味でいうと、日本でも目立っている人は実名もしくは実名っぽい芸名で活動してたりするので、海外から見ると「日本ではネットで実名が当たり前だ!我が国のネットもそうすべきだ!」という意見が出るのかも知れないと思った今日この頃です。
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