IPv4アドレス残り実質約2.7%
今のインターネットはIP version 4(以後IPv4)で構築されています。 しかし、IPv4の識別子であるIPv4アドレスは、来年中旬に枯渇しようとしています。
今まで成長を続けて来たIPv4によるインターネットは、IPv4アドレス数の限界へと到達したことによって、それ以上の規模拡大が難しい時代へと突入します。 IPv4アドレスが枯渇したからといって、いきなりインターネットが停止するわけではありませんが、ネット上で規模を拡大しようとするときの障害になります。
そのようなIPv4アドレスの枯渇が、また一歩近づきました。 10月17日(アメリカ時間)に、IPアドレス割り振りを行うIANAのプールから新たに2つの/8ブロックが割り振られました。 今回、割り振りを受けたのはAPNIC(アジア太平洋地域)で、割り振られたのは36/8と42/8の2ブロックです。
これによって、全体で256ある/8ブロックは残り12個となりました。 しかし、12個のうちの5個は自動的に世界5カ所にあるRIR(Regional Internet Registry)に割り振られることが決定しているため、実質残り7個(約2.7%)となります。
中国のインターネットの急激な拡大
IPv4アドレスの枯渇は10年以上前から予測されています。 インターネットが拡大し続ける限りは、32ビット長のIPv4アドレスは枯渇しますが、近年その傾向を特に強めたのが中国でのインターネット利用の拡大です。
今や、中国のインターネットユーザは世界のインターネットの2割に達しています。
「ArsTechnica: Just two Chinese ISPs serve 20% of world broadband users」
中国でのインターネット普及率は2010年時点で31.6%にも関わらず、アメリカのユーザ数の倍に届きそうな勢いです。 しかも、まだまだ伸びそうな勢いがあります。 Internet World Statsに掲載されている中国のインターネットユーザ数のグラフは以下のようになっています。
アメリカでの2010年時点の普及率が77.3%であり、これ以上は急激には伸びないことを考えると、中国国内ユーザがアメリカのユーザ数の倍以上になりそうであることが推測できます。
このような状況もあり、アジア太平洋地域でのIPv4アドレス利用量が得に増えています。 ただ、アジア太平洋地域だけでIPv4アドレス利用が増えているわけではありません、中国ほど顕著ではありませんが、いまだに世界中でインターネットは拡大を続けています。
IPv4アドレス枯渇後も、恐らくインターネットは拡大を続けようとします。 需要と供給のバランスが大きく崩れるのがIPv4アドレス枯渇問題です。
IPv4アドレス枯渇までの流れを予測
次は、ARIN(北米、カナダ、及びカリブと北大西洋地域)に対して2ブロック割り振られるものと思われます。 2ヶ月前の情勢ではAPNICとARINが、ほぼ同時でありつつもAPNICが微妙に早く割り振られるように見えましたが、アジア太平洋地域の成長スピードが伸びているようで、今回、APNICに対して先に36/8と42/8なりました。
いまのところ、今年中に割り振られるのが、残りARINだけだと思われます。 その場合、2010年末にはIPv4アドレスの残りが実質/8が5個、約1.95%(最後の5個を含めて/8を10個とすると約3.9%)になりそうです。
2010年が終わり、来年開始直後にはAPNICに対しての割り振り(2ブロック)が行われると思われます。 その後、来年前半にRIPE-NCC(ヨーロッパ、中東、中央アジア)への割り振り(2ブロック)が発生しそうです。 RIPE-NCCへの割り振りが行われた時点で、残りの/8ブロックは1つになります。
そして、最後の1ブロックの割り振りはAPNICになりそうだと個人的に推測しています。 最後の1ブロックが割り振られてIPv4アドレスのIANAプールが枯渇する時期を、最近のPotaroo予測では2011年5月〜6月としています。 しかし、徐々に需要が加速しているようにも見えるので、個人的にはそれよりも微妙に早い時期に枯渇してしまうのではないかと推測してます。
この推測は、現在指標とされているpotaroo予測のFigure 30を基に考察しています。 興味があるかたは「potaroo: IPv4 Address Report」をご覧下さい。
最後に
来年中旬に発生すると思われるIANAプールの枯渇は、実際のユーザにとっては指標でしかありません。 日本で枯渇の影響が出始めるのは、アジア太平洋地域のRIRであるAPNICのIPv4アドレスプールが枯渇した後です。
中国と同一地区である日本では、世界5地域の中で最も早く枯渇に遭遇します。 今のところ、APNICでのIPv4アドレス枯渇は2012年開始直後と予想されています。
来年はIPv4アドレス関連のニュースが多くなりそうだと思う今日この頃です。
関連
ここでは、IPv6に関してあえて触れていません。 IPv6に関しては、過去に書いた記事をご覧下さい。
- IPv6はIPv4アドレス枯渇を直接解決するものではない
- OECDレポートから垣間見える「日本のIPv6」
- 「IPv4アドレス売買」とIPv6への移行
- [新連載]インターネット技術妄想論 [第1回] 結局、IPv6ってどうなのよ?!
- IPv4アドレス残り実質約3.5%
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